研究開発費と繰延資産
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
出題区分表 商業簿記 第二 18(研究開発費、創立費・開業費など)。
0. どういう処理か
どちらも「支出したときに費用にするか、資産にして後で費用にするか」という論点です。
研究開発費
全額を発生時に費用にします。例外はありません。
新製品の研究にいくら使っても、それが将来お金を生むかどうかは分かりません。
資産にすると、失敗した研究まで資産として残ってしまいます。
だから発生時に費用にする、というのが会計基準の判断です。
新しく取得した機械でも、研究開発にしか使えないものは研究開発費になります。
固定資産にしません。ここが試験でよく問われます。
繰延資産
すでにお金を払い、サービスも受け終わっているのに、
効果が将来にわたって及ぶという支出です。
会社を作るときの登記費用(創立費)などが典型で、
その効果は会社が続くかぎり及びます。
原則は費用ですが、繰延資産として資産計上し、償却することも認められています。
| 繰延資産 | 内容 | 償却期間 |
|---|---|---|
| 創立費 | 会社設立までの費用(定款作成・登記など) | 5 年以内 |
| 開業費 | 設立後、営業開始までの費用 | 5 年以内 |
| 株式交付費 | 新株発行の費用 | 3 年以内 |
| 開発費 | 新技術・新市場開拓の費用 | 5 年以内 |
| 社債発行費 | 社債発行の費用 | 償還までの期間 |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 研究開発費は必ず費用(資産計上の選択肢は無い)
- 研究開発専用の機械の取得原価も研究開発費
- 繰延資産は資産計上が原則ではなく、認められているだけ(原則は費用)
1. 研究開発費
根拠: 出題区分表 商-二-18
「全額費用」だけ覚えれば足ります。 ひねりは「機械を買った場合」です。
研究開発費はどう処理するか?
発生時に全額を費用として処理する
資産計上は認められていない。
将来の収益に結びつくかどうかが不確実なため。
研究開発のためだけに使う機械 ¥2,000,000 を購入した。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 研究開発費 2,000,000 | 当座預金 2,000,000 |
他に転用できないので固定資産にしない。全額が研究開発費。
最頻出の引っかけ。
研究開発にも他の用途にも使える機械を購入した場合は?
通常どおり固定資産として計上し、減価償却する
転用できるなら将来の収益に貢献しうるので、資産としての性格がある。
研究開発費は損益計算書のどこに載る?
販売費及び一般管理費(または当期製造費用)
営業活動のための支出なので、営業利益より上に入る。
研究開発に従事した従業員の給料はどう処理する?
研究開発費
給料勘定ではなく研究開発費に含める。
「研究開発のために消費したもの」はすべてここに集める。
2. 繰延資産
根拠: 出題区分表 商-二-18
原則は費用、資産計上は「してもよい」という位置づけです。
繰延資産とは何か?
すでに支出し、サービスも受け終わっているが、効果が将来にわたって及ぶ費用
原則は支出時の費用だが、資産計上して償却することも認められる。
創立費と開業費の違いは?
| 対象になる期間 | |
|---|---|
| 創立費 | 会社の設立まで(定款作成・登記費用など) |
| 開業費 | 設立後、営業を開始するまで(開業準備の広告費など) |
境目は会社が成立した日。
会社設立にあたり、定款作成費・登記費用 ¥500,000 を現金で支払い、繰延資産として処理した。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 創立費 500,000 | 現金 500,000 |
資産として計上する。費用処理する指示なら「創立費」を費用として扱う。
(勘定名は同じで、どちらに置くかは処理方法による。)
創立費 ¥500,000 を 5 年で償却する。決算の仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 創立費償却 100,000 | 創立費 100,000 |
直接法(無形固定資産と同じ)。定額法で 5 年以内。
創立費償却・開業費償却は損益計算書のどこに載る?
営業外費用
営業活動そのものの費用ではないため。
(開業費償却を販売費及び一般管理費とすることも認められる。)
繰延資産は貸借対照表のどこに載る?
繰延資産という独立の区分(固定資産の下)
流動資産・固定資産のどちらでもない。
実体のある財産ではないので、独立させて示す。