勘定と仕訳
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
出題区分表 第一 3「勘定」ア・イ・ウ・エ。
このノートが 3 級で唯一「理屈で押さえる」場所です。
ここを丸暗記すると、以降のすべての論点が丸暗記になります。
0. どういう処理か
取引を記録するとき、「現金が増えた」「売上が上がった」と文章で書いていては集計できません。
そこで同じ種類のものを 1 つの箱にまとめて、増減を左右に振り分けて記録します。
この箱が勘定です。
勘定は T 字の形をしていて、左を借方、右を貸方と呼びます。
現 金
─────────────┬─────────────
増えた側 │ 減った側
「借方」「貸方」に意味を求めないでください。
かつては貸し借りの記録から来た言葉ですが、いまは単に左と右の名前です。
覚え方は、かりかた の「り」が左に払う、かしかた の「し」が右に払う、で足ります。
どちらが増加側になるかは、その勘定が 5 要素のどれかで決まります。これが勘定記入法則です。
| 要素 | 増加(発生) | 減少 | 残高が残る側 |
|---|---|---|---|
| 資産 | 借方 | 貸方 | 借方 |
| 負債 | 貸方 | 借方 | 貸方 |
| 資本 | 貸方 | 借方 | 貸方 |
| 費用 | 借方 | — | 借方 |
| 収益 | 貸方 | — | 貸方 |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 借方・貸方は左右の名前でしかない(貸したから貸方、ではない)
- 残高が残る側=増加側(資産と費用は借方、それ以外は貸方)
- 仕訳の借方合計と貸方合計は必ず一致する(一致しなければ仕訳が間違っている)
1. 勘定とは何か
根拠: 出題区分表 一-3-ア
勘定とは何か?
同じ種類の増減をまとめて記録する単位
現金の出入りは「現金勘定」に、売上は「売上勘定」に集める。
1 つ 1 つの勘定に付けた名前が勘定科目。
勘定は 5 つのどれに分類される?
資産・負債・資本(純資産)・収益・費用
前の 3 つが貸借対照表に、後の 2 つが損益計算書に載る。
どれに属するかで、増加が借方か貸方かが決まる。
次の勘定はそれぞれどの分類?
繰越商品・買掛金・繰越利益剰余金・受取手数料・支払家賃
繰越商品・買掛金・繰越利益剰余金・受取手数料・支払家賃
- 繰越商品 … 資産
- 買掛金 … 負債
- 繰越利益剰余金 … 資本
- 受取手数料 … 収益
- 支払家賃 … 費用
「受取◯◯」は収益、「支払◯◯」は費用、が原則。
ただし受取手形(廃止済)や受取商品券は資産なので、名前だけで決めない。
貸倒引当金・減価償却累計額は、どの分類?
どちらも資産のマイナス(評価勘定)
資産の側に属しながら、貸方に残高が残るという例外的な勘定。
貸借対照表では、対応する資産から控除する形で示す。
売掛金 500,000 / 貸倒引当金 △10,000 → 実質 490,000
2. 勘定記入法則
根拠: 出題区分表 一-3-イ
どちら側に書くかを決める規則です。ここだけは理屈で押さえます。
資産が増えたら、借方・貸方のどちら?
借方(左)
資産は借方が増加側。減ったら貸方。
負債・資本が増えたら、借方・貸方のどちら?
貸方(右)
資産と逆。減ったら借方に来る。
負債と資本が同じ側なのは、どちらも資産の出どころを表しているから。
費用が発生したら借方、収益が発生したら貸方。これはなぜそうなる?
費用は資本を減らす原因、収益は資本を増やす原因だから
- 資本の減少は借方 → その原因である費用も借方
- 資本の増加は貸方 → その原因である収益も貸方
5 つ目の規則を覚えるのではなく、資本の規則から導ける。
ある勘定の「残高が残る側」は、どちら側になる?
増加側と同じ側
資産・費用は借方残高、負債・資本・収益は貸方残高。
増える側のほうが必ず大きくなるため。
残高試算表でどちらの列に書くかは、これで決まる。
現金勘定の借方合計が ¥800,000、貸方合計が ¥550,000。残高はいくらで、どちら側?
借方残高 ¥250,000
800,000 − 550,000 = 250,000。資産なので借方に残る。
これが手元に残っている現金の額。
3. 仕訳と転記
根拠: 出題区分表 一-3-ウ
仕訳とは何か?
取引を、借方の勘定科目と貸方の勘定科目に分解して記録すること
いきなり各勘定に書き込むと、取引の全体像が残らず、書き漏れも見つからない。
いったん仕訳として 1 か所に記録してから、各勘定へ移す。
仕訳から総勘定元帳の各勘定へ書き写すことを何という?
転記
仕訳帳 →(転記)→ 総勘定元帳。
借方に書いた勘定はその勘定の借方へ、貸方に書いた勘定はその勘定の貸方へ移す。
左右を入れ替えない。
仕訳を作る 3 手順は?
- 取引で何が増減したかを言葉にする
- それぞれが資産・負債・資本・収益・費用のどれかを決める
- 勘定記入法則で借方・貸方に振り分ける
例:家賃 ¥80,000 を現金で支払った
→ 支払家賃(費用)が発生・現金(資産)が減った
→ 費用の発生は借方、資産の減少は貸方
→ 支払家賃 80,000 / 現金 80,000
1 つの仕訳で、借方に 2 つ以上の勘定が並んでもよい?
よい
例:借入金 ¥100,000 と利息 ¥3,000 を現金で返済
→ 借方に借入金・支払利息の 2 行、貸方に現金 ¥103,000 の 1 行。
借方の合計と貸方の合計が一致していれば、行数は違ってよい。
4. 貸借平均の原理
根拠: 出題区分表 一-3-エ
貸借平均の原理とは?
すべての取引で、借方の合計と貸方の合計が必ず一致するという性質
1 つの取引を必ず 2 つ以上の側面から記録する(複式簿記)ため、
記録が正しければ左右は自動的に釣り合う。
貸借平均の原理は、何の役に立つ?
記入の誤りを発見できる
すべての勘定の借方合計と貸方合計を集めた試算表が一致しなければ、
どこかで書き間違えている。自分で自分を検算できるのが複式簿記の強み。
試算表の貸借が一致していれば、記入に誤りは無いと言い切れる?
言い切れない
左右が同じだけずれる誤りは見つからない。たとえば——
- 取引をまるごと記入し忘れた
- 同じ金額を借方・貸方の両方で間違えた
- 勘定科目を取り違えた(金額は合っている)
- 同じ仕訳を二重に転記した
貸借平均が保証するのは「金額の左右が釣り合っていること」だけ。