契約資産と契約負債
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
出題区分表 商業簿記 第二 4「その他の債権と債務等」エ(契約資産、契約負債)。
0. どういう処理か
3 級では、商品を引き渡したら 売掛金 が立ちました。
2 級では、引き渡したのに 売掛金と呼べない場面が出てきます。
理由は 1 つです。代金を請求できる権利がまだ確定していないからです。
たとえば「商品 A と商品 B を両方引き渡したら、まとめて代金を請求する」という契約で
A だけ先に引き渡した場合、A のぶんの収益は上げてよい(引き渡しは済んだ)けれど、
まだ請求はできません。この状態の権利が契約資産です。
| 状態 | 勘定 | 区分 |
|---|---|---|
| 引き渡した。請求できる | 売掛金 | 資産 |
| 引き渡した。まだ請求できない | 契約資産 | 資産 |
| 先に代金を受け取った。まだ引き渡していない | 契約負債 | 負債 |
契約負債は、3 級でいう前受金と同じ位置にあります。
収益認識の考え方では「まだ果たしていない義務」なので負債です。
分かれ目は「請求権が確定しているかどうか」の一点だけです。
引き渡したかどうかではありません。
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 契約資産は資産、契約負債は負債。名前が似ているので取り違えない
- 請求できるようになった時点で、契約資産 → 売掛金に振り替える
- 契約資産にも貸倒引当金を設定する(回収できなくなる可能性は売掛金と同じ)
1. 契約資産
根拠: 出題区分表 商-二-4-エ
「引き渡したが、まだ請求できない」ときに使います。
収益は計上する(義務は果たしたので)が、売掛金にはしない、という組み合わせです。
商品 A と商品 B を引き渡したときに代金 ¥100,000 をまとめて請求する契約で、A(¥60,000 相当)だけを引き渡した。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 契約資産 60,000 | 売上 60,000 |
A の引き渡しという義務は果たしたので収益は計上する。
だが B を引き渡すまで請求できないので、売掛金ではなく契約資産。
上の続きで、商品 B(¥40,000 相当)を引き渡し、代金 ¥100,000 を請求できるようになった。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売掛金 100,000 | 契約資産 60,000 |
| 売上 40,000 |
B のぶんの売上 ¥40,000 を計上し、契約資産 ¥60,000 を売掛金に振り替える。
契約資産はここで消える。
契約資産と売掛金の違いは?
代金を請求できる権利が確定しているかどうか
| 請求権 | |
|---|---|
| 売掛金 | 確定している(法的な債権) |
| 契約資産 | まだ確定していない |
どちらも資産で、どちらも貸倒引当金の対象になる。
契約資産は貸借対照表でどこに載る?
流動資産(売掛金とは別の行)
売掛金と合算しない。「まだ請求できない」ことが読み手に分かるよう、区分して表示する。
2. 契約負債
根拠: 出題区分表 商-二-4-エ
先にお金をもらってしまったときに使います。もらった以上、
商品を引き渡す義務を負っているので負債です。
商品の販売に先立ち、手付金 ¥50,000 を現金で受け取った。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 現金 50,000 | 契約負債 50,000 |
まだ引き渡していないので売上にはできない。引き渡す義務を負債として計上する。
(3 級で学んだ「前受金」と同じ位置づけ。)
上の続きで商品を引き渡し、残額 ¥150,000 を掛けとした。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 契約負債 50,000 | 売上 200,000 |
| 売掛金 150,000 |
引き渡しで義務が消えるので契約負債を取り崩し、全額を売上に計上する。
契約負債と前受金の関係は?
同じもの(収益認識の用語では契約負債と呼ぶ)
問題文で「前受金」と指示されていればその勘定を使う。
どちらも負債で、義務を果たした時点で収益に振り替える。
商品券を発行して現金を受け取ったときの勘定は?
契約負債(3 級では「発行商品券」として扱った)
商品券は「あとで商品を引き渡す約束」なので、受け取った時点では負債。
使われた時点で売上に振り替える。
3. 契約資産・契約負債と貸倒引当金
根拠: 出題区分表 商-二-4-エ、商-二-5-ア
決算で見落としやすいところです。契約資産も引当金の対象になります。
決算にあたり、売掛金 ¥800,000 と契約資産 ¥200,000 に 2% の貸倒引当金を設定する(残高 ¥0)。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 貸倒引当金繰入 20,000 | 貸倒引当金 20,000 |
(¥800,000 + ¥200,000)× 2% = ¥20,000。
契約資産も回収できなくなりうるので、売掛金と同じく対象にする。
契約負債に貸倒引当金を設定するか?
しない
契約負債は負債(受け取ったお金に対する義務)で、回収する対象ではない。
引当金は債権にだけ設定する。