国民所得と経済成長
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「政治・経済」A (1) ア (イ) の「国民経済の大きさと経済成長」。
一国の経済の大きさをどう測るか(ストックとフロー、GDP と GNI、国民所得)と、それがどれだけ大きくなったか(経済成長率、名目と実質)を扱います。
公共では扱わない、指標どうしの引き算の関係と、成長率の計算まで押さえます。
0. 何を押さえるか
経済の大きさには、ある時点でたまっている量(ストック)と、一定期間に生み出された量(フロー)の 2 通りの測り方があります。
| 指標 | 何を測るか | 求め方 |
|---|---|---|
| 国富 | ストック(ある時点の国の正味の資産) | 非金融資産(建物・土地など)+対外純資産 |
| GDP(国内総生産) | フロー(国内で 1 年間に生まれた付加価値) | 総生産額 − 中間生産物 |
| GNI(国民総所得) | フロー(国民が 1 年間に得た所得) | GDP + 海外からの所得の純受取 |
| NNP(国民純生産) | GNI から機械などのすり減り分を除いたもの | GNI − 固定資本減耗 |
| NI(国民所得) | 生産要素が受け取った所得 | NNP −(間接税 − 補助金) |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- GDP は「国内」、GNI は「国民」。日本企業の海外工場の生産は日本の GDP に入らず、そこからの所得は日本の GNI に入る
- 中間生産物(原材料)を差し引くのは二重に数えないため。GDP は付加価値の合計
- 実質は物価の変動を取り除いた値。物価が上がっている時期は、名目成長率のほうが実質成長率より高くなる
日本の名目 GDP は、2025 年(暦年)でおよそ 660 兆円台(内閣府の四半期別 GDP 速報。速報や年次推計のたびに改定される)。
1. ストックとフロー
根拠: 学習指導要領 政治・経済-A-(1)-ア-(イ)
風呂おけにたまった水の量がストック、蛇口から一定時間に流れ込む水の量がフローにたとえられます。
GDP は 1 年間に流れ込んだ量で、その積み重ねが国富のようなストックになります。
ある時点で一国に蓄積されている正味の資産の量を表す、ストックの指標は何か。何と何の合計で表されるか?
国富。非金融資産(住宅・建物・機械・土地など)と対外純資産の合計
国内の金融資産と負債は、国内の誰かの資産が誰かの負債なので打ち消し合い、国全体では外国に対する分だけが残る。
「GDP」「国富」「家計の貯蓄残高」「1 年間の家計の消費支出」のうち、フローの指標をすべて挙げると?
GDP と、1 年間の家計の消費支出
「一定期間に」生まれたり使われたりした量がフロー。国富と貯蓄残高は、ある時点でたまっている量なのでストック。
2. GDP・GNI・国民所得
根拠: 学習指導要領 政治・経済-A-(1)-ア-(イ)
GDP は、国内で生み出された付加価値の合計です。売上の合計(総生産額)から、原材料などの中間生産物を差し引いて求めます。
たとえば、農家が小麦を 20 万円で製粉所に売り、製粉所が小麦粉を 50 万円でパン屋に売り、パン屋がパンを 100 万円で消費者に売ったとします。
各段階の付加価値は 20 万円・30 万円・50 万円で、その合計 20 + 30 + 50 = 100(万円)が GDP です。売上を足した 20 + 50 + 100 = 170(万円)ではありません。
GDP を総生産額から求めるとき、差し引かなければならないものは何か。それはなぜか?
中間生産物(原材料・燃料など)。そのまま足すと同じ価値を何度も数えてしまうから
小麦の価値は小麦粉の価格にもパンの価格にも含まれている。各段階で新しく生まれた付加価値だけを足す。
GDP(国内総生産)に、海外からの所得の受取を足し、海外への所得の支払を引いたものを何という?
GNI(国民総所得)
かつての GNP(国民総生産)と同じ大きさで、所得の面から見た呼び名。「国内」ではなく「国民(居住者)」の単位で数える。
GNI(国民総所得)から、生産に使った機械や建物のすり減り分を差し引いたものを何という。そのすり減り分を何という?
NNP(国民純生産)。固定資本減耗(減価償却費)
さらに NNP から間接税を引き、補助金を足すと、生産要素に分配された所得である国民所得(NI)になる。
家事労働、ボランティア活動、中古品の売買のうち、GDP に数えられないものは?
すべて数えられない(中古品の売買は仲介の手数料だけが数えられる)
GDP は市場で取引された新たな付加価値だけを数える。家事労働は同じ仕事でも、家事代行業者に頼めば GDP に入る。
国民所得を、生産・分配・支出のどの面から見ても、理論上は同じ大きさになることを何という?
三面等価の原則
生産された付加価値は誰かの所得として分配され、その所得は消費や投資として支出されるため。
GDP は豊かさの指標として不十分だとして、余暇や家事労働の価値を加え、公害などの環境の悪化を差し引いて考えようとした指標を何という?
国民純福祉(NNW)
GDP は公害の後始末の費用もプラスに数えてしまう。より新しい試みにグリーン GDP などがある。
3. 経済成長
根拠: 学習指導要領 政治・経済-A-(1)-ア-(イ)
経済成長とは、GDP が前の年より大きくなることで、その伸びの割合が経済成長率です。
ただし金額で見た GDP(名目)は、生産量が変わらなくても物価が上がれば大きくなります。そこで物価の変動を取り除いた実質 GDPで見ます。
戦後日本の成長の流れは 戦後日本経済の歩み で扱います。
ある国の名目 GDP が、前年の 500 兆円から 520 兆円に増えた。名目経済成長率は何 % か?
4 %
(520 − 500) ÷ 500 × 100 = 4。前年からの増加分を、前年の値で割る。
名目経済成長率が 4 % で、その間に物価(GDP デフレーター)が 2 % 上がった。実質経済成長率はおよそ何 % か?
およそ 2 %(名目成長率 − 物価上昇率)
物価の上昇分は生産の量が増えたわけではないので差し引く。物価が下がっている時期(デフレ)には、実質成長率のほうが名目成長率より高くなる。
名目 GDP を実質 GDP で割って求める、経済全体の物価の動きを表す指数を何という?
GDP デフレーター
名目 GDP ÷ 実質 GDP で求め、基準の年を 100 として表す。消費者物価指数と違い、国内で生産されたものすべての価格を反映する。