製造間接費の配賦
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
出題区分表 工業簿記 第八「製造間接費計算」1〜6。
0. どういう処理か
製造間接費は、どの製品にいくらかかったか分からない原価です。
分からないものを製品に割り当てるのが配賦で、そのために基準を決めます。
配賦率 = 製造間接費 ÷ 配賦基準の総量
配賦額 = 配賦率 × その製品の配賦基準
配賦基準には直接作業時間・機械運転時間・直接労務費などを使います。
「間接費の発生と関係が深いもの」を選びます(機械が動くほど電気代がかかるなら機械運転時間)。
ここで実際発生額を使うと、月末まで配賦できません。
そこで年度のはじめに予定配賦率を決めておき、月中はそれで配賦します。
予定配賦率 = 製造間接費予算額(年間) ÷ 基準操業度(年間)
予定で配賦すると、当然実際発生額とずれます。このずれが製造間接費配賦差異で、
2 級ではこれを予算差異と操業度差異の 2 つに分解させます。
| 差異 | 何を意味するか |
|---|---|
| 予算差異 | 使いすぎ・節約(金額の管理の良し悪し) |
| 操業度差異 | 設備を予定どおり使えたか(固定費の配賦もれ) |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 配賦差異が借方(実際 > 予定)なら不利差異
- 操業度差異は固定費だけから生じる(変動費からは生じない)
- 公式法変動予算では、予算許容額 = 変動費率 × 実際操業度 + 固定費予算額
1. 製造間接費の分類と集計
根拠: 出題区分表 工-八-1、工-八-2
まず「何が製造間接費に入るか」です。費目別計算の 6 分類のうち、間接の 3 つが集まります。
製造間接費に集まるものを挙げよ。
間接材料費・間接労務費・間接経費
費目別計算で「間接」に分類されたものが、費目を問わずここに集まる。
直接費は仕掛品へ直行するので入らない。
製造間接費の管理に使う帳簿は?
製造間接費元帳(部門費集計表を含む)
費目ごと・部門ごとの内訳を持つ。
総勘定元帳の製造間接費勘定は合計しか持たないので、内訳は補助簿で追う。
配賦基準を選ぶときの考え方は?
製造間接費の発生と、因果関係が強いものを選ぶ
| 基準 | 向いている場面 |
|---|---|
| 直接作業時間 | 人手中心の工場 |
| 機械運転時間 | 機械中心の工場 |
| 直接労務費 | 作業時間の記録が取りにくい場合 |
恣意的に選ぶと製品原価が歪む。
2. 実際配賦と予定配賦
根拠: 出題区分表 工-八-3、工-八-4
実際配賦の欠点を理解すると、予定配賦を使う理由が腑に落ちます。
理由が分かっていれば、差異の意味も自然に分かります。
実際配賦の欠点を 2 つ挙げよ。
- 月末に実際発生額が確定するまで配賦できない(製品原価がいつまでも出せない)
- 月ごとの生産量の変動で、製品原価が上下してしまう(固定費は総額が一定なので、
作った数が少ない月ほど 1 個あたりが高くなる)
どちらも予定配賦で解決する。
予定配賦率はどう求める?
年間の製造間接費予算額 ÷ 年間の基準操業度
年度のはじめに決め、1 年間これを使う。
月ごとに計算し直さない(それでは実際配賦と同じことになる)。
年間予算 ¥6,000,000、基準操業度 12,000 時間。当月の直接作業時間が 900 時間のとき、予定配賦額は?
¥450,000
予定配賦率 = ¥6,000,000 ÷ 12,000h = @¥500。
@¥500 × 900h = ¥450,000。
予定配賦したときの仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 仕掛品 450,000 | 製造間接費 450,000 |
製造間接費の貸方に予定配賦額、借方に実際発生額が入る。
この差額が配賦差異になる。
基準操業度とは何か。どんな種類があるか?
予定配賦率を計算するための、1 年間に見込む操業度
| 種類 | 意味 |
|---|---|
| 実際的生産能力 | 最大能力から不可避の休止を差し引いた水準 |
| 期待実際操業度 | 次期に実際に達成が見込まれる水準 |
| 平均操業度 | 数年間の平均的な水準 |
どれを採るかで操業度差異の大きさが変わる。
3. 配賦差異の分析
根拠: 出題区分表 工-八-5
第 4 問で必ず問われるところです。1 つの差異を 2 つに割ります。
製造間接費配賦差異はどう求める?
予定配賦額 − 実際発生額
| 結果 | 呼び方 | 勘定の位置 |
|---|---|---|
| プラス(予定 > 実際) | 有利差異 | 貸方 |
| マイナス(予定 < 実際) | 不利差異 | 借方 |
予定より実際が少なく済んだなら有利。
予定配賦額 ¥450,000、実際発生額 ¥470,000。配賦差異の仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 製造間接費配賦差異 20,000 | 製造間接費 20,000 |
¥450,000 − ¥470,000 = △¥20,000(不利差異・借方)。
公式法変動予算における「予算許容額」の式は?
変動費率 × 実際操業度 + 固定費予算額(月額)
「その操業度なら、これだけは使ってよかったはず」という金額。
実際操業度で計算するのがポイント(基準操業度ではない)。
予算差異はどう求める?何を意味するか?
予算許容額 − 実際発生額
意味は金額の使い方の良し悪し(使いすぎ/節約)。
マイナスなら使いすぎ=不利差異。
操業度差異はどう求める?何を意味するか?
予定配賦額 − 予算許容額、または 固定費率 × (実際操業度 − 基準操業度)
意味は設備を予定どおり使えたかどうか。
予定より操業度が低ければ固定費を配賦しきれず、不利差異になる。
操業度差異が変動費からは生じないのはなぜか?
変動費は操業度に比例して配賦されるので、操業度が変わってもずれないから
固定費は総額が決まっているのに、配賦は操業度に比例して行う。
作る量が減れば配賦額だけが減り、固定費は残る——この取り残しが操業度差異。
月間予算:変動費率 @¥300、固定費 ¥200,000、基準操業度 1,000 時間。実際操業度 900 時間、実際発生額 ¥480,000。予算差異と操業度差異は?
- 予定配賦率 = @¥300 + ¥200,000 ÷ 1,000h = @¥500
- 予定配賦額 = @¥500 × 900h = ¥450,000
- 予算許容額 = @¥300 × 900h + ¥200,000 = ¥470,000
予算差異 = 470,000 − 480,000 = △¥10,000(不利)
操業度差異 = 450,000 − 470,000 = △¥20,000(不利)
合計 △¥30,000 が配賦差異。
固定予算と変動予算の違いは?
| 予算許容額 | |
|---|---|
| 固定予算 | 操業度に関係なく一定(=予算額そのもの) |
| 変動予算 | 操業度に応じて変わる(変動費率 × 実際操業度 + 固定費) |
固定予算では、操業度が動いたぶんがすべて操業度差異に出てしまう。
2 級では公式法変動予算が中心。
4. 配賦差額の処理
根拠: 出題区分表 工-八-6-ア
差異は勘定に残したままにできません。年度末に売上原価へ入れます。
会計年度末に残った製造間接費配賦差異は、どう処理する?
売上原価に加減する(売上原価加減法)
| 差異 | 処理 |
|---|---|
| 不利差異(借方残高) | 売上原価に加算 |
| 有利差異(貸方残高) | 売上原価から減算 |
2 級で使うのはこの方法だけ(営業外損益法・補充率法・繰延法は 1 級)。
不利差異を売上原価に加算する仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売上原価 ××× | 製造間接費配賦差異 ××× |
予定で少なく計算していた原価を、実際まで引き上げる調整。
月末時点で残った配賦差異は、貸借対照表にどう載るか?
会計年度の途中なら、次月へ繰り越す(年度末にまとめて売上原価へ)
原価計算期間は 1 か月だが、差異の最終処理は会計年度末に行う。
月ごとに売上原価へ入れてしまわない。