外貨建取引の換算
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
出題区分表 商業簿記 第二 16「外貨建取引※」ア(外貨建の営業取引)。
0. どういう処理か
ドル建ての取引を円に直すタイミングは 3 回あり、そのたびにレートが違います。
①取引発生 → ②決算 → ③決済
HR CR 決済日レート
レートが動いたぶんが為替差損益です。
①→②、②→③、あるいは①→③のどこで差が出るかを追えば、金額は求まります。
決算日に換算し直す(CR に直す)のは、貨幣性の項目だけです。
| 換算し直す | 換算し直さない |
|---|---|
| 現金・預金 | 商品・建物・備品などの資産 |
| 売掛金・買掛金 | 前払金・前受金 |
| 貸付金・借入金 | 資本金 |
| 未収入金・未払金 | — |
「将来お金を受け取る/払うものかどうか」が判定基準です。
前払金は「商品を受け取る権利」であって、お金が返ってくるわけではありません。
だから決算日のレートには関係なく、払ったときの円の金額のままです。
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 前払金・前受金は換算し直さない(HR のまま)
- 為替差損と為替差益は相殺して純額で表示する(為替差損益)
- 商品の取得原価は仕入時のレートで確定する(決算日に動かさない)
1. 取引発生時と決済時
根拠: 出題区分表 商-二-16-ア
取引日のレートで記帳し、決済日のレートとの差を為替差損益にするだけです。
外貨建取引は、いつのレートで記帳するか?
取引が発生した日のレート(HR)
商品を仕入れた日、売り上げた日のレートで円に換算して記帳する。
1 ドル ¥140 のときに 1,000 ドルの商品を掛けで仕入れた。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 仕入 140,000 | 買掛金 140,000 |
1,000 ドル × @¥140 = ¥140,000。
上の買掛金 1,000 ドルを、1 ドル ¥145 のときに当座預金から支払った。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 買掛金 140,000 | 当座預金 145,000 |
| 為替差損益 5,000 |
円安になったので払う円が増えた。差額 ¥5,000 は為替差損。
売掛金 1,000 ドル(記帳時 @¥140)を、1 ドル ¥145 のときに回収した。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 当座預金 145,000 | 売掛金 140,000 |
| 為替差損益 5,000 |
同じ円安でも、売掛金なら得(受け取る円が増える)。
買掛金とは損益が逆になる。
為替差損益は損益計算書のどこに載る?
営業外収益または営業外費用
差益と差損は相殺して純額で表示する。
残高が借方なら為替差損(営業外費用)、貸方なら為替差益(営業外収益)。
2. 決算時の換算
根拠: 出題区分表 商-二-16-ア
「将来お金でやりとりするものか」だけを判定します。
決算日に換算し直す(CR で評価する)のはどんな項目か?
貨幣性の資産・負債(将来お金を受け取る/払うもの)
現金・預金・売掛金・買掛金・貸付金・借入金・未収入金・未払金など。
決算日に換算し直さないのはどんな項目か?
非貨幣性の項目
商品・建物・備品などの資産、および前払金・前受金。
取得時(支払時)のレートのまま据え置く。
なぜ前払金・前受金は換算し直さないのか?
お金を受け取る/払う権利ではなく、商品を受け取る/渡す権利だから
前払金は「商品をもらう権利」であって、円が返ってくるわけではない。
最頻出の引っかけ。
売掛金 1,000 ドル(記帳時 @¥140)がある。決算日のレートは 1 ドル ¥143。決算の仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売掛金 3,000 | 為替差損益 3,000 |
1,000 ドル × (143 − 140) = ¥3,000 の増加。為替差益。
買掛金 1,000 ドル(記帳時 @¥140)がある。決算日のレートは 1 ドル ¥143。決算の仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 為替差損益 3,000 | 買掛金 3,000 |
負債が ¥3,000 増えるので為替差損。売掛金と逆。
外貨建てで仕入れた商品の取得原価は、決算日に換算し直すか?
しない
商品は非貨幣性の資産。仕入時のレートで確定している。
(期末商品の評価は、その円建て金額をもとに行う。)
外貨建ての前払金 1,000 ドル(支払時 @¥140)がある。決算日のレートは @¥143。決算の仕訳は?
仕訳なし
前払金は換算し直さないので、¥140,000 のまま。
前払金を払って商品を仕入れた場合、仕入の金額はどうなるか?
前払金は支払時のレート、残額は仕入時のレートで換算して合算する
たとえば前払金 ¥28,000(200 ドル @¥140)+ 残 800 ドルを @¥145 で仕入れたなら、
仕入 = 28,000 + 116,000 = ¥144,000。
前払金の部分だけレートが違う。