損益振替と繰越利益剰余金
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
出題区分表 第三 5「収益と費用の損益勘定への振替」、6「純損益の繰越利益剰余金勘定への振替」。
第 2 問で、損益勘定や繰越利益剰余金勘定の空欄を埋めさせる形で出ます。
第 3 問で財務諸表を作るだけなら意識しなくても解けてしまうため、
手続きとして理解しているかどうかがここで分かれます。
0. どういう処理か
決算整理が終わっても、帳簿はまだ閉じられません。
理由は、収益・費用の勘定に残高が残っているからです。
収益と費用は「その期にいくら稼ぎ、いくら使ったか」の記録なので、
次期は必ずゼロから数え直さなければなりません。
去年の売上が残ったまま今年の売上を足していったら、意味のない数字になります。
一方、資産・負債・資本は残高そのものが次期に引き継がれるものです。
去年の期末に現金 ¥280,000 あったなら、今年の期首も ¥280,000 です。
| 要素 | 期末にどうするか |
|---|---|
| 収益・費用 | 損益勘定に集めてゼロにする(残高を残さない) |
| 資産・負債・資本 | 次期繰越として残す(→ 帳簿の締切) |
収益・費用を集める先が損益という決算のときだけ使う勘定です。
そこで計算された差額(=当期純利益)を、最後に繰越利益剰余金へ移します。
この 3 本の振替をまとめて決算振替仕訳と呼びます。
- 収益 → 損益
- 費用 → 損益
- 損益 → 繰越利益剰余金
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 振替は逆側に書いて残高をゼロにする(収益は借方に、費用は貸方に書く)
- 損益勘定は借方に費用、貸方に収益が並ぶ(損益計算書と同じ形)
- 当期純利益は繰越利益剰余金の貸方へ(資本が増える)
1. 収益と費用の損益勘定への振替
根拠: 出題区分表 三-5
決算で、収益・費用の勘定をゼロにするのはなぜ?
収益・費用は「その期にいくら」を数える記録だから
次期は必ずゼロから数え直す。
残高を残すのは、次期に引き継がれる資産・負債・資本だけ。
収益を損益勘定へ振り替える仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売上 ××× | 損益 ××× |
収益は貸方残高なので、借方に書いて消す。
受取利息などの収益も同時に、まとめて 1 本の仕訳にできる。
費用を損益勘定へ振り替える仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 損益 ××× | 仕入 ××× |
| 給料 ××× |
費用は借方残高なので、貸方に書いて消す。
損益の借方に、費用の合計が集まる。
売上 ¥900,000、受取手数料 ¥30,000 を損益勘定へ振り替える仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売上 900,000 | 損益 930,000 |
| 受取手数料 30,000 |
収益をまとめて 1 本にしてよい。貸方の損益は合計額。
振替が終わった後、売上勘定の残高はどうなる?
ゼロ
貸方にあった残高と同額を借方に書いたため。
すべての収益・費用勘定が同じようにゼロになり、
次期は白紙から記録を始められる。
2. 純損益の繰越利益剰余金への振替
根拠: 出題区分表 三-6
損益勘定の残高が貸方 ¥150,000 だった。これは何を意味する?
当期純利益 ¥150,000
貸方(収益)のほうが借方(費用)より多い。
損益勘定の差額が、そのまま当期の利益になる。
当期純利益 ¥150,000 を振り替える仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 損益 150,000 | 繰越利益剰余金 150,000 |
利益は資本の増加なので、繰越利益剰余金の貸方へ。
これで損益勘定もゼロになる。
当期純損失 ¥60,000 だった場合の振替仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 繰越利益剰余金 60,000 | 損益 60,000 |
損失は資本の減少なので、繰越利益剰余金の借方へ。
利益のときと左右が入れ替わる。
なぜ当期純利益は資本金ではなく繰越利益剰余金へ振り替える?
資本金は株主が出資した元手、繰越利益剰余金は会社が稼いだ利益だから
出どころが違うものを混ぜると、
配当できる額(=稼いだ利益)が分からなくなる。
振替後の繰越利益剰余金の残高は、何を表す?
期首の残高 + 当期純利益 − 当期に配当した額
過去から積み上げた、まだ配当していない利益の合計。
貸借対照表に載るのはこの金額で、決算整理後残高試算表の
繰越利益剰余金(期首のまま)とは違う。
3. 損益勘定を読む
根拠: 出題区分表 三-5
損益勘定の借方と貸方には、それぞれ何が並ぶ?
- 借方 … 費用(仕入・給料・減価償却費など)+ 当期純利益
- 貸方 … 収益(売上・受取手数料など)
損益計算書とまったく同じ並び方になる。
損益勘定は、いわば帳簿の中の損益計算書。
損益勘定の借方に「繰越利益剰余金 150,000」と書かれていた。
これは何を意味する?
これは何を意味する?
当期純利益 ¥150,000 を繰越利益剰余金へ振り替えた記録
損益勘定の借方の一番下に、相手科目として繰越利益剰余金が現れる。
この行の金額が当期純利益。第 2 問ではここを空欄にして問われる。
損益勘定の借方に並ぶ「仕入」の金額は、当期商品仕入高?
売上原価
損益振替は決算整理の後に行うので、
仕入勘定の残高はすでに売上原価に直っている(→ 売上原価の算定)。
決算振替仕訳の 3 本を、順に挙げると?
- 収益 → 損益(収益を借方に書いて消す)
- 費用 → 損益(費用を貸方に書いて消す)
- 損益 → 繰越利益剰余金(差額=当期純利益を資本へ)
この 3 本を終えて初めて、帳簿を締め切れる。
決算振替仕訳と決算整理仕訳の違いは?
- 決算整理仕訳 … 期末の実態に合わせて金額を直す(売上原価、減価償却など)
- 決算振替仕訳 … 金額は直さず、勘定間で残高を移して帳簿を閉じる
整理が先、振替が後。
順番を逆にすると、整理前の金額で損益が計算されてしまう。