暗号・認証
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
シラバス案 Ver.0.1 の小分類 6-25-1「技術的セキュリティ対策」(大分類 6:セキュリティ/中分類 25:情報セキュリティ対策)のうち、
項目「暗号技術」「公開鍵基盤」「認証技術」「利用者認証」を扱うノート。
2026-09-26 にシラバス本文と突合済み。
同じ小分類の残り(マルウェア対策・脆弱性対策・ネットワークの守り)は 技術的セキュリティ対策 にあります。
0. 何を押さえるか
最大の山は公開鍵暗号方式の鍵の向きです。目的によって、使う鍵が逆になります。
| 目的 | 送る側が使う鍵 | 受け取る側が使う鍵 |
|---|---|---|
| 秘密にする(暗号化) | 受信者の公開鍵で暗号化 | 受信者の秘密鍵で復号 |
| 本人だと示す(デジタル署名) | 送信者の秘密鍵(署名鍵)で署名 | 送信者の公開鍵(検証鍵)で検証 |
秘密鍵を持っているのは本人だけ——ここから考えれば、向きは導けます。
秘密にしたいなら受信者だけが開けられる鍵で、本人だと示したいなら本人しか持たない鍵で。
もう 1 つは認証の 3 要素です。シラバスは記憶・所有・生体と呼びます。
| 要素 | 例 |
|---|---|
| 記憶(知っているもの) | パスワード、PIN コード |
| 所有(持っているもの) | IC カード、スマートフォン |
| 生体(本人の体や動き) | 指紋、顔、静脈 |
多要素認証は「違う要素を 2 つ以上」。パスワードを 2 回聞いても多要素にはなりません。
1. 暗号技術
根拠: シラバス 6-25-1
暗号化と復号とは? 暗号鍵・復号鍵とは?
| 何をするか | 使う鍵 | |
|---|---|---|
| 暗号化 | 元のデータ(平文)を、第三者に読めない形(暗号文)に変える | 暗号鍵 |
| 復号 | 暗号文を、元のデータに戻す | 復号鍵 |
暗号鍵と復号鍵が同じなら共通鍵暗号方式、
違う(対になっている)なら公開鍵暗号方式。
共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式の違いは?
| 鍵 | 処理 | 課題 | |
|---|---|---|---|
| 共通鍵暗号方式 | 暗号化と復号に同じ共通鍵 | 速い | 鍵を相手へ安全に渡す方法が要る。相手ごとに鍵が要る |
| 公開鍵暗号方式 | 公開鍵と秘密鍵の対 | 遅い | 処理が重い |
公開鍵は誰に配ってもよい。秘密鍵だけを本人が守る。
実際には両方を組み合わせ、共通鍵の受け渡しだけを公開鍵暗号方式で行い、
本文は共通鍵で暗号化する(速さと安全な受け渡しを両取りする)。
RSA 暗号と耐量子計算機暗号(PQC)の関係は?
| 何か | |
|---|---|
| RSA暗号 | 代表的な公開鍵暗号方式。大きな数の素因数分解が難しいことを安全性の根拠にする |
| 耐量子計算機暗号(PQC) | 量子コンピュータが実用化されても解読されにくいように設計された、新しい暗号 |
量子コンピュータが十分に大きくなると、
RSA 暗号のような今の公開鍵暗号は短時間で解かれるおそれがある。
それに備えて移行を準備しておくのが PQC。
米国の NIST が標準化を進めていて、2024 年 8 月に最初の標準(FIPS 203・204・205)を公表した。
ハッシュ関数とは? 暗号化と何が違うか?
入力から、決まった長さの値(ハッシュ値)を作り出す関数
| 元に戻せるか | |
|---|---|
| 暗号化 → 復号 | 戻せる(鍵があれば) |
| ハッシュ関数 | 戻せない(一方向) |
- 同じ入力からは必ず同じ値が出る
- 入力が 1 文字でも変われば、まったく違う値になる
だから改ざんされていないか(完全性)の確認に使える。
ブロックチェーンは、なぜ改ざんが難しいか?
取引の記録をブロックにまとめ、
各ブロックに「直前のブロックのハッシュ値」を入れて鎖のようにつなぐ
1 つのブロックを書き換えると、ハッシュ値が変わり、
後ろにつながるブロックとの整合が崩れる。
さらに同じ記録を多数の参加者が分散して持つので、
一か所を書き換えても多数派と食い違って見破られる。
暗号資産の基盤になっている。
2. 公開鍵基盤
根拠: シラバス 6-25-1
公開鍵基盤(PKI)とは? なぜ必要か?
公開鍵が本当にその人(そのサーバ)のものであることを、
第三者が保証する仕組み(PKI:Public Key Infrastructure)
公開鍵暗号方式には弱点がある——
受け取った公開鍵が、本当に相手のものか分からない。
偽物をつかまされると、攻撃者に読める形で送ってしまう。
そこで認証局(CA)が、「この公開鍵は確かにこの人のもの」という
デジタル証明書(公開鍵証明書)を発行する。
ルート証明書・サーバ証明書・クライアント証明書の違いは?
| 何を証明するか | |
|---|---|
| ルート証明書 | 認証局自身の証明書。信頼の連鎖の起点になる |
| サーバ証明書 | その Web サーバが本物であること(利用者が偽サイトを見分けられる) |
| クライアント証明書 | その利用者(端末)が正規であること(社内システムへの接続制限など) |
サーバ証明書をたどっていくと、ルート証明書に行き着く。
ルート証明書を信じるから、その下の証明書も信じられる。
証明書失効リスト(CRL)とは? なぜ要るか?
有効期限内だが、無効にされた証明書の一覧(CRL:Certificate Revocation List)
認証局(CA)が公開する。
秘密鍵が漏れた、記載内容が変わった、などの理由で証明書を失効させる。
有効期限だけを見ても不十分で、
失効していないかを確かめて初めて、その証明書を信用できる。
3. 認証技術
根拠: シラバス 6-25-1
デジタル署名の仕組みは? どの鍵を使い、何が分かるか?
送信者が自分の秘密鍵(署名鍵)で署名し、
受信者が送信者の公開鍵(検証鍵)で確かめる
暗号化とは鍵の向きが逆。
これで分かること:
- 本人が作成したこと(なりすましでない)
- 途中で改ざんされていないこと
さらに、送信者は後から「送っていない」と言えなくなる(否認防止)。
デジタル署名とタイムスタンプ(時刻認証)の違いは?
| 何を保証するか | |
|---|---|
| デジタル署名 | 誰が作成したか、改ざんされていないか |
| タイムスタンプ(時刻認証) | いつ存在したか、その時刻より後に改ざんされていないか |
誰がを示すのが署名、いつを示すのがタイムスタンプ。
電子契約や、発明の日時を示す文書などで組み合わせて使う。
4. 利用者認証
根拠: シラバス 6-25-1
多要素認証と多段階認証の違いは?
| 何か | |
|---|---|
| 多要素認証 | 記憶・所有・生体のうち、異なる要素を 2 つ以上組み合わせる |
| 多段階認証 | 認証を複数回に分けて行う(要素が同じでもよい) |
例: パスワード → 秘密の質問 は多段階だが、どちらも記憶なので多要素ではない。
パスワード → スマートフォンに届いたコード は多段階で、しかも多要素(記憶+所有)。
ログイン(利用者 ID とパスワード)だけでは、漏れたら終わりなので、
別の要素を組み合わせる。
ワンタイムパスワードとリスクベース認証の違いは?
| 何をするか | |
|---|---|
| ワンタイムパスワード | 一度しか使えない使い捨てのパスワード。盗まれても再利用できない |
| リスクベース認証 | いつもと違う端末・場所からのログインなど、危険度が高いときだけ追加の認証を求める |
リスクベース認証は、普段は手間を増やさず、怪しいときだけ厳しくする——
利便性と安全性を両立させる考え方。
パスキーとは? パスワードと比べて何がよいか?
パスワードの代わりに、端末に保存した秘密鍵で認証する仕組み
- 利用者は、端末の生体認証や PIN コードで本人確認するだけ
- サーバに預けるのは公開鍵だけなので、サーバから漏れても悪用されにくい
- 鍵は正規のサイトとだけ結びつくので、フィッシングサイトに入力させられることがない
PIN コードはその端末の中だけで使う暗証番号で、ネット越しに送られない。
シングルサインオンとアクセス管理の関係は?
| 何か | |
|---|---|
| シングルサインオン | 一度の認証で、複数のサービスを使えるようにする |
| アクセス管理 | 誰に、どの情報・機能を使わせるかを決めて管理する |
シングルサインオンは便利だが、
その 1 回の認証が破られると、つながる全サービスに入られる。
多要素認証と、必要最小限の権限にするアクセス管理を組み合わせる。
IC カードと eKYC とは?
| 何か | |
|---|---|
| ICカード | IC チップを埋め込んだカード。所有による認証に使う(社員証、マイナンバーカード) |
| eKYC | オンラインで行う本人確認(electronic Know Your Customer)。本人確認書類と、その場で撮った顔の画像などで確かめる |
eKYC は、口座開設などで窓口に行かず・郵送を待たずに本人確認を済ませられる。
日本の銀行口座の開設などでは、犯罪収益移転防止法が求める本人確認をオンラインで行う方法として使われる
(認められる方法は同法の施行規則で決まっていて、見直しが続いている)。
生体認証の「身体的特徴」と「行動的特徴」の違いは?
| 例 | |
|---|---|
| 身体的特徴 | 指紋、静脈パターン認証、虹彩認証、顔認証、網膜認証 など |
| 行動的特徴 | 署名の筆跡や書き順、キーを打つリズム、歩き方 など |
体の形を見るか、癖(動き)を見るか。
静脈・虹彩・網膜のような体の内側の特徴は、偽造が難しい。
本人拒否率(FRR)と他人受入率(FAR)の関係は?
| 何を表すか | |
|---|---|
| 本人拒否率(FRR) | 本人なのに拒否される割合 |
| 他人受入率(FAR) | 他人なのに受け入れてしまう割合 |
判定を厳しくすると FAR は下がるが、FRR は上がる(トレードオフ)。
安全を優先すると本人が弾かれて不便になり、
便利さを優先すると他人が通りやすくなる。用途に合わせて調整する。