謙譲語
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
0. どういうまとまりか
謙譲語は動作を受ける人を高める敬語です(→ 敬語の種類と敬意の方向)。
尊敬語と同じく、ふつうの動詞が別の語に置き換わります。
| もとの動詞 | 謙譲語 | 訳 |
|---|---|---|
| 言ふ | 申す・聞こゆ・聞こえさす | 申し上げる |
| 言ふ(天皇・上皇に) | 奏す | (天皇に)申し上げる |
| 言ふ(皇后・中宮・皇太子に) | 啓す | (皇后・皇太子に)申し上げる |
| 行く・来 | 参る・まうづ | 参上する・参詣する |
| 出づ・去る | まかる・まかづ | 退出する・おいとまする |
| 与ふ | 奉る・参らす | 差し上げる |
| 受く・聞く | 承る | お受けする・お聞きする |
| 受く | 賜はる | いただく |
| あり・居り(貴人のそばに) | 候ふ・侍り | お仕えする・お控えする |
分かれ目は次の 3 つ。
- 「奏す」「啓す」は申し上げる相手が決まっている。奏す=天皇(上皇)、啓す=皇后・中宮・皇太子。
- 「参る」「奉る」は尊敬語にもなる。飲食・着る・乗るの意味なら尊敬語(召し上がる・お召しになる)。
- 下二段活用の「給ふ」は謙譲語。会話文・手紙文で、話し手自身の「思ふ・見る・聞く・知る」に付く。
1. 「言う」の謙譲語
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
「言ふ」の謙譲語は、申し上げる相手の身分によって語が変わります。
「申す」「聞こゆ」は、何という動詞の謙譲語か? どう訳すか?
「言ふ」の謙譲語で、申し上げる。
補助動詞としては「お〜申し上げる」(例:頼み聞こゆ=お頼み申し上げる)。
「聞こえさす」はどう訳すか? 「聞こゆ」とどう違うか?
申し上げる。「聞こゆ」より敬意が高い。
「奏す」はどう訳すか?
(天皇・上皇に)申し上げる
申し上げる相手が天皇(上皇)に限られるので、「奏す」があれば動作を受ける人は天皇と決まる。
「啓す」はどう訳すか?
(皇后・中宮・皇太子に)申し上げる
「奏す」は天皇、「啓す」は皇后・皇太子と、相手で使い分ける。
2. 「行く・来る」「出る」の謙譲語
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
「参る」は貴人のところへ行く、「まかる」は貴人のところから去るで、向きが逆です。
「参る」「まうづ」を謙譲語として使うとき、どう訳すか?
参上する・参詣する(「行く・来」の謙譲語)
貴人のいる所や寺社へ行くことを表す。
「まかる」「まかづ」はどう訳すか?
退出する・おいとまする(「出づ・去る」の謙譲語)
貴人のいる所から離れることを表し、「参る」と向きが逆。
3. 「与える・受ける」「いる」の謙譲語
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
「賜はる」(いただく)は謙譲語、「賜ぶ」「給ふ(四段)」(くださる)は尊敬語です。やり取りの向きで見分けます。
「奉る」「参らす」を謙譲語として使うとき、どう訳すか?
差し上げる(「与ふ」の謙譲語)。補助動詞ならお〜申し上げる。
(例)文を奉る。→ 手紙を差し上げる。
「承る」はどう訳すか?
お受けする・お聞きする・うかがう(「受く」「聞く」の謙譲語)
「賜はる」はどう訳すか?
いただく(「受く」の謙譲語)
「賜ふ・給ふ(四段)」(くださる=尊敬語)と、やり取りの向きが逆。
謙譲語の「候ふ」「侍り」はどう訳すか?
お仕えする・お控えする。貴人のそばに「あり・居り」の謙譲語。
(例)御前に候ふ人。→ 御前にお仕えする人。
4. 下二段の「給ふ」
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
「給ふ」には四段活用(尊敬語)と下二段活用(謙譲語)の 2 つがあります。
下二段の「給ふ」は補助動詞だけで、使われる場面が決まっているので見分けられます。
| 活用形 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 四段(尊敬) | 給は | 給ひ | 給ふ | 給ふ | 給へ | 給へ |
| 下二段(謙譲) | 給へ | 給へ | (給ふ) | 給ふる | 給ふれ | ○ |
下二段活用の「給ふ」(謙譲語)が使われるのは、どんな場面・どんな動詞に付くときか?
会話文・手紙文で、話し手(書き手)自身の「思ふ・見る・聞く・知る」に付くとき。
訳は「〜ております・〜させていただく」。(例)思ひ給へて=思っておりまして。
「給へ」が四段(尊敬)か下二段(謙譲)かは、どう見分けるか?
下に続く語で活用形を決める。「給へず」「給へて」のように未然形・連用形なら下二段(謙譲)、「給へど」「給へ。」(命令)のように已然形・命令形なら四段(尊敬)。
「給ふる」「給ふれ」の形なら必ず下二段。
5. 尊敬語になる「参る」「奉る」
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
「参る」「奉る」は、謙譲語として覚えたあとで、尊敬語の用法を足します。
食べる・飲む・着る・乗るの意味になるときは、その動作をする人を高める尊敬語です。
「参る」が尊敬語になるのはどんな意味のときか? どう訳すか?
食ふ・飲むの意味のとき。訳は召し上がる。
(例)御湯参る。→ お湯を召し上がる。
「奉る」が尊敬語になるのはどんな意味のときか? どう訳すか?
食ふ・飲む/着る/乗るの意味のとき。訳は召し上がる/お召しになる/お乗りになる。
(例)御衣を奉る。→ お着物をお召しになる。