工業簿記の勘定体系
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
出題区分表 工業簿記 第四「工業簿記の構造」1〜4、第十六「製品の受払い」1・2。
0. どういう処理か
工業簿記の仕訳は、ほぼすべてこの 1 本の流れの上にあります。
| 段階 | 勘定 | 何が起きたか |
|---|---|---|
| ① 買う・払う | 材料/賃金・給料/経費 | 資源を手に入れた |
| ② 使う | 仕掛品(直接費)/製造間接費(間接費) | 製造のために消費した |
| ③ 配る | 製造間接費 → 仕掛品 | 間接費を製品に割り当てた |
| ④ 完成 | 仕掛品 → 製品 | 作り終わった |
| ⑤ 売る | 製品 → 売上原価 | 販売した |
「どの勘定からどの勘定へ振り替えるか」が言えれば、仕訳は書けます。
逆に、仕訳を形で覚えると、少し形が変わっただけで手が止まります。
分かれ目は ② の一箇所だけです。
消費したものが直接費なら仕掛品へ、間接費なら製造間接費へ。ここだけ判断が要ります。
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 材料を買っただけでは原価にならない(資産が現金から材料に変わっただけ)
- 完成しても売れるまでは資産(製品勘定)。売上原価になるのは販売時
- 製造間接費は必ず仕掛品を経由する。売上原価へ直行しない
1. 勘定の並びと振替
根拠: 出題区分表 工-四-1、工-四-2
まず 5 段階の振替を、仕訳として書けるようにします。
金額よりも、勘定の並びを先に固めてください。
材料 ¥500,000 を掛けで購入した。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 材料 500,000 | 買掛金 500,000 |
買った時点では原価にならない。現金・買掛金という資産・負債が、材料という資産に変わっただけ。
原価になるのは消費したとき。
材料 ¥400,000 を消費した(うち直接材料費 ¥350,000、間接材料費 ¥50,000)。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 仕掛品 350,000 | 材料 400,000 |
| 製造間接費 50,000 |
直接費は仕掛品へ直行、間接費は製造間接費へいったん集める。
工業簿記でいちばん出てくる形。
製造間接費 ¥200,000 を仕掛品に配賦した。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 仕掛品 200,000 | 製造間接費 200,000 |
集めた間接費を製品へ割り当てる。製造間接費勘定は、この振替でゼロに近づく
(差額が出れば原価差異になる)。
当月に完成した製品の原価は ¥900,000 だった。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 製品 900,000 | 仕掛品 900,000 |
完成したので仕掛品から製品へ移す。まだ費用ではない(資産のまま)。
製品 ¥700,000(原価)を ¥1,000,000 で掛け販売した。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売掛金 1,000,000 | 売上 1,000,000 |
| 売上原価 700,000 | 製品 700,000 |
販売して初めて費用(売上原価)になる。売上と売上原価の 2 本を必ず書く。
仕掛品勘定の借方に集まるものを 3 つ挙げよ。
直接材料費・直接労務費・直接経費、および製造間接費配賦額
(月初仕掛品原価も借方に載る。)
貸方には完成品原価と月末仕掛品原価が出る。
2. 帳簿組織と製品の受け払い
根拠: 出題区分表 工-四-2、工-十六-1、工-十六-2
主要簿(仕訳帳・総勘定元帳)に加え、補助簿で数量と単価を追うのが工業簿記の特徴です。
工業簿記で使う主な補助簿を挙げよ。
材料元帳/賃金給料元帳/原価計算表(製造指図書別)/製品元帳
総勘定元帳の金額だけでは「どの製品にいくらかかったか」が分からないので、
補助簿で内訳を持つ。第 4 問では原価計算表を埋めさせる出題が多い。
製品を完成させて倉庫に入れたとき、製品元帳にはどう記入する?
受入欄に、数量と完成品単位原価と金額を記入する
完成品単位原価 = 完成品総合原価 ÷ 完成品数量。
材料元帳と同じ形式で、受入・払出・残高を追う。
製品を販売したとき、製品元帳の払出単価はどう決める?
先入先出法または平均法(問題文の指示による)
材料の消費単価と同じ考え方。
払い出した金額の合計が、そのまま売上原価になる。
売上原価は「月初製品 + 当月完成品 − 月末製品」で求まるか?
求まる
製品勘定の貸借から導ける。
第 4 問で製品勘定を埋めさせる出題では、この式で穴を埋める。
3. 決算手続と財務諸表
根拠: 出題区分表 工-四-3、工-四-4
製造業の損益計算書には、商業簿記には無い製造原価報告書が付きます。
製造原価報告書(C/R)とは何を示す書類か?
当月(当期)に製造した製品の原価がどう構成されているかを示す書類
材料費・労務費・経費 → 当期総製造費用 → 月初仕掛品を加え月末仕掛品を引く →
当期製品製造原価、という順に並ぶ。
製造原価報告書の最後に出る「当期製品製造原価」は、損益計算書のどこにつながる?
売上原価の計算の中の「当期製品製造原価」
損益計算書では
「期首製品棚卸高 + 当期製品製造原価 − 期末製品棚卸高 = 売上原価」となる。
2 つの書類はここでつながっている。
製造原価報告書で、製造間接費を予定配賦している場合はどう表示する?
実際発生額を並べたうえで、原価差異を加減して配賦額に合わせる
報告書の末尾で「原価差異 △×××」のように調整する。
予定配賦額そのものを並べるのではない点に注意。
原価差異は会計年度末にどう処理するのが原則か?
売上原価に加減する(売上原価加減法)
| 差異 | 処理 |
|---|---|
| 不利差異(借方差異) | 売上原価に加算 |
| 有利差異(貸方差異) | 売上原価から減算 |
2 級ではこの方法だけを使う(営業外損益法・繰延法は 1 級)。