政治と法の意義と民主政治の原理
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「政治・経済」A (1) ア (ア) の「政治と法の意義と機能,基本的人権の保障と法の支配」。
政治がなぜ必要で、法が何をするのかを押さえたうえで、民主政治を支える社会契約説・法の支配・権力分立を、思想家と文書の名前まで一段細かく扱います。
日本国憲法の前文と 98 条(最高法規)の文言は、2026-09-27 に e-Gov 法令検索の日本国憲法と突き合わせました。
0. 何を押さえるか
政治は、利害や意見の対立を調整し、社会全体に関わる決定を行って秩序を保つ働きです。決定を実行させる力が政治権力で、
権力が人々に受け入れられる根拠(正統性)が問われます。法は、その決定を誰にでも同じように当てはまるきまりにし、
国家の強制力で裏づけたものです。民主政治は、この権力を国民の同意に基づかせ(社会契約説・国民主権)、
法で縛り(法の支配・立憲主義)、分けて互いに抑えさせる(権力分立)ことで、基本的人権の保障をめざします。
| 思想家 | 著作 | 自然状態 | 社会契約の中身 |
|---|---|---|---|
| ホッブズ | リヴァイアサン | 万人の万人に対する闘争 | 自然権を主権者に譲り渡す |
| ロック | 統治二論(市民政府二論) | おおむね平和だが不安定 | 自然権の保障を政府に信託する(背けば抵抗権) |
| ルソー | 社会契約論 | 自由で平等 | 全員が一般意志に従う(直接民主制) |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- 法の支配は法の内容の正しさ(人権を守るか)まで問う。法治主義(形式的法治主義)は法律の形式が整っていればよいとする
- ロックは抵抗権(革命権)を認め、ホッブズは主権者への服従を説いた。どちらも自然権から出発する
- 権力分立を立法・行政(執行)・司法の三権で説いたのはモンテスキュー。ロックは立法権を優位に置いた二権分立
1. 政治と法の意義と機能
根拠: 学習指導要領 政治・経済-A-(1)-ア-(ア)
政治権力がなぜ従われるのかについて、ドイツの社会学者マックス・ウェーバーは支配の正統性を 3 つの型に分けました。
法は、道徳や慣習と同じく社会の規範ですが、国家権力による強制が伴う点で違います。
マックス・ウェーバーが示した、支配の正統性の 3 つの型は?
伝統的支配・カリスマ的支配・合法的支配
近代国家の官僚制は、定められた規則に従う合法的支配の典型とされる。
法と道徳を比べたとき、法だけが持つ特徴は?
国家権力による強制(制裁)を伴うこと
道徳は内面の良心に働きかけるのに対し、法は主に外に表れた行為を規律し、違反すれば刑罰や損害賠償などで強制される。
時代や場所を超えて人間の本性や理性に基づいて成り立つとされる法を何という?これに対して、議会の制定や慣習など人の手で作られた法は?
自然法。人の手で作られた法は実定法
社会契約説や人権思想は、自然法から導かれる自然権を出発点にしている。
国家と国民の関係を定める公法、私人どうしの関係を定める私法に対して、労働法や社会保障法のように私人の関係に国家が介入して弱い立場の人を守る法を何という?
社会法
資本主義の発達で生じた貧困や労使の力の差を正すため、20 世紀に発達した。
2. 社会契約説
根拠: 学習指導要領 政治・経済-A-(1)-ア-(ア)
17〜18 世紀の社会契約説は、国王の権力は神から授けられたとする王権神授説を否定し、
政治権力の根拠を「自由で平等な個人どうしの契約」に置き直しました。
自然状態を「万人の万人に対する闘争」とし、人々は自己保存のために自然権を主権者に譲り渡すとした思想家と著作は?
ホッブズ『リヴァイアサン』
結論としては強い主権者への服従を説いたため、結果として絶対王政を擁護する面があった。
政府は人々の自然権(生命・自由・財産)を守るために信託されたものであり、政府がそれに背けば人々は抵抗できるとした思想家は?
ロック(『統治二論』)
この抵抗権(革命権)の考え方は、アメリカ独立宣言に大きな影響を与えた。
ルソーが『社会契約論』で説いた、社会全体の共通の利益をめざす人民の意志を何という?
一般意志
一般意志は代表されえないとして、人民が直接政治に参加する直接民主制を理想とした。
3. 基本的人権の保障と法の支配
根拠: 学習指導要領 政治・経済-A-(1)-ア-(ア)
基本的人権の保障と法の支配は、権力を法で縛る立憲主義の両輪です。憲法は、国民を縛るより先に国家権力を縛るための法であり、
日本国憲法も 98 条で自らを「国の最高法規」とし、これに反する法律などは効力を持たないと定めています。
17 世紀のイギリスで、裁判官エドワード・コークが国王ジェームズ 1 世に対して法の支配を主張するときに引いた、13 世紀の法律家ブラクトンの言葉は?
「国王といえども神と法の下にある」
法の支配は、1215 年のマグナ・カルタ以来のイギリスのコモン・ロー(判例法)の伝統の中で育った。
「権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていない社会は、憲法を持たない」と定め、立憲主義の考え方を示した 1789 年の文書は?
フランス人権宣言(人および市民の権利宣言)16 条
人は生まれながらに自由で平等であること(1 条)や、主権が国民にあること(3 条)も定めた。
国家権力を憲法によって制限し、国民の権利と自由を守ろうとする考え方を何という?
立憲主義
日本国憲法 99 条が、国民ではなく天皇・大臣・国会議員・裁判官などの公務員に憲法尊重擁護義務を課しているのは、この考え方の表れとされる。
人権の歴史で、自由権を中心とする「18 世紀的人権」と、社会権を含む「20 世紀的人権」を分ける転換点とされる、社会権を初めて定めた憲法は?
ワイマール憲法(1919 年、ドイツ)
1948 年の世界人権宣言、1966 年の国際人権規約で、人権の保障は国際社会の課題になった。
4. 権力分立と民主政治
根拠: 学習指導要領 政治・経済-A-(1)-ア-(ア)
権力が 1 か所に集まると濫用されるので、分けて互いに抑制と均衡(チェック・アンド・バランス)を働かせます。
日本の三権の関係は 国会と内閣 と 裁判所と司法制度 で、各国の権力分立の違いは 世界の主な政治体制 で扱います。
『法の精神』で、国家権力を立法・行政(執行)・司法の三権に分け、互いに抑制させるべきだと説いた思想家は?
モンテスキュー
三権を分けて抑制と均衡を働かせるしくみは、アメリカ合衆国憲法で最も厳格に取り入れられた。
国民が選んだ代表者が議会で審議して決定する政治のしくみ(間接民主制)で、多数決によって決めるときに欠かせない配慮は?
少数意見の尊重
十分な討論を経ても最後は多数決で決めるが、少数派の権利まで奪えば「多数者の専制」になる。