遺伝子の発現とゲノム
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は高等学校学習指導要領(平成30年告示)「生物基礎」の内容 (1) ア (イ) ㋑「遺伝情報とタンパク質の合成」。
内容の取扱いが「全ての遺伝子が常に発現しているわけではないこと」と
「遺伝子とゲノムとの関係」に触れることを求めている部分にあたる。
0. どういう論点か
同じ人の細胞は、どれも同じ遺伝情報をもっています。それなのに、すい臓の細胞と目の細胞は違います。
矛盾しないのは、使っている遺伝子が違うからです。
| 全細胞で同じもの | 細胞ごとに違うもの | |
|---|---|---|
| 何 | もっている遺伝情報(ゲノム) | 発現している遺伝子(実際に使っている遺伝子) |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- もっていることと、使っていることは別(細胞の違いは後者の違い)
- ゲノムは「遺伝子の集まり」ではなく「1 組の全 DNA」(遺伝子はその一部)
- ゲノムのうち遺伝子として働く部分はごく一部(ヒトでは大部分が遺伝子ではない)
1. 遺伝子の発現
根拠: 学習指導要領 生基-(1)-ア-(イ)-㋑
遺伝子の情報がもとになってタンパク質が合成され、形質として現れることを何という?
遺伝子の発現
転写と翻訳が行われることが「発現している」状態。
1 個の細胞の中で、すべての遺伝子が常に発現しているか?
していない
その細胞で必要な遺伝子だけが発現している。
同じ個体の細胞なら、もっている遺伝情報は同じか?
同じ(受精卵から複製と分配を繰り返してできたため)
違うのは、そのうちどの遺伝子を発現させているか。
すい臓の細胞でインスリンがつくられ、他の細胞ではつくられないのはなぜ?
インスリンの遺伝子が、すい臓の(特定の)細胞でだけ発現しているから
遺伝子をもっていないからではない。他の細胞ももっている。
細胞が形や働きの違うものになることを何という?また、その直接の原因は?
分化。原因は発現する遺伝子が細胞によって異なること
分化しても遺伝情報そのものは変わらない。
「細胞の種類によって、つくられるタンパク質が違う」ことは、何によって決まっている?
どの遺伝子が発現するか
つくられるタンパク質が違えば、細胞の構造や働きも違ってくる。
2. 遺伝子とゲノム
根拠: 学習指導要領 生基-(1)-ア-(イ)-㋑
ゲノムとは何か?
その生物が生きていくために必要な 1 組の遺伝情報の全体(1 組の全 DNA の塩基配列)
遺伝子だけの集まりではなく、遺伝子として働かない部分も含む。
遺伝子とゲノムの関係は?
個々の遺伝子は、ゲノムを構成する DNA のごく一部
ゲノム全体のうち、タンパク質のアミノ酸配列を指定している部分は限られている。
ヒトの体細胞は、ゲノムを何組もっているか?
2 組(父由来と母由来を 1 組ずつ)
生殖細胞(卵・精子)は 1 組。
ヒトのゲノムの塩基対の数は、およそどのくらい?
約 30 億塩基対
そのうち遺伝子として働く部分はごく一部で、遺伝子の数は約 2 万と推定されている。
ゲノムという言葉を使うと、「どの細胞も同じ情報をもつ」はどう言い換えられる?
どの細胞も同じゲノムをもつ(発現している遺伝子は細胞ごとに違う)
もっているもの=ゲノム、使っているもの=発現している遺伝子。
ゲノムの塩基配列を全部調べても、細胞の種類の違いが説明できないのはなぜ?
どの細胞もゲノムは同じで、違いは「どの遺伝子を発現させているか」にあるから
配列だけでなく、発現のしかたを見る必要がある。
3. 遺伝情報の利用
根拠: 学習指導要領 生基-(1)-ア-(イ)-㋑
細胞のはたらきが遺伝情報によって支えられているといえるのはなぜ?
細胞の構造や機能を担うタンパク質が、遺伝情報をもとに合成されているから
酵素もホルモンも抗体も、すべてタンパク質として遺伝子から合成される。
遺伝情報の流れを、細胞の働きまで含めて順に言うと?
DNA → mRNA → タンパク質 → 細胞の構造・働き(形質)
単元 01 で出た酵素も、この流れの終点にある。
ES 細胞や iPS 細胞のように、分化した細胞からいろいろな細胞をつくり出せるのはなぜ?
分化した細胞も、体をつくるのに必要な遺伝情報(ゲノム)を失っていないから
発現する遺伝子が変わるだけで、情報そのものは残っている。