原価の分類
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
出題区分表 工業簿記 第二 2「原価の要素、種類、態様」ア〜ク。
0. どういう処理か
原価はいくつもの切り口で同時に分類されます。
ここでつまずく人の多くは、「1 つの原価は 1 つの分類に入る」と思っています。違います。
たとえば「工場の機械の減価償却費」は、
- 形態別分類では 経費
- 製品との関連では 間接費
- 操業度との関連では 固定費
の3 つ全部に同時に属します。分類の軸が違うだけだからです。
| 切り口 | 分け方 | 何のために |
|---|---|---|
| 形態別分類 | 材料費・労務費・経費 | 何を消費したか(費目別計算の出発点) |
| 製品との関連 | 直接費・間接費 | 特定の製品に紐づけられるか |
| 操業度との関連 | 変動費・固定費 | 生産量が変わると増えるか(CVP 分析) |
| 集計される期間 | 製品原価・期間原価 | 在庫として繰り越すか、その期の費用にするか |
| 集計の範囲 | 全部原価・直接(変動)原価 | 固定費を製品原価に入れるか |
この 5 本の軸を、それぞれ独立したものとして頭に置いてください。
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 直接費 ≠ 変動費。 軸が違う(直接材料費は普通どちらでもあるが、一致は偶然)
- 直接工の賃金でも、間接作業に従事したぶんは間接労務費
- 製品原価は売れるまで資産(仕掛品・製品)、期間原価はその期の費用
1. 形態別分類(材料費・労務費・経費)
根拠: 出題区分表 工-二-2-ア
何を消費したかによる分類です。費目別計算はここから始まります。
「経費」は材料費でも労務費でもないもの全部、という消去法で決まります。
形態別分類の 3 つとは?
材料費・労務費・経費
- 材料費 … 物品を消費して生じる原価
- 労務費 … 労働力を消費して生じる原価
- 経費 … 材料費・労務費以外のすべて
「何を消費したか」で分ける。費目別計算の出発点になる分類。
工場で使う機械の減価償却費は、形態別分類ではどれか?
経費
物品の消費でも労働力の消費でもないので経費。
減価償却費・水道光熱費・外注加工賃・保険料などがここに入る。
工場の事務員の給料は、形態別分類ではどれか?
労務費
労働力の消費なので労務費。製造に直接携わっていなくても労務費。
(製品との関連では間接労務費になる。)
2. 製品との関連による分類(直接費・間接費)
根拠: 出題区分表 工-二-2-イ
特定の製品にいくらかかったかを直接ひもづけられるかで分けます。
できるものが直接費、できないもの(複数製品に共通するもの)が間接費です。
直接費と間接費の分かれ目は?
特定の製品(指図書)にいくらかかったかを、直接把握できるかどうか
| 例 | |
|---|---|
| 直接費 | ある製品のために使った主要材料、その製品を作った時間の賃金 |
| 間接費 | 工場全体の電気代、複数製品に共通の機械の減価償却費 |
「重要でないから間接費」ではない(把握できるかどうかで決まる)。
形態別分類と製品との関連を組み合わせると、いくつの区分ができる?
6 つ
| 直接費 | 間接費 | |
|---|---|---|
| 材料費 | 直接材料費 | 間接材料費 |
| 労務費 | 直接労務費 | 間接労務費 |
| 経費 | 直接経費 | 間接経費 |
この 6 分類が費目別計算の枠組みそのもの。
直接工が機械の掃除をしていた時間の賃金は、何費か?
間接労務費
直接工の賃金でも、製造に直接従事していない時間(間接作業時間)のぶんは間接労務費。
「直接工=直接労務費」ではない。最頻出の引っかけ。
外注加工賃は何費か?
直接経費
特定の製品のために外部に加工を頼んだものなので、その製品に直接ひもづく。
経費のうち直接費になる数少ない例で、そのために覚えておく価値がある。
3. 操業度との関連による分類(変動費・固定費)
根拠: 出題区分表 工-二-2-オ
生産量(操業度)が増えたら、その原価も増えるかで分けます。
CVP 分析と直接原価計算はこの軸の上に立っています。
変動費と固定費の分かれ目は?
操業度(生産量・作業時間)の増減に応じて、総額が変わるかどうか
| 総額 | 1 単位あたり | |
|---|---|---|
| 変動費 | 操業度に比例して増える | 一定 |
| 固定費 | 操業度が変わっても一定 | 操業度が増えると減る |
総額と単価で動きが逆になる。ここを取り違える出題が多い。
直接材料費は変動費か固定費か。直接費との関係は?
通常は変動費。ただし直接費と変動費は別の軸
作る数が増えれば材料も増えるので変動費。
しかし「直接費だから変動費」ではない——たとえば特定製品専用の機械の減価償却費は
直接費だが固定費。軸が違うので一致は保証されない。
準変動費(混合費)とは?
固定的な部分と、操業度に比例する部分の両方を持つ原価
例:電力料(基本料金 + 従量料金)。
CVP 分析では、高低点法などで固定費部分と変動費部分に分解してから使う。
準固定費とは?
一定の操業度の範囲では固定だが、それを超えると段階的に増える原価
例:監督者の給料(生産量が一定を超えると監督者を増やす)。
グラフが階段状になる。
4. 製品原価と期間原価・全部原価と直接原価
根拠: 出題区分表 工-二-2-ウ、工-二-2-エ、工-二-2-キ、工-二-2-ク
最後の 2 軸です。いつ費用になるかと、固定費を製品原価に入れるかを決めます。
製品原価と期間原価の違いは?
| 内容 | いつ費用になるか | |
|---|---|---|
| 製品原価 | 製品に集計される原価 | 売れたとき(売上原価として) |
| 期間原価 | 期間に対応させる原価 | 発生した期間にそのまま |
製造原価は製品原価、販売費・一般管理費は期間原価。
製品原価は売れるまで仕掛品・製品として資産に残る。
全部原価計算と直接原価計算の違いは?
製造固定費を製品原価に含めるかどうか
| 製品原価に含めるもの | |
|---|---|
| 全部原価計算 | 変動費 + 固定費 |
| 直接(変動)原価計算 | 変動費だけ(固定費は期間原価) |
外部報告には全部原価計算を使う。直接原価計算は社内の意思決定用。
実際原価と予定原価の違いは?
| 何を使うか | |
|---|---|
| 実際原価 | 実際に発生した価格・消費量 |
| 予定原価 | あらかじめ定めた価格・消費量(見積原価・標準原価) |
予定原価を使うのは、実際額の確定を待たずに計算を進められるから。
月末まで単価が分からないと、その月の製品原価がいつまでも出せない。
見積原価と標準原価の違いは?
| 性格 | |
|---|---|
| 見積原価 | 「たぶんこれくらいかかるだろう」という予測 |
| 標準原価 | 「本来これだけで作れるはず」というあるべき目標 |
どちらも予定原価だが、標準原価は科学的・統計的な調査に基づく達成すべき水準で、
実際との差(原価差異)を分析して原価管理に使う。