功利主義
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「倫理」A (1) ア (ウ) の「善,正義,義務などに着目して,社会の在り方と人間としての在り方生き方について思索するための手掛かりとなる様々な倫理観」。
産業革命が進むイギリスでは、個人が自分の利益を求めることと、社会全体の幸福とをどう両立させるかが問われました。
アダム・スミスは人間の共感の力にその手掛かりを求め、ベンサムとミルは、行為がもたらす幸福の量(と質)を善悪の物差しにする功利主義を唱えました。
動機を重んじるカント(カントの道徳哲学)とは、行為の正しさを結果で測る点で対照的です。
0. 何を押さえるか
| ベンサム | ミル(J. S. ミル) | |
|---|---|---|
| 快楽の見方 | 量の違いだけ(量的功利主義) | 質の違いもある(質的功利主義) |
| 行為を方向づける力(制裁) | 外的制裁(物理的・政治的・道徳的・宗教的) | 内的制裁(良心) |
| 言葉 | 最大多数の最大幸福、快楽計算 | 満足した豚より不満足な人間 |
| 主著 | 『道徳および立法の諸原理序説』 | 『功利主義』『自由論』 |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- 量のベンサム、質のミル
- 外的制裁のベンサム、内的制裁(良心)のミル
- 共感と「公平な観察者」は『道徳感情論』、「見えざる手」は『国富論』。どちらもアダム・スミス
1. アダム・スミス — 共感と見えざる手
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(ウ)
アダム・スミスは経済学の祖として知られますが、もとは道徳哲学者です。
人が利己的にふるまいながらも社会の秩序が保たれるのはなぜか、を 2 冊の著作で論じました。
アダム・スミスが『道徳感情論』で、道徳の基礎に置いた、他人の立場に自分を置いてその感情を分かち合う心のはたらきを何という?
共感(同感)
人は他人の共感を得られるように自分のふるまいを抑制する、とした。
アダム・スミスが、自分の行為の是非を判断するときに心の中に想定するとした、利害関係のない第三者を何という?
公平な観察者(公平な傍観者)
この観察者の共感を得られるかどうかが、行為の適切さの基準になるとした。
アダム・スミスが『国富論』で、各人が自分の利益を追求すれば、市場を通じて結果として社会全体の利益が増すとして用いた比喩は?
見えざる手
そのため国家の経済への干渉を少なくする自由放任(レッセ・フェール)を説いた。ただし、それは共感による道徳的な抑制を前提にしていたとされる。
2. ベンサム — 量的功利主義
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(ウ)
ベンサムは、人間は快楽を求め苦痛を避けるものだという事実から出発しました。
そして、法律や政策の良し悪しも、それが人々の幸福をどれだけ増やすかで測るべきだとしました。
行為の善悪を、それが関係者の幸福(快楽)を増やすか減らすかによって判断するという原理を何という? 唱えたのは誰?
功利性の原理(功利の原理)、ベンサム
主著『道徳および立法の諸原理序説』。人間は快楽と苦痛という 2 つの主人に支配されていると考えた。
ベンサムが、立法や政策の目標として掲げた言葉は?
「最大多数の最大幸福」
社会は個人の集まりにすぎず、社会の幸福は個人の幸福の総和だとした。
ベンサムが、快楽の強さ・持続性・確実性などを基準にして、行為がもたらす快楽の量を数えようとした方法を何という?
快楽計算
快楽には量の違いしかないとするので、ベンサムの立場は量的功利主義と呼ばれる。
ベンサムが、人の行為を外から方向づけて幸福の増進に向かわせる力として挙げた 4 つの制裁(サンクション)は?
物理的制裁・政治的制裁・道徳的制裁・宗教的制裁
中でも法律による政治的制裁を重視した。
3. ミル — 質的功利主義
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(ウ)
ミルは功利主義を受け継ぎながら、快楽には高い・低いの質の違いがあると考え、人間らしい精神的な快楽を重んじました。
また、個人の自由をどこまで守るかという問いにも答えを示しました。
「満足した豚であるより、不満足な人間であるほうがよい」と述べ、快楽には質の違いがあるとした思想家は? その立場を何という?
ミル、質的功利主義
主著『功利主義』。精神的な快楽を身体的な快楽より高く見た。
ミルが、ベンサムの外的制裁に対して重視した、義務に反したときに感じる良心の痛みを何という?
内的制裁
他者の幸福を願う利他的な感情が、人を幸福の増進に向かわせるとした。
ミルが、功利主義の道徳の理想を完全に言い表したものとしたイエスの教えは?
黄金律(「自分がしてもらいたいことを人にせよ」「隣人を自分のように愛せよ」)
功利主義は利己主義ではなく、関係者全員の幸福を等しく考えるものだとした。
ミルが『自由論』で示した、社会が個人の自由に干渉してよいのは他者への危害を防ぐ場合に限られるという原則を何という?
他者危害原則(危害原理)
本人にしか関わらない行為は、たとえ愚かに見えても本人の自由に任されるべきだとした。