原価計算の種類と手続
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
出題区分表 工業簿記 第三「原価計算」1〜5。
0. どういう処理か
このノートは、以降のすべての章の目次にあたるものです。
原価計算には何種類もあるように見えますが、組み合わせの軸が 3 本あるだけです。
| 軸 | 選択肢 | どの章で扱うか |
|---|---|---|
| 何の金額を使うか | 実際原価計算 ↔ 予定原価計算(標準原価計算) | 16 標準原価計算 |
| どう集計するか | 個別原価計算 ↔ 総合原価計算 | 14・15 |
| 固定費を製品原価に入れるか | 全部原価計算 ↔ 直接原価計算 | 17 |
たとえば「実際・個別・全部原価計算」は 3 本の軸で 1 つずつ選んだ結果で、
2 級の第 4 問で最もよく出る組み合わせです。
そして、どの組み合わせでも手続の順番は 3 段階で同じです。
① 費目別計算 → ② 部門別計算 → ③ 製品別計算
この順番は逆にできません。 何にいくら使ったか(①)が決まらないと、
どの部門で発生したか(②)は割り振れず、部門が決まらないと製品には配れません。
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 部門別計算は省略できる(小規模なら費目別 → 製品別で足りる)。①③は省略できない
- 個別と総合の分かれ目は製品の作り方(受注生産か大量見込生産か)
- 原価計算制度と特殊原価調査は別物。制度は帳簿に組み込まれている
1. 原価計算の目的と原価計算制度
根拠: 出題区分表 工-三-1、工-三-2-ア、工-三-2-イ
原価計算は「製品の原価を出す」ためだけのものではありません。
何のために計算するかで、使うべき方法が変わります。
原価計算の目的として、原価計算基準が挙げているものは?
財務諸表の作成/価格計算/原価管理/予算の編成と統制/経営の基本計画の設定
このうち財務諸表の作成(売上原価と棚卸資産の額を決める)が、
帳簿に組み込まれた原価計算制度の中心的な役割。
原価計算制度とは?
財務会計の帳簿組織と結びついて、常時継続的に行われる原価計算
これに対し、必要なときだけ帳簿の外で行うものを特殊原価調査という
(設備投資の意思決定など。2 級の範囲外)。
製造原価計算・営業費計算・総原価計算の関係は?
- 製造原価計算 … 製品を作るのにかかった原価を計算する
- 営業費計算 … 販売費・一般管理費を計算する
- 総原価計算 … 両方を合わせて総原価を計算する
工業簿記の中心は製造原価計算だが、総原価を出さないと販売価格は決められない。
2. 3 つの手続
根拠: 出題区分表 工-三-3-ア、工-三-3-イ、工-三-3-ウ
原価計算はこの順で進みます。各章がこの 3 段階のどこの話なのかを、常に確認してください。
原価計算の 3 つの手続を順に挙げよ。
- 費目別計算 … 材料費・労務費・経費がいくら発生したかを計算する
- 部門別計算 … 製造間接費を、発生した部門ごとに集計する
- 製品別計算 … 製品(指図書・工程)ごとに原価を集計する
この順番は変えられない。上流が決まらないと下流に配れない。
3 つの手続のうち、省略できるものはあるか?
部門別計算は省略できる
規模が小さく部門を分ける意味が薄ければ、費目別計算 → 製品別計算で足りる。
費目別計算と製品別計算は省略できない(どちらも原価を出すのに必須)。
費目別計算では、直接費と間接費をどう扱う?
| 行き先 | |
|---|---|
| 直接費 | 仕掛品に直接賦課する |
| 間接費 | いったん製造間接費に集める |
直接費は「どの製品のものか」が分かっているので、途中の集計場所が要らない。
間接費だけが部門別計算・配賦を通る。
3. 3 本の軸で原価計算を選ぶ
根拠: 出題区分表 工-三-2-ウ、工-三-2-エ、工-三-2-オ
冒頭の 3 本の軸を、それぞれ独立に選びます。
個別/総合の軸だけは自分で選べません——その会社の生産形態が決めます。
個別原価計算と総合原価計算の分かれ目は?
生産形態
| 生産形態 | 集計の単位 | |
|---|---|---|
| 個別原価計算 | 受注生産(客の注文ごとに作る) | 製造指図書ごと |
| 総合原価計算 | 大量見込生産(同じものを作り続ける) | 一定期間ごと |
造船・建設・特注機械は個別、食品・化学製品・部品は総合。
総合原価計算で、製品 1 個あたりの原価はどう求める?
その期間の完成品総合原価 ÷ 完成品数量
同じものを大量に作るので、1 個ずつの原価を追う意味がない。
まとめて計算して割る。期末仕掛品をどう評価するかが計算の中心になる。
総合原価計算の種類を 4 つ挙げよ。
単純総合原価計算/等級別総合原価計算/組別総合原価計算/工程別総合原価計算
- 単純 … 1 種類の製品だけ
- 等級 … 同じ製品でサイズ・品質が違う(等級製品)
- 組別 … 異なる製品を並行して作る
- 工程別 … 複数の工程を順に通る
実際原価計算と予定原価計算は、何が違うのか?
製品原価を計算するのに、実際に発生した金額を使うか、あらかじめ定めた金額を使うか
実際原価計算は正確だが、月末に実際額が確定するまで製品原価が出せない。
予定原価計算(標準原価計算を含む)なら、月中でも計算を進められ、
さらに実際との差=原価差異から原価管理ができる。
全部原価計算と直接原価計算のどちらを外部報告に使う?
全部原価計算
制度としての財務諸表は全部原価計算で作る。
直接原価計算は社内の意思決定用で、CVP 分析(損益分岐点)と結びつく。
2 級では両方の損益計算書を作らされ、利益の差額(固定費調整)が問われる。
4. 原価計算単位と原価計算期間
根拠: 出題区分表 工-三-4、工-三-5
計算の「刻み」を決める 2 つです。地味ですが、問題文の読み方に直結します。
原価(計算)単位とは?
原価を計算するときの、製品の数量の単位
個・kg・m・ダース・時間など。「製品 1 個あたり ¥350」の「1 個」がこれ。
単位が変われば単価も変わるので、問題文の単位を確認する。
原価計算期間はどれくらいか。なぜその長さか?
1 か月
会計期間(1 年)を待っていては、原価管理の役に立たない。
毎月計算して、早く手を打てるようにするためにこの長さになっている。
工業簿記の問題文が「当月」「月初」「月末」と書くのはこのため。
原価計算期間と会計期間がずれることの影響は?
月次で計算した原価を積み上げて、年度の財務諸表を作る
決算では 12 か月ぶんの結果が集まる。
原価差異の処理(売上原価加減法など)は会計年度末にまとめて行うことが多い。