有価証券の分類と期末評価
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
出題区分表 商業簿記 第二 2「有価証券」イ(売買目的有価証券・時価法)、
第二 13「投資その他の資産」イ(子会社株式、関連会社株式)・ウ(その他有価証券)・オ(長期前払費用)、
第三 7(その他有価証券評価差額金)。
0. どういう処理か
同じ株式でも、何のために持っているかで期末の評価がまったく変わります。
すぐ売って儲けるつもりで持っている株なら、時価がいくらかは意味を持ちます。
一方、子会社を支配するために持っている株は、売る気がないので時価は意味を持ちません。
評価の方法は、その証券が会社にとって何であるかに従います。
| 保有目的 | 期末の評価 | 評価差額の行き先 | B/S の表示 |
|---|---|---|---|
| 売買目的有価証券 | 時価 | 当期の損益(有価証券評価損益) | 有価証券(流動) |
| 満期保有目的債券 | 償却原価 | 有価証券利息 | 投資有価証券※ |
| 子会社株式・関連会社株式 | 取得原価のまま | 出さない | 関係会社株式(固定) |
| その他有価証券 | 時価 | 純資産(その他有価証券評価差額金) | 投資有価証券(固定) |
※ 満期が決算日の翌日から 1 年以内なら「有価証券」として流動資産に載せる。
分かれ目は 2 つだけです。
- 時価で評価するか、しないか … 子会社株式・関連会社株式だけがしない
- 差額を損益にするか、純資産にするか … その他有価証券だけが純資産
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- その他有価証券の評価差額は当期純利益に影響しない(純資産へ直接入れる)
- その他有価証券は翌期首に振り戻す(洗替法。切放しにしない)
- 子会社株式は時価が下がっても評価替えしない(著しい下落を除く)
1. 売買目的有価証券の期末評価
根拠: 出題区分表 商-二-2-イ
売るために持っているので、時価がそのまま会社の実力です。
評価差額は当期の損益にします。
売買目的有価証券の帳簿価額 ¥83,000、期末時価 ¥90,000。決算の仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売買目的有価証券 7,000 | 有価証券評価益 7,000 |
時価まで帳簿価額を引き上げ、差額を当期の収益にする。
(「有価証券評価損益」1 つの勘定で処理する指示もある。)
売買目的有価証券の帳簿価額 ¥83,000、期末時価 ¥75,000。決算の仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 有価証券評価損 8,000 | 売買目的有価証券 8,000 |
時価まで引き下げ、差額を当期の費用にする。
有価証券評価損益は損益計算書のどこに載る?
営業外収益 / 営業外費用
資金運用の結果なので営業利益より下。売却損益と同じ区分。
売買目的有価証券の評価替えは、翌期首に振り戻すか?
問題文の指示による(洗替法なら振り戻し、切放法なら振り戻さない)
売買目的有価証券はどちらも認められている。
指示が無ければ切放法(時価を新しい帳簿価額として続ける)で処理することが多い。
その他有価証券とは扱いが違う(あちらは必ず洗替)。
2. その他有価証券の期末評価
根拠: 出題区分表 商-二-13-ウ、商-三-7
持ち合い株など、すぐ売るつもりはないが子会社でもない株式です。
時価では評価しますが、売っていないのに利益が出た形にはしません。
そこで差額を損益ではなく純資産に直接入れます(全部純資産直入法)。
その他有価証券の帳簿価額 ¥500,000、期末時価 ¥540,000。決算の仕訳は?(税効果は考慮しない)
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| その他有価証券 40,000 | その他有価証券評価差額金 40,000 |
差額は純資産の項目であり、当期純利益には一切影響しない。
その他有価証券の帳簿価額 ¥500,000、期末時価 ¥460,000。決算の仕訳は?(税効果は考慮しない)
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| その他有価証券評価差額金 40,000 | その他有価証券 40,000 |
評価差額金が借方(マイナスの純資産)になる。
損(費用)ではない点が売買目的との最大の違い。
その他有価証券評価差額金は、貸借対照表のどこに載る?
純資産の部の「評価・換算等差額等」
株主資本(資本金・資本剰余金・利益剰余金)とは別の区分に置く。
利益剰余金に混ぜない——まだ実現していない損益だから。
その他有価証券の評価替えは、翌期首にどうする?
必ず振り戻す(洗替法)
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| その他有価証券評価差額金 40,000 | その他有価証券 40,000 |
翌期首に取得原価へ戻したうえで、翌期末にまた時価と比べる。
その他有価証券に切放法は認められていない。
全部純資産直入法とは何か?
評価差額が益でも損でも、まとめて純資産に入れる方法
評価損だけを当期の損失にする「部分純資産直入法」もあるが、それは 1 級の範囲。
2 級では全部純資産直入法だけを使う。
3. 子会社株式・関連会社株式
根拠: 出題区分表 商-二-13-イ
売る気がないので、時価は会社の実力を表しません。取得原価のまま置きます。
子会社株式の帳簿価額 ¥2,000,000、期末時価 ¥2,400,000。決算の仕訳は?
仕訳なし
子会社株式は取得原価のまま評価する。売却を予定していないので時価に意味がない。
子会社株式と関連会社株式は、何をもって区別する?
| 議決権の保有割合の目安 | |
|---|---|
| 子会社株式 | 50% 超(支配している) |
| 関連会社株式 | 20% 以上 50% 以下(重要な影響を与えられる) |
どちらも取得原価で評価するので、期末処理は同じ。
子会社株式・関連会社株式は貸借対照表でどう表示する?
「関係会社株式」として投資その他の資産に載せる
有価証券(流動資産)にも投資有価証券にも混ぜない。
時価が著しく下落した有価証券はどうするか?
回復の見込みがなければ、時価まで評価を切り下げて当期の損失にする(減損処理)
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 子会社株式評価損 ××× | 子会社株式 ××× |
取得原価で評価する子会社株式でも、この場合は例外的に評価替えする。
「著しい下落」の目安は時価が取得原価の 50% 程度以下。
4. 貸借対照表の区分
根拠: 出題区分表 商-二-13-オ
第 3 問(財務諸表の作成)では、同じ有価証券をどの区分に書くかが直接問われます。
勘定名と表示名は別物なので、対応を覚えておきます。
売買目的有価証券は、貸借対照表でどの区分に、どの名前で載る?
流動資産に「有価証券」として
すぐ売って現金にするつもりのものなので流動資産。
その他有価証券は、貸借対照表でどの区分に、どの名前で載る?
固定資産(投資その他の資産)に「投資有価証券」として
すぐ売る予定がないので固定資産の側。
満期保有目的債券は、貸借対照表でどの区分に載る?
満期までの期間で分かれる
| 満期 | 区分 | 表示名 |
|---|---|---|
| 決算日の翌日から 1 年以内 | 流動資産 | 有価証券 |
| 1 年を超える | 投資その他の資産 | 投資有価証券 |
1 年基準で判定する。決算問題でよく問われる。
長期前払費用は、貸借対照表でどの区分に載る?
固定資産(投資その他の資産)
前払費用のうち、決算日の翌日から 1 年を超えて費用になる部分を分けたもの。
1 年以内のぶんは流動資産の「前払費用」に残す。同じ支払いが 2 つに割れることに注意。
3 年分の保険料 ¥360,000 を当期首に支払った。当期末の貸借対照表にはどう載る?
| 区分 | 金額 |
|---|---|
| 流動資産「前払費用」 | ¥120,000(翌期 1 年ぶん) |
| 投資その他の資産「長期前払費用」 | ¥120,000(翌々期ぶん) |
当期の費用 ¥120,000 を差し引いた残り ¥240,000 を、1 年基準で 2 つに割る。
全額を前払費用にしない。