売上原価対立法
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
出題区分表 第二 7「商品の売買」イ(販売のつど売上原価勘定に振り替える方法)。
2027 年度から 2 級より降りてきた論点です。2026 年度までの教材には入っていません。
0. どういう処理か
三分法と返品 では、期中は売価だけを記録し、儲けの計算を期末まで先送りしていました。
これは手作業の時代には合理的でしたが、POS レジやシステムを使えば、
売った瞬間にその商品の原価が分かります。
そこで、売るたびに原価を振り替えてしまう方法があります。これが売上原価対立法です。
区分表の言い方では「販売のつど売上原価勘定に振り替える方法」です。
使う勘定は次の 3 つです。
| 勘定 | 区分 | 何を記録するか |
|---|---|---|
| 商品 | 資産 | 手元にある在庫(原価) |
| 売上 | 収益 | 売った額(売価) |
| 売上原価 | 費用 | 売れたぶんの原価 |
三分法との違いは 2 か所だけです。
| 三分法 | 売上原価対立法 | |
|---|---|---|
| 仕入時 | 仕入(費用) | 商品(資産) |
| 売上時 | 売上のみ | 売上 + 原価の振替(2 本立て) |
| 決算整理 | 必要(売上原価を算定する) | 不要(すでに算定済み) |
仕訳が 2 本になる代わりに、決算整理が要らなくなる——これが対立法の本質です。
「対立」とは、売上(収益)と売上原価(費用)を常に対応させて並べる、という意味です。
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 仕入れても「仕入」勘定を使わない(資産の「商品」が増える)
- 売上時は必ず 2 本(売価の仕訳と、原価の仕訳)
- 決算整理仕訳が不要(繰越商品を使わないので
仕入/繰越商品が出てこない)
1. 仕入時と売上時
根拠: 出題区分表 二-7-イ
仕入れた商品は、売れるまでは会社の財産です。だから資産(商品)として持ちます。
売れた瞬間に、その財産が減って費用(売上原価)に変わります。
売上原価対立法で用いる 3 つの勘定と、その区分は?
- 商品 … 資産
- 売上 … 収益
- 売上原価 … 費用
三分法の「仕入・売上・繰越商品」と違い、仕入勘定も繰越商品勘定も使わない。
【売上原価対立法】商品 ¥100,000 を掛けで仕入れた。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 商品 100,000 | 買掛金 100,000 |
仕入(費用)ではなく商品(資産)。 まだ売れていないので費用にはならない。
【売上原価対立法】原価 ¥60,000 の商品を ¥90,000 で掛け販売した。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売掛金 90,000 | 売上 90,000 |
| 売上原価 60,000 | 商品 60,000 |
2 本立て。 上段が売価の記録、下段が原価の振替。
売れたぶんの資産(商品)が減り、費用(売上原価)に変わる。
売上原価対立法で、売上時の仕訳が 2 本になるのはなぜ?
売価と原価が別の事実だから
上段は「いくらで売れたか」(収益の発生と債権の増加)。
下段は「その商品の原価がいくらだったか」(資産の減少と費用の発生)。
どちらか一方だけでは、儲けが記録されない。
【売上原価対立法】上の取引の売上総利益はいくら?
¥30,000(売上 ¥90,000 − 売上原価 ¥60,000)
対立法では、売った時点で儲けが確定している。
期末を待たずに損益計算書の上半分が組める。
2. 決算整理が要らない理由
根拠: 出題区分表 二-7-イ
三分法では、期中に原価が分からないので、期末に在庫を数えて売上原価 = 期首 + 仕入 − 期末 と逆算していました。
対立法では、売るたびに原価を振り替えているので、その逆算が不要です。
売上原価対立法では、決算整理仕訳(仕入/繰越商品・繰越商品/仕入)は必要?
仕入/繰越商品・繰越商品/仕入)は必要?不要
売上原価は期中にすべて振り替え済みなので、期末に算定し直す必要がない。
そもそも繰越商品勘定を使わない。
売上原価対立法で、期末の在庫額はどの勘定に残っている?
商品(資産)
売れたぶんは売上原価へ振り替えられているので、商品勘定の残高がそのまま期末在庫になる。
帳簿を見ればいつでも在庫額が分かる。
三分法と売上原価対立法で、期末の当期純利益に差は出る?
出ない
記録の仕方が違うだけで、最終的な売上・売上原価・利益は同じになる。
違うのは「いつ原価を確定させるか」だけ。
売上原価対立法の実務上の利点は?
いつでも在庫額と売上総利益が帳簿から分かること
三分法は期末を待たないと儲けが分からない。
POS などで販売時に原価を把握できる環境なら、対立法のほうが情報が早い。
【売上原価対立法】掛けで販売した商品(原価 ¥12,000・売価 ¥18,000)が返品されてきた。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売上 18,000 | 売掛金 18,000 |
| 商品 12,000 | 売上原価 12,000 |
売上時の 2 本をそれぞれ逆に書く。 商品が戻ってくるので資産が復活し、
売上原価も取り消す。
問題文が「販売のつど売上原価勘定に振り替える方法による」と指定していたら、どの方法?
売上原価対立法
出題区分表の項目名がそのまま問題文の言い回しになる。
「三分法による」と書かれていれば 三分法と返品 の処理。
どちらか必ず指定されるので、勝手に選ばない。