有価証券の取得と売却
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
出題区分表 商業簿記 第二 2「有価証券」ア(売買、債券の端数利息の処理)・ウ(分記法による処理)。
0. どういう処理か
有価証券は株式と債券(社債・国債)の 2 つに分かれ、金額の決め方が違います。
| 数量の単位 | 単価 | |
|---|---|---|
| 株式 | 株数 | 1 株あたりの価格 |
| 債券 | 額面総額 | 額面 ¥100 あたりの価格 |
債券の「¥98.50」は 1 枚の値段ではなく、額面 ¥100 につき ¥98.50 という意味です。
額面 ¥1,000,000 の社債を ¥98.50 で買えば、支払うのは ¥985,000 です。
ここを取り違えると、以降の計算がすべてずれます。
取得原価には買入手数料を含めます。 手数料を費用にせず、資産の取得原価に含めるのは、
その証券を手に入れるために必要だった支出だからです(固定資産の付随費用と同じ考え方)。
売却したときは、帳簿価額と売却代金の差額が有価証券売却益/売却損になります。
証券を原価で記録し、売却時に差額を損益として出すこの方法を分記法といいます。
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 債券の単価は額面 ¥100 あたり。額面総額 ÷ 100 × 単価
- 買入手数料は取得原価に含める(支払手数料にしない)
- 同じ銘柄を複数回買っていたら、売却時の帳簿価額は平均単価で求める
1. 取得
根拠: 出題区分表 商-二-2-ア
「いくらで資産に載せるか」を決める節です。支払った金額の全部が取得原価になります。
売買目的で A 社株式 100 株を 1 株 ¥800 で購入し、買入手数料 ¥3,000 とともに現金で支払った。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売買目的有価証券 83,000 | 現金 83,000 |
100 株 × ¥800 = ¥80,000 に買入手数料 ¥3,000 を加える。
手数料を支払手数料(費用)にしない。
額面総額 ¥1,000,000 の社債を、額面 ¥100 につき ¥98.50 で購入し、代金は当座預金から支払った。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 満期保有目的債券 985,000 | 当座預金 985,000 |
¥1,000,000 ÷ 100 × ¥98.50 = ¥985,000。
債券の単価は額面 ¥100 あたりであることに注意する。
債券の購入代金を求める式は?
額面総額 ÷ 100 × 単価
「額面 ¥100 につき ¥◯◯」という書き方なので、まず額面総額を 100 で割って
「¥100 のかたまりが何個あるか」を出し、それに単価を掛ける。
有価証券の買入手数料はどう処理する?
取得原価に含める
その証券を手に入れるために必要だった支出なので、資産の一部として扱う。
費用(支払手数料)にすると、売却時の損益が実態とずれる。
2. 売却
根拠: 出題区分表 商-二-2-ウ
売るときは帳簿価額を消して、受け取った金額との差を損益にするだけです。
難しいのは帳簿価額のほうで、同じ銘柄を何度も買っていると平均単価の計算が要ります。
帳簿価額 ¥83,000 の A 社株式を ¥90,000 で売却し、代金は当座預金に入金された。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 当座預金 90,000 | 売買目的有価証券 83,000 |
| 有価証券売却益 7,000 |
受け取った額 − 帳簿価額 = 売却益。帳簿価額をそのまま消すのがポイント。
A 社株式 100 株を @¥800(手数料込み @¥830)で、その後 100 株を @¥870 で購入していた。150 株を売却するときの帳簿価額は?
平均単価 @¥850 × 150 株 = ¥127,500
(¥83,000 + ¥87,000) ÷ 200 株 = @¥850。
同一銘柄は平均原価法で 1 つの単価にまとめる。買った順ではない。
売却時に支払った手数料はどう処理する?
支払手数料(費用)として計上するか、売却代金から差し引く
取得時と違い、売却の手数料は取得原価に含めようがない(もう資産は無くなる)。
問題文の指示に従うが、指示が無ければ支払手数料として処理する。
有価証券売却益・売却損は損益計算書のどこに載る?
営業外収益 / 営業外費用
本業ではない資金運用から生じた損益なので、営業利益より下に入る。
(子会社株式など特別なものを売った場合は特別損益になることがある。)
3. 債券の端数利息
根拠: 出題区分表 商-二-2-ア
債券には利払日があり、利払日以外の日に売買すると利息の取り合いになります。
前回の利払日から売買日までの利息は、その間ずっと持っていた売主のものです。
ですが利息は次の利払日にまとめて買主に払われます。そこで、
買主が売主に、そのぶんを立て替えて渡すのが端数利息です。
額面 ¥1,000,000(年利 3.65%・利払日 3 月末と 9 月末)の社債を、@¥98.00 で 11 月 15 日に購入した。端数利息はいくらか?(1 年 365 日、日割り)
¥4,600
前回利払日の翌日(10/1)から購入日(11/15)まで 46 日。
¥1,000,000 × 3.65% × 46 / 365 = ¥4,600。
前回利払日の翌日から数えるのを忘れない。
債券を購入し、端数利息 ¥4,600 とともに代金を支払った。端数利息はどの勘定で処理する?
有価証券利息(借方)
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売買目的有価証券 ××× | 当座預金 ××× |
| 有価証券利息 4,600 |
収益の勘定を借方に書く。次の利払日に半年分をまとめて受け取ったとき、
この借方が差し引かれて、持っていた期間ぶんだけが残る。
上の債券について、3 月末に半年分の利息 ¥18,250 を受け取った。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 当座預金 18,250 | 有価証券利息 18,250 |
有価証券利息の残高は 18,250 − 4,600 = ¥13,650(= 10/1 ではなく購入日から
3/31 までの、実際に保有していた期間ぶん)。立て替えた端数利息がここで清算される。
債券を利払日以外に売却したとき、端数利息はどう処理する?
買主から受け取り、有価証券利息(貸方)に計上する
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 当座預金 ××× | 売買目的有価証券 ××× |
| 有価証券利息 ××× | |
| 有価証券売却益 ××× |
売主として、前回利払日の翌日から売却日までの利息を受け取る権利がある。
端数利息は売却損益には含めない——別の勘定で受ける。
端数利息を計算するとき、日数はどこからどこまで数える?
前回の利払日の翌日から、売買日当日まで
利払日そのものは前の期間に含まれるので翌日から。
「両端入れ」ではなく、片方だけを含める点に注意する。
月割り指定なら月数で数える。