貸倒引当金
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
出題区分表 第二 5「引当金」ア(貸倒引当金・実績法)。
0. どういう処理か
売掛金がすべて回収できるとは限りません。相手が倒産すれば取り立てられなくなります(貸倒れ)。
これが起きたときに全額を損失にすると、売った年度は利益が出て、
回収できなかった年度に損が出るという、実態とずれた見え方になります。
そこで、売った年度のうちに「たぶんこれくらいは回収できない」と見積もって費用にしておく。
これが貸倒引当金です。売上と、それに伴う損失を同じ年度に対応させる考え方です。
3 級で問われるのは次の 2 つの場面だけです。
| 場面 | 使う勘定 |
|---|---|
| 決算:来期の貸倒れを見積もる | 貸倒引当金繰入(費用)/貸倒引当金 |
| 実際に貸し倒れた | 貸倒引当金を取り崩す。足りなければ貸倒損失(費用) |
引当金の額は差額補充法で求めます。
すでに積んである残高がある場合、目標額との差額だけを追加します。
最大の分かれ目は、貸し倒れた債権がいつ発生したものかです。
- 前期から繰り越してきた売掛金が貸倒れ → 前期に引当金を積んである → 貸倒引当金を取り崩す
- 当期に発生した売掛金が貸倒れ → まだ引当金の対象になっていない → 貸倒損失
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 繰入額は見積額そのものではなく、見積額 − 現在の残高
- 当期発生の債権の貸倒れは貸倒引当金を使わない
- 過年度に貸倒処理した債権が回収できたら、償却債権取立益(収益)
1. 決算時の見積もり(差額補充法)
根拠: 出題区分表 二-5-ア
期末の売掛金等の残高に、過去の実績から求めた率を掛けて見積もります(実績法)。
すでに引当金が残っていれば、それを差し引いた額だけ繰り入れます。
決算日、売掛金の期末残高は ¥500,000。貸倒実績率 2%。貸倒引当金の残高は ¥0。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 貸倒引当金繰入 10,000 | 貸倒引当金 10,000 |
¥500,000 × 2% = ¥10,000。残高が 0 なので全額を繰り入れる。
決算日、売掛金の期末残高は ¥500,000、貸倒実績率 2%。貸倒引当金の残高が ¥4,000 ある。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 貸倒引当金繰入 6,000 | 貸倒引当金 6,000 |
見積額 ¥10,000 − 残高 ¥4,000 = ¥6,000 だけ繰り入れる(差額補充法)。
見積額をそのまま繰り入れないこと。
決算日、見積額は ¥10,000 だが、貸倒引当金の残高が ¥13,000 ある。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 貸倒引当金 3,000 | 貸倒引当金戻入 3,000 |
積みすぎているので ¥3,000 を戻す。相手勘定は収益(貸倒引当金戻入)。
貸倒引当金は資産・負債のどちらに分類される?
どちらでもない。売掛金から差し引く形で表示される(評価勘定)
貸借対照表では売掛金の下に控除項目として並び、売掛金 500,000 / 貸倒引当金 △10,000 / 490,000 のように純額が分かる形で示す。
貸倒引当金の見積もりの対象になるのは、どの債権?
売掛金・受取手形などの売上債権のほか、貸付金など回収不能になりうる債権
3 級では主に売掛金と(あれば)電子記録債権が対象。
問題文で対象が指定されるので、それに従う。
2. 実際に貸し倒れたとき
根拠: 出題区分表 二-5-ア
ここが最大の分かれ目です。その債権が前期以前に発生したものか、当期に発生したものかで
使う勘定が変わります。
前期に発生した売掛金 ¥8,000 が貸し倒れた。貸倒引当金の残高は ¥10,000。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 貸倒引当金 8,000 | 売掛金 8,000 |
前期末に引当金を積んである債権なので、引当金を取り崩す。費用は発生しない。
前期に発生した売掛金 ¥15,000 が貸し倒れた。貸倒引当金の残高は ¥10,000。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 貸倒引当金 10,000 | 売掛金 15,000 |
| 貸倒損失 5,000 |
引当金を使い切り、足りないぶんだけ貸倒損失にする。
引当金をマイナスにはしない。
当期に発生した売掛金 ¥8,000 が貸し倒れた。貸倒引当金の残高は ¥10,000。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 貸倒損失 8,000 | 売掛金 8,000 |
当期に発生した債権は、まだ引当金の見積対象になっていない(前期末には存在しなかった)。
残高があっても取り崩さず、全額を貸倒損失にする。ここが最頻出の引っかけ。
貸倒れの処理で、前期発生か当期発生かを見分ける手がかりは?
問題文の「前期に生じた」「当期に生じた」「前期発生の」といった但し書き
書かれていなければ前期発生(=引当金の対象)として扱うのが通例だが、
3 級の問題では必ず明示されるので読み落とさないこと。
3. 貸倒処理した債権が回収できたとき
根拠: 出題区分表 二-5-ア
過去の年度に「もう回収できない」として落とした債権が、あとから入金されることがあります。
すでに消してある債権なので、売掛金を復活させません。
前期以前に貸倒処理した売掛金 ¥5,000 を、当期に現金で回収した。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 現金 5,000 | 償却債権取立益 5,000 |
すでに帳簿から消してある債権なので売掛金は戻さない。当期の収益として扱う。
当期に貸倒処理した売掛金 ¥5,000 を、同じ期中に現金で回収した。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 現金 5,000 | 貸倒損失 5,000 |
同一期中なら、計上した貸倒損失を取り消す(償却債権取立益は使わない)。
過年度の処理を当期の収益にするのが償却債権取立益なので、期がまたがっていないと出番がない。
償却債権取立益はどの区分の勘定?
収益
損益計算書に収益として載る。名前が長く「益」で終わるので判別しやすい。