正常仕損と正常減損
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
出題区分表 工業簿記 第十一 8「正常仕損費と正常減損費の処理(度外視法)」。
0. どういう処理か
大量生産では、どうしても一定の割合で失敗や目減りが出ます。
| 何が起きたか | |
|---|---|
| 仕損 | 不良品ができた(形は残る) |
| 減損 | 蒸発・粉散などでなくなった(形が残らない) |
通常起こる範囲のものを正常仕損・正常減損といい、原価に含めます。
「良品を作るためには、これだけの失敗が避けられない」からです。
2 級で使うのは度外視法です。名前のとおり、
仕損・減損の数量を最初から無かったことにして計算します。
やり方は、ボックス図の右側に仕損・減損を書かないだけです。
そうすると、その原価が自動的に残りの数量に按分されます。
最大の分かれ目は、誰が負担するかです。 これは発生点で決まります。
| 発生点 | 負担する人 | 理由 |
|---|---|---|
| 月末仕掛品の進捗度より前 | 完成品と月末仕掛品の両方 | 月末仕掛品もその点を通過している |
| 月末仕掛品の進捗度より後(終点など) | 完成品だけ | 月末仕掛品はまだその点に達していない |
「月末仕掛品はその発生点を通ったか?」——これだけを判定してください。
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 発生点が月末仕掛品の進捗度より後なら、完成品だけが負担する
- 完成品だけに負担させるときは、月末仕掛品の数量を先に分離して計算する
- 異常な仕損・減損は非原価項目(度外視法の対象外)
1. 度外視法の考え方
根拠: 出題区分表 工-十一-8
「書かない」ことで按分されるという仕組みを納得しておくと、
計算のどこで何をしているのかが見えます。
仕損と減損の違いは?
| 内容 | |
|---|---|
| 仕損 | 不良品が生じること(形が残るので売却できることもある) |
| 減損 | 蒸発・粉散などでなくなること(形が残らない) |
処理の考え方は同じ。仕損だけ評価額がありうる点が違う。
度外視法とは?
仕損・減損の数量を計算上まったく無視して、良品だけで按分する方法
ボックス図の右側に仕損・減損を書かない。
そうすると、その原価は自動的に残りの数量に上乗せされる。
なぜ「書かない」だけで仕損費が按分されるのか?
分母(数量)が減るので、1 個あたりの単価が上がるから
原価の総額は変わらないのに、割る数量が減る。
結果として、良品 1 個が仕損のぶんまで背負う形になる。
正常仕損費と異常仕損費で扱いはどう違う?
| 扱い | |
|---|---|
| 正常 | 原価に含める(度外視法で良品に負担させる) |
| 異常 | 非原価項目(特別損失などにする) |
問題文に「異常な」とあれば、度外視法の外に出す。
2. 発生点による負担の判定
根拠: 出題区分表 工-十一-8
この判定を間違えると、以降の計算が全部ずれます。
毎回「月末仕掛品はその点を通ったか」を口に出して確認してください。
仕損の発生点が工程の 30%、月末仕掛品の進捗度が 60%。誰が仕損費を負担する?
完成品と月末仕掛品の両方
月末仕掛品は 60% まで進んでいるので、30% の地点を通過している。
自分も同じ失敗の可能性をくぐってきた以上、負担する。
仕損の発生点が工程の終点、月末仕掛品の進捗度が 60%。誰が仕損費を負担する?
完成品だけ
月末仕掛品はまだ終点に達していないので、その失敗はまだ起きていない。
両者負担のときの計算のやり方は?
ボックス図の右側に仕損・減損を書かず、そのまま平均法・先入先出法で計算する
分母から仕損数量が消えるので、完成品と月末仕掛品の両方の単価が上がる。
何も特別なことをしないのが両者負担。
完成品のみ負担のときの計算のやり方は?
月末仕掛品を先に、仕損を含めない単価で計算してから、残り全部を完成品にする
- 当月投入から月末仕掛品原価を計算する(仕損数量は分母に含めたまま)
- 残額を完成品総合原価とする
こうすると仕損費が完成品にだけ乗る。
仕損の発生点が不明のときはどうするか?
工程を通じて平均的に発生したものとみなし、両者負担で処理する
問題文に「平均的に発生」とあるときも同じ扱い。
正常仕損品に評価額(売却価値)がある場合はどう処理する?
負担する側の原価から評価額を差し引く
両者負担なら按分前の原価から、完成品のみ負担なら完成品総合原価から引く。
売れるぶんは損失ではないため。
減損に評価額はあるか?
ふつう無い(蒸発・粉散でなくなっているため)
仕損品は形が残るので売却できることがあるが、減損は残らない。
問題文で評価額が与えられていなければ差し引かない。