経済活動と市場
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「政治・経済」A (1) ア (イ) の「経済活動と市場」。内容の取扱いは、ここで分業と交換、希少性などに関する理解と関連させて扱うよう求めています。
公共でも「希少性と機会費用」「需要と供給」は扱いますが、ここではそこから一段進めて、機会費用を具体的な選択で数えること、分業がなぜ生産を増やすのか、
曲線が「動く」のか「曲線の上を動く」のかの区別、価格の変化にどれだけ反応するか(価格弾力性)まで扱います。
0. 何を押さえるか
経済活動とは、財(形のあるもの)やサービス(形のないもの)を生産・分配・消費することです。
人の欲求に比べて資源が限られている(希少性)ので、何かを選べば何かをあきらめることになり、その選び方を社会全体でまとめる仕組みの一つが市場です。
| 考え方 | 中身 |
|---|---|
| 希少性 | 欲求に比べて資源が足りない。だから選択が要る |
| 機会費用 | 選んだことで、あきらめた選択肢のうち最も価値の大きいもの |
| 分業と交換 | 一人(一国)がすべてを作らず、得意なものに特化して取り替えるほうが、全体の生産は増える |
| 市場 | 売り手と買い手が出会い、価格を目印に取引する場。価格が需要と供給を調整する |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- 価格が変わったときは曲線の上を動く(需要量・供給量が変わる)。価格以外の条件が変わったときは曲線そのものが動く(需要・供給が変わる)
- 需要曲線が右へ動くと均衡価格は上がる。供給曲線が右へ動くと均衡価格は下がる。同じ「右」でも価格の向きが逆
- 必需品は価格が変わっても需要量があまり変わらない(価格弾力性が小さい)。ぜいたく品は大きく変わる(大きい)
1. 希少性と選択
根拠: 学習指導要領 政治・経済-A-(1)-ア-(イ)
どれほど豊かな社会でも、時間・土地・労働・資本は限られています。これが希少性で、経済学はここから始まります。
選択には必ず「選ばなかったほうの価値」がついて回り、これを費用として数えるのが機会費用の考え方です。
時給 1,200 円のアルバイトができる 3 時間を、映画を見て過ごした。映画のチケット代が 1,800 円のとき、この選択の機会費用まで含めた費用はいくらと考えられるか(ほかの選択肢はアルバイトだけとする)?
5,400 円(チケット代 1,800 円+あきらめたアルバイト代 3,600 円)
実際に払ったお金だけでなく、あきらめた収入(1,200 × 3 = 3,600)も費用として数えるのが機会費用の考え方。
学習指導要領が「経済活動と市場」と関連させて扱うよう求める、欲求に比べて資源が限られていることを表す語は?
希少性
資源が無限にあれば選ぶ必要がなく、価格も付かない。空気のように誰でも自由に使えるものは、ふつう値段が付かない(自由財)。
2. 分業と交換
根拠: 学習指導要領 政治・経済-A-(1)-ア-(イ)
一人の職人がすべての工程をこなすより、工程を分けて担当するほうが、同じ人数でずっと多くを作れます。
分業すれば各人は自分の作らないものを手に入れる必要があるので、分業と交換は必ず組になります。
国どうしの分業(国際分業)は 戦後日本経済の歩み の日本経済のグローバル化や、国際経済の項目で扱う比較生産費説へつながります。
アダム・スミスが『国富論』の冒頭で、ピン(針)づくりの例を使って、生産性を大きく高めると説いたものは何か?
分業
工程を分けると、各人の熟練が増し、作業の切り替えの時間が省け、機械も工夫しやすくなると説いた。
分業が進んだ社会で、交換を物々交換で行うと困るのはなぜか。それを解決するものは?
互いに相手の欲しいものを持っている相手を探さなければならないから。貨幣がこれを解決する
「欲求の二重の一致」が要らなくなる。貨幣を仲立ちにすれば、売る相手と買う相手が別々でよい。
貨幣の 4 つの機能とは?
価値尺度・交換手段(流通手段)・価値貯蔵手段・支払手段
値打ちを測るものさし、売り買いの仲立ち、価値をためておく手段、借金の返済などに使う手段。
3. 需要・供給と曲線の動き
根拠: 学習指導要領 政治・経済-A-(1)-ア-(イ)
市場では、買い手が「この価格ならこれだけ買う」という需要と、売り手が「この価格ならこれだけ売る」という供給が出会います。
縦軸に価格、横軸に数量をとると、需要曲線は右下がり、供給曲線は右上がりになります。
試験でいちばん間違えやすいのは、「価格が変わったこと」と「価格以外の条件が変わったこと」の区別です。
| 変わったもの | 起きること | 例 |
|---|---|---|
| その財の価格 | 曲線の上を動く(需要量・供給量が変わる) | 値下げで買う量が増える |
| 所得・好み・関連する財の価格 | 需要曲線が動く | 所得が増えて需要曲線が右へ |
| 原材料費・技術・税・天候 | 供給曲線が動く | 原材料費が上がって供給曲線が左へ |
ある財の価格が下がって、その財を買う量が増えた。これは需要曲線が右へ動いたと言えるか?
言えない。需要曲線はそのままで、曲線の上を右下へ動いただけ
その財自身の価格の変化は曲線の上の移動。曲線そのものが動くのは、所得や好みなど価格以外の条件が変わったとき。
原材料の価格が上がった。供給曲線はどちらへ動き、均衡価格と取引量はどうなるか(需要曲線は変わらないとする)?
供給曲線が左(上)へ動き、均衡価格は上がり、取引量は減る
どの価格でも売ろうとする量が減るため。天候不順で野菜の収穫が減ったときも同じ形になる。
バターとマーガリンのように、一方の価格が上がると他方の需要が増える関係にある 2 つの財を何という?
代替財
バターが値上がりすると、マーガリンの需要曲線が右へ動く。逆に、パンとジャムのように一緒に使われ、一方の値上がりで他方の需要も減る関係の財は補完財。
4. 価格の働きと価格弾力性
根拠: 学習指導要領 政治・経済-A-(1)-ア-(イ)
価格は、どこで品物が足りずどこで余っているかを、売り手にも買い手にも知らせる信号として働きます。
その働きがうまくいくための条件と、価格の変化に数量がどれだけ反応するかを押さえます。
市場がうまく働かない場合は 市場の失敗と政府の役割 で扱います。
ある価格のもとで供給量が需要量を上回っている状態を何といい、そのとき価格はどう動くか?
超過供給。価格は下がる
売れ残りが出るので売り手が値下げし、需要量が増え供給量が減って、均衡に近づく。需要量が上回る状態は超過需要で、価格は上がる。
売り手も買い手も多数いて、誰も一人では価格を左右できず、商品は同質で、情報が行き渡り、市場への参入・退出が自由な市場を何という?
完全競争市場
価格の自動調節機能が理想どおりに働く前提。現実の市場はこの条件のどれかを欠くことが多い。
価格が少し変わったときに、需要量が大きく変わるかどうかの度合いを何という。米や塩のような生活必需品では、その度合いは大きいか小さいか?
需要の価格弾力性。必需品では小さい
値上がりしても買う量をあまり減らせないため、需要曲線は急な傾きになる。ぜいたく品は弾力性が大きく、曲線はなだらか。