取引関連法規
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
シラバス案 Ver.0.1 の小分類 4「取引関連法規」(大分類 7:倫理・コンプライアンス/中分類 28:ビジネス関連法規)。
2026-09-26 にシラバス本文と突合済み。
0. 何を押さえるか
取引の法律は、誰と誰の取引を、どちらを守るために縛るかで分けます。
| 法律 | 守られる側 | 縛られる側 |
|---|---|---|
| 民法 | (当事者どうし対等が前提) | — |
| 中小受託取引適正化法(取適法) | 仕事を受ける中小企業 | 仕事を出す企業(委託事業者) |
| 特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律 | 出店者・アプリ開発者など | 大規模なプラットフォーム事業者 |
| 特定商取引法 | 消費者 | 訪問販売・通信販売などの事業者 |
| 景品表示法 | 消費者 | 表示・景品を出す事業者 |
| 資金決済法 | 利用者(お金を預ける人) | 電子マネー・送金・暗号資産の事業者 |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つです。
- 請負は「完成」に責任、準委任は「作業」に責任(完成しなくても報酬を請求できる)
- 旧「下請法」は 2026 年 1 月から「取適法」。呼び名も「親事業者→委託事業者」「下請事業者→中小受託事業者」に変わった
- 通信販売にはクーリング・オフが無い(返品できるかは事業者の表示による)
1. 民法の契約
根拠: シラバス 7-28-4
契約はいつ成立するか? 契約書は必要か?
申込みと承諾の意思表示が合致したときに成立する(契約の基礎)。
原則として契約書などの書面は不要で、口頭でも成立する。
売買契約の成立も同じで、「売ります」「買います」が合えばその時点で成立し、
代金の支払いや品物の引渡しは成立の後の義務になる。
書面は、後で争いになったときの証拠として作る。
請負契約と準委任契約の違いは?
| 何に責任を負うか | 報酬 | |
|---|---|---|
| 請負契約 | 仕事の完成 | 完成した成果に対して支払う |
| 準委任契約 | 業務を遂行すること(善良な管理者としての注意義務。完成義務は無い) | 行った事務(作業)に対して支払う |
法律行為(契約など)を任せるのが委任、それ以外の事務(作業)を任せるのが準委任。
システム開発では、成果物を納める開発が請負、要件定義や運用支援が準委任になることが多い。
請負では、納めた物が契約の内容に合わなければ契約不適合責任(修補・代金減額など)を負う。
2. 中小受託取引適正化法(取適法)
根拠: シラバス 7-28-4
正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」。
下請法(下請代金支払遅延等防止法)を改正・改称したもので、2026 年 1 月 1 日に施行されました。
中小受託取引適正化法(取適法)とは? 旧下請法から何が変わったか?
仕事を発注する事業者が、立場の弱い中小の受注者に不利な取引を押し付けないよう縛る法律
| 変わった点 | 中身 |
|---|---|
| 名称・用語 | 下請法 → 取適法。親事業者 → 委託事業者、下請事業者 → 中小受託事業者 |
| 適用の基準 | 資本金に加え、従業員数の基準が加わった |
| 対象取引 | 発荷主が運送を委託する取引(特定運送委託)が加わった |
| 禁止行為 | 手形払いの禁止、受注者から求められた価格協議に応じない一方的な代金決定の禁止などが加わった |
ソフトウェアの開発委託(情報成果物作成委託)も対象。
取適法で、委託事業者(発注者)が守るべき主なことは?
| 区分 | 例 |
|---|---|
| 義務 | 発注内容・代金・支払期日などを書面または電磁的方法で明示する |
| 義務 | 代金の支払期日を、受領した日から 60 日以内のできるだけ短い期間で定める |
| 禁止 | 受領拒否、代金の減額、支払遅延(手形の交付も含む)、返品、買いたたき |
| 禁止 | 協議に応じない一方的な代金決定 |
受注者が同意していても、禁止行為は違反になる。
3. プラットフォーム・消費者・決済の法律
根拠: シラバス 7-28-4
特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律とは?
大規模なデジタルプラットフォーム(オンラインモール、アプリストアなど)の運営者に、取引の透明性と公正性を高めるよう求める法律
| 仕組み | 中身 |
|---|---|
| 指定 | 規模の大きい事業者を経済産業大臣が指定する |
| 開示 | 出店者・利用事業者への取引条件の開示(変更時の事前通知など) |
| 体制整備 | 苦情処理などの手続・体制の整備 |
| 報告と評価 | 毎年、運営状況を報告し、国が評価する |
守られるのは主にプラットフォームを使って商売する事業者。
特定商取引法とは? クーリング・オフが無いのはどの取引か?
訪問販売・通信販売・電話勧誘販売など、トラブルになりやすい取引から消費者を守る法律
事業者に表示義務などを課し、訪問販売などではクーリング・オフ(一定期間なら無条件で契約を解除できる)を認める。
通信販売(ネット通販を含む)にはクーリング・オフが無い。
消費者が自分から申し込む取引だからで、返品できるかは事業者が表示する返品特約による。
景品表示法とは?
商品・サービスの品質や価格について、実際よりよく見せる表示(不当表示)や、過大な景品類を規制する法律
| 不当表示 | 例 |
|---|---|
| 優良誤認 | 根拠なく「業界 No.1 の性能」と表示する |
| 有利誤認 | ずっと同じ値段なのに「今だけ半額」と表示する |
広告であることを隠した宣伝(ステルスマーケティング)も不当表示に当たる。
資金決済法が規制するものは?
お金を払う・送るための仕組みを提供する事業者
| 対象 | 例 |
|---|---|
| 前払式支払手段 | 前もってお金を入れて使う電子マネー・プリペイドカード・商品券 |
| 資金移動業 | 銀行以外が行う送金サービス |
| 暗号資産交換業 | 暗号資産(仮想通貨)の売買・交換 |
| 電子決済手段 | 法定通貨と価値が連動するステーブルコインなど |
払うための仕組みを扱う点で、投資の商品を扱う金融商品取引法と区別する。
4. 企業間の取引に関わる契約
根拠: シラバス 7-28-4
外部委託契約で、発注側が決めておくべきことは?
業務の一部を社外に任せる(アウトソーシング)ときに結ぶ契約
| 決めておくこと | 理由 |
|---|---|
| 契約の形(請負か準委任か) | 完成責任の有無が変わる |
| 成果物の著作権などの帰属 | 決めないと作った委託先に残る |
| 秘密保持と再委託の可否 | 情報が知らない会社に渡るのを防ぐ |
委託しても、個人情報などの管理責任は委託元に残る(委託先を監督する)。
守秘契約(NDA)とは? いつ結ぶか?
取引の中で知った相手の秘密情報を、外部に漏らさず、目的外に使わないことを約束する契約
NDA は Non-Disclosure Agreement(秘密保持契約)の略。
商談や見積りのために社内情報を見せる前、つまり本契約より先に結ぶことが多い。
契約が終わった後も一定期間は効力が続くよう定める。
ソフトウェア使用許諾契約(ライセンス契約)とボリュームライセンス契約の違いは?
| 契約 | 中身 |
|---|---|
| ソフトウェア使用許諾契約(ライセンス契約) | ソフトウェアを使う権利を与える契約。著作権そのものは開発元に残る |
| ボリュームライセンス契約 | 企業などが多数の利用権をまとめて契約する形。1 本ずつ買うより割安で、管理も一括 |
買ったのは「ソフトウェアそのもの」ではなく使う権利なので、
許諾された台数・人数を超えてインストールすれば違反になる。