未決算と債務の保証
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
出題区分表 商業簿記 第二 21(未決算)・第二 6(債務の保証)。
0. どういう処理か
この 2 つは扱う場面が違いますが、「まだ決まっていないことを、いったん帳簿に載せる」
という点で同じ発想です。
未決算
火災で建物が焼けた。保険を掛けてあるので、いくらか受け取れるはずだが、
保険会社の査定が終わるまで金額が分かりません。
失った建物は帳簿から消さなければならないのに、代わりに何を立てればいいか決まらない。
そこで未決算(または火災未決算)という一時的な勘定に逃がしておきます。
査定額が決まったら、そこで初めて損か益かが確定します。
| 査定額 | 未決算との差 | 結果 |
|---|---|---|
| 未決算より多い | 得をした | 保険差益(収益) |
| 未決算より少ない | 足りない | 火災損失(費用) |
債務の保証
他社の借金の保証人になった。まだ払う必要は無いが、払わされる可能性がある。
この「まだ債務ではないが、なるかもしれない」ものを偶発債務といいます。
帳簿の外の話ですが、読み手に知らせるために対照勘定法で両建てに記録します。
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 未決算に振り替えるのは焼失した資産の帳簿価額(保険金額でも時価でもない)
- 決算をまたぐ場合、未決算はそのまま資産として繰り越す(損益にしない)
- 保証の記録は借方・貸方が同額で、資産も負債も実質は増えていない
1. 未決算(火災未決算)
根拠: 出題区分表 商-二-21
順番は必ず「①資産を消して未決算へ ②査定額が決まって差額を確定」の 2 段階です。
1 回で仕訳を書こうとすると必ず詰まります。
取得原価 ¥1,000,000、減価償却累計額 ¥400,000 の建物が火災で全焼した。保険 ¥800,000 を掛けている。火災時の仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 建物減価償却累計額 400,000 | 建物 1,000,000 |
| 未決算 600,000 |
未決算に載せるのは帳簿価額 ¥600,000(= 1,000,000 − 400,000)。
保険金額 ¥800,000 ではない。まだいくら受け取れるか決まっていないため。
上の続きで、保険会社から ¥700,000 を支払う旨の連絡があった。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 未収入金 700,000 | 未決算 600,000 |
| 保険差益 100,000 |
未決算 ¥600,000 が確定額 ¥700,000 になったので、差額 ¥100,000 が保険差益(収益)。
上と同じ状況で、保険会社の査定額が ¥500,000 だった。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 未収入金 500,000 | 未決算 600,000 |
| 火災損失 100,000 |
確定額が未決算を下回ったので、差額 ¥100,000 は火災損失(費用)。
保険を掛けていない資産が火災で焼失した場合の仕訳は?
未決算を使わず、帳簿価額をそのまま火災損失にする
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 建物減価償却累計額 ××× | 建物 ××× |
| 火災損失 ××× |
受け取れるものが無いので「決まるまで待つ」必要がない。
未決算のまま決算を迎えた。どう扱う?
資産としてそのまま貸借対照表に載せる(損益にしない)
査定が終わっていない以上、損か益かは決まっていない。
「未決算」または「未収入金」として流動資産に表示する。
火災の当期中に減価償却が必要な場合、どの順で処理する?
期首から火災の日までの減価償却をしてから、未決算へ振り替える
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 減価償却費 ××× | 建物減価償却累計額 ××× |
その後で累計額を含めて建物を消す。月割りで計算するので月数を数え間違えない。
2. 債務の保証(対照勘定法)
根拠: 出題区分表 商-二-6
保証人になっただけでは資産も負債も動きません。ですがリスクを負っているので、
その事実を帳簿に残します。借方・貸方に対になる勘定を同額で立てるのが対照勘定法です。
取引先の借入金 ¥500,000 の保証人となった。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 保証債務見返 500,000 | 保証債務 500,000 |
同額を両建てする。実際に支払う義務はまだ無いので、損益には影響しない。
偶発債務があることを帳簿に示すだけ。
保証していた取引先が借入金 ¥500,000 を無事に返済した。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 保証債務 500,000 | 保証債務見返 500,000 |
リスクが消えたので、立てたときの逆仕訳で消す。
保証していた取引先が返済不能となり、代わりに ¥500,000 を当座預金から支払った。仕訳は?
まず対照勘定を消し、次に支払いを記録する。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 保証債務 500,000 | 保証債務見返 500,000 |
| 未収入金 500,000 | 当座預金 500,000 |
支払ったぶんは取引先に請求できる権利(求償権)なので未収入金。
回収の見込みが無ければ、その時点で貸倒損失などに振り替える。
対照勘定法で立てた勘定は、貸借対照表に載るか?
載らない(注記などで示す)
保証債務見返と保証債務は同額で相殺され、実質的な資産・負債ではない。
偶発債務の存在を帳簿と注記で知らせるための仕組み。