グラフの移動と係数の符号
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学Ⅰ (3) 二次関数 ア (ア)「二次関数の値の変化やグラフの特徴について理解すること」。
0. どういうまとまりか
グラフを動かすと式がどう変わるか、逆にグラフの形から式の係数の符号がどう読めるかを扱います。
どちらも「式の文字をどう置き換えるか」「グラフのどこを見るか」の決まりを覚えておけば、計算は短くなります。
| 移動 | 式の置き換え | 移動後の式 |
|---|---|---|
| 軸方向に 、 軸方向に の平行移動 | を 、 を に | |
| x 軸に関する対称移動 | を に | |
| y 軸に関する対称移動 | を に | |
| 原点に関する対称移動 | を 、 を に |
分かれ目は次の 3 つ。
- 軸方向に 動かすとき、 を ではなく に置き換える
- 対称移動で の符号が変わるのは x 軸と原点に関するとき。y 軸に関するときは変わらない
- の符号は、軸 の位置と の符号を組にして読む。 単独ではグラフのどこにも現れない
1. 平行移動の式
根拠: 学習指導要領 数学Ⅰ-(3)-ア-(ア)
のグラフ上の点 を 軸方向に 、 軸方向に だけ平行移動した点を とすると、
、 です。これを に入れると になります。
移動後の点から、元の点へ戻して代入しているので、符号が移動の向きと逆になります。
のグラフを 軸方向に 、 軸方向に だけ平行移動したグラフの式は?
( を に、 を に置き換える)
と書いても同じ。
平行移動の式で、 を ではなく に置き換えるのはなぜか?
移動後の点 を元に戻した点 が、元のグラフ上にあるから
元の式に入るのは「戻した点」の座標。
二次関数のグラフの平行移動を、式を展開せずに求めるにはどうするか?
頂点の移動だけを考える
頂点 は に移り、 の係数 は変わらない。
2. 対称移動
根拠: 学習指導要領 数学Ⅰ-(3)-ア-(ア)
x 軸に関して対称な点は 座標の符号だけが、y 軸に関して対称な点は 座標の符号だけが変わります。
原点に関して対称な点は、両方の符号が変わります。二次関数では、頂点の動きと凸の向きで確かめられます。
のグラフを x 軸に関して対称移動したグラフの式は?
( を に置き換える)
頂点の 座標の符号が変わり、凸の向きが逆になる。
のグラフを y 軸に関して対称移動したグラフの式は?
( を に置き換える)
頂点の 座標の符号が変わる。凸の向きは変わらない。
のグラフを原点に関して対称移動したグラフの式は?
( を 、 を に置き換える)
頂点 は に移り、凸の向きが逆になる。
二次関数のグラフを対称移動したとき、 の係数 の符号が変わるのはどの移動か?
x 軸に関する対称移動と、原点に関する対称移動
y 軸に関する対称移動では は変わらない(左右を入れ替えるだけ)。
3. グラフから係数の符号を読む
根拠: 学習指導要領 数学Ⅰ-(3)-ア-(ア)
のグラフが与えられたとき、・・ の符号は、凸の向き・ 軸との交点・軸の位置から読めます。
頂点の 座標の符号(x 軸と交わるかどうか)は、判別式を使って 二次方程式とグラフ で読みます。
のグラフで、 の符号はグラフのどこで読むか?
軸との交点( 切片)の 座標
を代入すると 。
のグラフで、 の符号はどう読むか?
軸 の位置と の符号から読む
軸が 軸より右()なら、 と は異符号。左なら同符号。
のグラフが下に凸で、軸が 軸より右にある。 の符号は?
で だから 。
で、 と はグラフのどこで読むか?
は のときの 座標、 は のときの 座標
、。
練習問題
問 1 のグラフを、 軸方向に 3、 軸方向に だけ平行移動したグラフの式を求めよ。
方針 平行移動したグラフの式は、「 を に、 を に置き換える」と出る。ここでは 、 なので、 を に、 を つまり に置き換える。
- 元の式 の と を置き換える。
- を展開する。
- を展開する。
- 2 つを足して、右辺をまとめる。
- 左辺の を右辺に移項する。
確かめ(頂点で見る): 元の式は なので頂点は 。これを 軸方向に 3、 軸方向に 動かすと に移る。求めた式は で頂点が になり、一致する。
ここで間違えやすい 「 軸方向に 3 だから 」としない。式に入れるのは、移動後の点を元に戻した座標なので、符号が移動の向きと逆になる。 も同じで、 動かすなら に置き換える。
問 2 のグラフを、x 軸・y 軸・原点のそれぞれに関して対称移動したグラフの式を求めよ。
x 軸: 、y 軸: 、原点:
方針 対称移動は、符号が入れ替わる座標の文字を、式の中で置き換えれば出る。x 軸に関してなら を に、y 軸に関してなら を に、原点に関してならその両方を置き換える。
- x 軸に関する対称移動。 を に置き換える。
- 両辺に を掛けて について解く。右辺のすべての項の符号が変わり、
- y 軸に関する対称移動。 を に置き換える。
- 、 なので、( の 1 次の項だけ符号が変わる)
- 原点に関する対称移動。 を に、 を に置き換える。右辺は 4. と同じなので、
- 両辺に を掛けて、
確かめ(頂点で見る): 元の式は で、頂点は 、下に凸。
| 移動 | 頂点 | 凸の向き | 式 |
|---|---|---|---|
| x 軸 | 上に凸 | ||
| y 軸 | 下に凸 | ||
| 原点 | 上に凸 |
ここで間違えやすい y 軸に関する対称移動では、 の係数と定数項は変わらない。全部の項の符号を変えるのは x 軸に関するときである。
問 3 のグラフをどのように平行移動すると、 のグラフに重なるか。
軸方向に 、 軸方向に
方針 平行移動しても放物線の形( の係数)は変わらず、動くのは位置だけ。2 つの式はどちらも の係数が 1 なので重ねられる。位置は頂点で代表できるから、両方を平方完成して頂点を出し、頂点がどれだけ動いたかを見る。
- 移動前の式を平方完成する。 の係数 の半分は 、その 2 乗は 1 なので、
- 定数項を合わせる。。頂点は
- 移動後の式を平方完成する。 の係数 4 の半分は 2、その 2 乗は 4 なので、
- 定数項を合わせる。。頂点は
- 頂点は から へ動いた。 軸方向の移動は「移動後 移動前」で
- 軸方向の移動も同じように、
ここで間違えやすい 引く順番を逆にして「 軸方向に 3、 軸方向に 5」としない。動かす量は、行き先の座標から元の座標を引く。
問 4 放物線 を 軸方向に 2、 軸方向に だけ平行移動すると、 になった。、 の値を求めよ。
、
方針 分かっているのは移動したあとの式で、求めたいのは移動する前の式。だから移動を逆向きにたどる。 軸方向に 2、 軸方向に の逆は、 軸方向に 、 軸方向に 3 の平行移動である。
- 逆向きの移動は 、。 を つまり に、 を に置き換える
- 移動後の式 を置き換える。
- 展開する。、
- 右辺をまとめる。
- 左辺の を移項する。
- これが元の放物線 なので、係数を比べて 、
確かめ(頂点で見る): 移動後の式は で頂点 。逆向きに戻すと頂点は つまり 。 となり、一致する。
ここで間違えやすい 与えられた移動( 軸方向に 2、 軸方向に )を、移動後の式 にそのままもう一度かけない。それでは元に戻らず、さらに先へ動かしてしまう。
問 5 のグラフが上に凸で、 軸の正の部分と交わり、軸が 軸より右にある。、、 の符号を答えよ。
、、
方針 は凸の向き、 は 軸との交点から、それぞれ単独で読める。 はグラフのどこにも単独では現れないので、軸 の位置と の符号を組にして、最後に読む。
- グラフが上に凸なので、
- を代入すると なので、 は 軸との交点の 座標。 軸の正の部分と交わるから、
- 軸は直線 。これが 軸より右にあるので、
- 両辺に を掛けると 。分数が負になるのは分子と分母が異符号のときなので、 と は異符号
- から なので、
ここで間違えやすい 「軸が右にあるから 」と、軸の位置だけで決めない。同じく軸が右にあっても、下に凸()なら になる。必ず の符号と組にして読む。