引当金の種類と処理
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
出題区分表 商業簿記 第二 5「引当金」イ(商品(製品)保証引当金)・ウ(退職給付引当金※)・
エ(修繕引当金)・オ(賞与引当金)。
0. どういう処理か
引当金を設定してよいのは、4 つの条件をすべて満たすときです。
- 将来の費用または損失である
- その発生が当期以前の事象に原因がある
- 発生の可能性が高い
- 金額を合理的に見積もれる
2 の条件が要点です。 支払うのは将来でも、原因は当期にある。
だから当期の費用にしておかないと、収益と費用が対応しません。
2 級で増える 4 つは、どれも同じ形の仕訳になります。
決算:◯◯引当金繰入(費用) / ◯◯引当金(負債)
実際:◯◯引当金(取り崩す) / 現金など
難しいのは、費用がどの区分に載るかです。 ここは引当金ごとに違います。
| 引当金 | 繰入額の区分 |
|---|---|
| 貸倒引当金(営業債権) | 販売費及び一般管理費 |
| 貸倒引当金(営業外債権) | 営業外費用 |
| 商品保証引当金 | 販売費及び一般管理費 |
| 退職給付引当金(退職給付費用) | 販売費及び一般管理費 |
| 修繕引当金 | 製造原価または販売費及び一般管理費 |
| 賞与引当金 | 販売費及び一般管理費 |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 引当金は負債(貸倒引当金だけが評価勘定で、資産のマイナス)
- 実際に支払ったときは引当金を取り崩す(新たに費用にしない)
- 引当金が不足したら、不足分だけ当期の費用にする
1. 商品(製品)保証引当金
根拠: 出題区分表 商-二-5-イ
「1 年間は無償で修理します」という約束に備えるものです。
売ったのは当期、修理は翌期——だから当期の費用にします。
商品保証引当金はなぜ設定するのか?
当期に売った商品の保証費用が、翌期以降に発生するから
売上は当期に計上されているのに、対応する修理費用が翌期に出ると、
収益と費用が対応しない。
当期の売上高 ¥10,000,000 に対し、2% の保証費用を見積もる。決算の仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 商品保証引当金繰入 200,000 | 商品保証引当金 200,000 |
売上高を基準に見積もることが多い。
前期に販売した商品の修理を行い、費用 ¥80,000 を現金で支払った。引当金残高は ¥200,000。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 商品保証引当金 80,000 | 現金 80,000 |
引当金を取り崩す。新たに費用(修理費)を計上しない。
上の続きで、保証期間が終了し引当金 ¥120,000 が残った。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 商品保証引当金 120,000 | 商品保証引当金戻入 120,000 |
使わずに済んだので収益として戻す。
当期に販売した商品の修理を、当期中に行った場合は?
引当金を使わず、修理費(費用)として処理する
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 修理費 ××× | 現金 ××× |
当期の売上に対する引当金はまだ設定していない(決算で設定する)。
貸倒引当金の「当期発生の債権」と同じ理屈。
2. 退職給付引当金
根拠: 出題区分表 商-二-5-ウ
当期に働いてもらったぶんの退職金を、当期の費用にします。
支払うのは何十年も先ですが、原因は当期の労働です。
退職給付引当金はなぜ設定するのか?
退職金の支払原因は「当期に働いてもらったこと」だから
支払いは将来だが、その原因は当期にある。
退職時に一括して費用にすると、その期だけ利益が激減する。
当期の退職給付費用 ¥500,000 を計上する仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 退職給付費用 500,000 | 退職給付引当金 500,000 |
費用の勘定名は「退職給付引当金繰入」ではなく退職給付費用であることが多い。
従業員が退職し、退職金 ¥3,000,000 を当座預金から支払った。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 退職給付引当金 3,000,000 | 当座預金 3,000,000 |
積み立ててあった引当金を取り崩す。費用は発生しない。
退職給付引当金は貸借対照表のどこに載る?
固定負債
支払いが 1 年を超えて先になるため。
2 級で扱う退職給付引当金の範囲は?
簡易な内容のもの(区分表で ※ が付いている)
数理計算上の差異や年金資産の運用など、
退職給付債務の複雑な計算は 1 級。2 級では繰入額が問題文で与えられる。
3. 修繕引当金と賞与引当金
根拠: 出題区分表 商-二-5-エ、商-二-5-オ
どちらも「当期の分だけ先に費用にする」という同じ形です。
修繕引当金はどんなときに設定するか?
当期に使ったことで傷んだ設備を、翌期に修繕する予定があるとき
毎年行う定期修繕などが対象。
当期の使用が原因なので、当期の費用にする。
翌期に予定される修繕費 ¥400,000 のうち、当期負担分を引当金に計上する。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 修繕引当金繰入 400,000 | 修繕引当金 400,000 |
工場設備なら製造原価、本社設備なら販売費及び一般管理費になる。
修繕を実施し ¥450,000 を当座預金から支払った。引当金残高は ¥400,000。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 修繕引当金 400,000 | 当座預金 450,000 |
| 修繕費 50,000 |
引当金を使い切り、足りない分だけ当期の費用にする。
貸倒引当金の不足時とまったく同じ形。
賞与引当金はなぜ設定するのか?
支給は翌期でも、対象となる労働は当期に行われているから
たとえば 6 月支給の賞与が 12 月〜5 月の労働に対するものなら、
3 月決算の会社は 12 月〜3 月の 4 か月分を当期の費用にする。
翌期 6 月支給予定の賞与 ¥900,000(対象期間 12 月〜5 月)。3 月決算での引当額は?
¥600,000
対象期間 6 か月のうち、当期に属するのは 12 月〜3 月の 4 か月。
¥900,000 × 4/6 = ¥600,000。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 賞与引当金繰入 600,000 | 賞与引当金 600,000 |
引当金は資産・負債のどちらか?
負債(貸倒引当金だけが例外)
将来お金を払う義務なので負債。
貸倒引当金は評価勘定で、資産(売掛金など)から控除する形で表示する。