役務収益と役務原価
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
出題区分表 商業簿記 第二 8「様々な財又はサービスの顧客への移転」ウ(役務収益・役務原価)。
0. どういう処理か
サービス業(学習塾・旅行会社・広告代理店など)の会計です。
モノが動かないので、商品売買の勘定が使えません。
| 商品売買業 | サービス業 |
|---|---|
| 売上 | 役務収益 |
| 売上原価 | 役務原価 |
| 繰越商品 | 仕掛品 |
考え方は商品売買とまったく同じです。
- 役務を提供したときに役務収益(履行義務を果たしたとき)
- その収益に対応する原価が役務原価
難しいのは、サービスを提供する前にかかった費用の扱いです。
まだ役務を提供していないのに給料や外注費を払っている——
これを費用にしてしまうと、収益と対応しません。
そこで、いったん仕掛品という資産に振り替えて持っておき、
役務を提供した時点で役務原価へ振り替えます。
費用(給料・旅費など)が発生
↓ まだ提供していないので
仕掛品(資産)
↓ 役務を提供したので
役務原価(費用)
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 代金を前受けしただけでは役務収益にならない(契約負債)
- 提供前の費用は仕掛品(費用のまま置かない)
- 役務収益と役務原価は同じタイミングで計上する
1. 役務収益の計上
根拠: 出題区分表 商-二-8-ウ
サービスを提供したかどうかだけを見ます。お金の動きは関係ありません。
サービス業で、売上にあたる勘定は?
役務収益
商品を売っていないので「売上」は使わない。損益計算書では売上高の位置に載る。
講座の受講料 ¥300,000 を現金で前受けした(講座はまだ始まっていない)。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 現金 300,000 | 契約負債 300,000 |
まだ役務を提供していないので役務収益にできない。
(問題によっては「前受金」を使う指示もある。)
上の講座が終了した。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 契約負債 300,000 | 役務収益 300,000 |
役務の提供が完了して初めて収益になる。
役務が一定期間にわたって提供される場合、収益はどう計上する?
進捗度に応じて期間中に按分する
1 年間の保守契約なら、決算日までに経過した月数ぶんだけを役務収益にする。
残りは契約負債として繰り越す。
2. 役務原価と仕掛品
根拠: 出題区分表 商-二-8-ウ
費用をいったん資産にする——ここが唯一のひねりです。
サービス提供前にかかった給料 ¥120,000 を、仕掛品に振り替える仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 仕掛品 120,000 | 給料 120,000 |
まだ収益が立っていないので、費用として残さず資産に置き換える。
上の仕掛品について、役務の提供が完了した。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 役務原価 120,000 | 仕掛品 120,000 |
役務収益を計上するのと同じタイミングで役務原価に振り替える。
なぜ提供前の費用を仕掛品にするのか?
収益と費用を対応させるため
役務収益が翌期に立つのに、費用だけ当期に落とすと当期が赤字、翌期が黒字になる。
実態と合わないので、収益が立つ期まで資産として繰り越す。
旅行会社が、ツアー実施前に支払った宿泊費・交通費はどう処理する?
仕掛品(資産)
ツアーが実施され、役務収益を計上する時点で役務原価に振り替える。
役務原価は損益計算書のどこに載る?
売上原価の位置
役務収益(売上高の位置)に対応する原価なので、
役務収益 − 役務原価 = 売上総利益 となる。
すべての費用を仕掛品に振り替えるのか?
役務の提供に直接かかわるものだけ
一般管理部門の給料や事務所の家賃は、特定の役務に対応しないので
そのまま当期の費用(販売費及び一般管理費)にする。