棚卸減耗損と商品評価損
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
出題区分表 商業簿記 第二 7「商品の売買」ク(棚卸減耗)・ケ(評価替)。
0. どういう処理か
決算で商品を実際に数えると、帳簿と合わないことがあります。原因は 2 つです。
| 原因 | 何が起きたか | 出る損 |
|---|---|---|
| 数が足りない | 盗難・紛失・破損・目減り | 棚卸減耗損 |
| 価値が下がった | 傷んだ・流行遅れ・型落ち | 商品評価損 |
計算は次のとおりです。
棚卸減耗損 = 原価 ×(帳簿数量 − 実地数量)
商品評価損 = 実地数量 ×(原価 − 正味売却価額)
掛ける相手が違います。
- 減耗は「無くなった数量」ぶんなので、原価を掛ける
- 評価損は「残っている商品」の値下がりなので、実地数量を掛ける
なぜ実地数量なのか。 無くなった商品は、値下がりを心配する必要がないからです。
両方に帳簿数量を使うと、無くなったぶんの値下がりまで二重に数えてしまいます。
面積図を書くのが確実です。 横軸に数量、縦軸に単価を取ると、
減耗損は右側の縦長の長方形、評価損は左下の横長の長方形になります。
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 商品評価損に掛けるのは実地数量(帳簿数量ではない)
- 正味売却価額 = 売価 − 見積販売直接経費(売価そのものではない)
- 損益計算書での区分は原価性があるかどうかで変わる
1. 2 つの損の計算
根拠: 出題区分表 商-二-7-ク、商-二-7-ケ
必ず減耗損 → 評価損の順で計算してください。逆にすると数量が混ざります。
棚卸減耗損の式は?
原価 ×(帳簿数量 − 実地数量)
無くなった数量に、原価を掛ける。
商品評価損の式は?
実地数量 ×(原価 − 正味売却価額)
値下がり額に、実地数量を掛ける。
帳簿数量を掛けると、無くなった商品の値下がりまで数えてしまう。
帳簿数量 500 個、実地数量 480 個、原価 @¥300、正味売却価額 @¥260。棚卸減耗損と商品評価損は?
- 棚卸減耗損 = @¥300 ×(500 − 480)= ¥6,000
- 商品評価損 = 480 個 ×(300 − 260)= ¥19,200
評価損の数量は 480(実地)。500 を使わない。
上の例で、貸借対照表に載る商品の金額は?
¥124,800
実地数量 480 個 × 正味売却価額 @¥260 = ¥124,800。
帳簿棚卸高 ¥150,000 から 2 つの損(6,000 + 19,200)を引いた額と一致する。
正味売却価額とは何か?
売価 − 見積販売直接経費
売れる値段から、売るためにかかる費用(運送費・販売手数料など)を引いた額。
売価そのものではない。
正味売却価額が原価を上回っている場合、評価損は計上するか?
しない
商品は「原価と正味売却価額のいずれか低いほう」で評価する(低価法)。
値上がりしても評価益は出さない。
2. 仕訳と表示
根拠: 出題区分表 商-二-7-ク、商-二-7-ケ
決算整理では、まず売上原価を算定してからこの 2 つを計上します。
順番が入れ替わると仕入勘定の残高が合いません。
棚卸減耗損と商品評価損を計上する仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 棚卸減耗損 6,000 | 繰越商品 25,200 |
| 商品評価損 19,200 |
どちらも繰越商品を減らす。実際に残っている価値まで引き下げる。
決算整理で、売上原価の算定と 2 つの損の計上はどちらが先か?
売上原価の算定が先
- 仕入 / 繰越商品(期首)、繰越商品 / 仕入(期末・帳簿棚卸高)
- そのうえで棚卸減耗損・商品評価損を繰越商品から落とす
期末の振替に実地棚卸高を使ってしまうと、減耗損が二重に消える。
商品評価損は損益計算書のどこに載るか?
売上原価の内訳(原則)
商品の価値が下がったことは、売った商品の原価と同じ性質と考える。
損益計算書では「商品評価損」として売上原価に加算する形で示す。
棚卸減耗損は損益計算書のどこに載るか?
原価性があるかどうかで変わる
| 区分 | |
|---|---|
| 原価性がある(毎期通常発生する程度) | 売上原価または販売費及び一般管理費 |
| 原価性がない(異常な量) | 営業外費用または特別損失 |
問題文の指示に従う。指示がなければ原価性ありとして扱うことが多い。
仕入勘定で売上原価を算定している場合、2 つの損はどの勘定から落とす?
繰越商品
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 棚卸減耗損 ××× | 繰越商品 ××× |
| 商品評価損 ××× |
そのうえで、売上原価に含める指示があれば仕入勘定へ振り替える。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 仕入 ××× | 商品評価損 ××× |