音の干渉と回折
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (2) ア (イ) ㋐「音の干渉と回折について理解すること。」。
0. どういうまとまりか
音は空気を伝わる波なので、波に共通の性質である干渉・回折・屈折を示します。
「07 波の伝わり方」で水面波について学んだ条件が、そのまま音にも使えます。
違うのは、目で見るかわりに耳で聞く大きさで確かめることです。強め合うところでは音が大きく、弱め合うところでは音が小さく聞こえます。
| 現象 | 何が起こるか | 決まり |
|---|---|---|
| 干渉 | 2 つの音が重なり、場所によって大きく聞こえたり小さく聞こえたりする | 同位相の音源なら、経路差が波長の整数倍で強め合い、整数倍から半波長ずれると弱め合う |
| 回折 | 音が障害物の裏側へ回り込む | 波長が、すき間や障害物の大きさと同じくらいか、それより長いほど目立つ |
| 屈折 | 音の速さが違う空気の層を通るとき、進む向きが曲がる | 音の速さが小さい側へ曲がる |
分かれ目は次の 3 つ。
- 干渉は経路差を波長で割って判定する。割った答えが整数なら強め合い、整数と半分なら弱め合う(音源が同位相のとき。逆位相なら入れかわる)
- クインケ管は、管を引き出した長さの 2 倍だけ経路差が変わる。音は引き出した部分を行って戻るから
- 回折は波長の長い音(低い音)ほど目立つ。高い音は回り込みにくい
1. 2 つの音源からの音の干渉
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(イ)-㋐
同じ振動数の音を出す 2 つのスピーカーのまわりを歩くと、音が大きく聞こえる場所と小さく聞こえる場所が交互に現れます。条件は水面波の干渉と同じ形です。
音の干渉とは、どういう現象か?
2 つの音源から出た同じ振動数の音が重なり合い、場所によって強め合ったり弱め合ったりする現象
音も波なので、重ね合わせの原理に従う。強め合う場所では音が大きく、弱め合う場所では音が小さく聞こえる。
同位相で同じ振動数の音を出す 2 つのスピーカーから、距離 、 の点がある。音の波長を として、強め合う条件と弱め合う条件は?
強め合う: 弱め合う: ( は 0 以上の整数)
を経路差という。経路差を波長で割り、整数になれば強め合い、整数と半分になれば弱め合う。
2 つのスピーカーを逆位相で鳴らすと、干渉の条件は同位相のときと比べてどうなるか?
強め合う条件と弱め合う条件が入れかわる(経路差が で弱め合い、 で強め合う)
出たときにすでに半波長ぶんずれているので、経路差によるずれと合わせて考える。問題文で「同位相」か「逆位相」かを先に確かめる。
同位相で鳴らした 2 つのスピーカーから等しい距離にある点では、音はどう聞こえるか?
大きく聞こえる(経路差が 0 なので、強め合う)
2 つのスピーカーを結ぶ線分の垂直二等分線上の点は、どこも経路差が 0。振動数を変えても強め合ったままである。
同位相で鳴らした 2 つのスピーカーを結ぶ線分の上で、音が大きく聞こえる点は、どんな間隔で並ぶか?
半波長 ごと
線分の上を一方へ だけ動くと、一方のスピーカーに 近づき、もう一方から 遠ざかるので、経路差は 変わる。 になるごとに次の強め合う点が来る。向かい合って進む 2 つの波がつくる定在波の腹の間隔と同じである。
干渉で弱め合う点でも、音が完全には消えないことが多い。なぜか?
2 つの音の振幅が、その点で等しいとは限らないから
音は音源から離れるほど小さくなるので、2 つの音源からの距離が違えば届く音の大きさも違う。部屋の中では、壁や床で反射した音も重なる。
2. クインケ管
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(イ)-㋐
2 つのスピーカーを使わなくても、1 つの音を 2 つの道に分ければ干渉を起こせます。そのための装置がクインケ管です。
クインケ管とは、どんな装置か?
1 つの音源から出た音を 2 つの経路に分け、ふたたび合わせて干渉させる装置。一方の管を出し入れして、経路の長さを変えられる
入口から入った音は、左右の管に分かれて進み、出口で重なる。もとが 1 つの音なので、2 つの経路の音は同位相で出発している。
クインケ管で、出し入れできる管を だけ引き出すと、2 つの経路の経路差はどれだけ変わるか?
だけ変わる
音は引き出した部分を行って戻るので、その経路は行きと帰りで ずつ長くなる。 のままにして波長を半分に求めてしまう誤りが多い。
クインケ管で、出口の音が最も小さい位置から管をさらに だけ引き出すと、次に音が最も小さくなった。音の波長 は?
小さい状態から次の小さい状態までに、経路差は 1 波長ぶん変わる。経路差の変化は なので 。振動数が分かっていれば、 から音の速さも求められる。
3. 音の回折と屈折
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(イ)-㋐
音は、姿の見えない相手の声でも聞こえます。障害物の裏へ回り込む回折と、空気の温度の違いで進む向きが曲がる屈折を扱います。壁や山で音がはね返る反射(やまびこ)は、音が波であることの現れとして知っておけば足ります。
音の回折とは、どういう現象か。身のまわりの例は?
音が障害物の裏側へ回り込んで伝わる現象。塀の向こうにいる人の声が聞こえる、開いた戸口の横にいても部屋の中の音が聞こえる、など
光は塀の裏へほとんど回り込まないので姿は見えないが、音は回り込むので声は聞こえる。光の波長が音の波長に比べてはるかに短いことによる違いである。
音の回折が目立つのは、波長と、すき間や障害物の大きさとが、どんな関係にあるときか。高い音と低い音では、どちらが回り込みやすいか?
波長が、すき間や障害物の大きさと同じくらいか、それより長いとき。低い音(波長の長い音)のほうが回り込みやすい
なので、振動数の小さい低い音ほど波長が長い。建物の陰では、低い音はよく聞こえ、高い音は聞こえにくくなる。
空気中を進む音が屈折するのは、どんなときか。どちら側へ曲がるか?
気温が場所によって違い、音の速さが違う空気の層を通るとき。音の速さが小さい側(気温の低い側)へ曲がる
音の速さは気温が高いほど大きい。波は、速さの違う媒質へ斜めに進むと向きを変える(屈折の法則)。気温が少しずつ変わる空気の中では、音の進む道すじがなめらかに曲がる。
晴れた夜に、昼間は聞こえない遠くの音が聞こえることがある。なぜか?
夜は地面の近くの空気が冷え、上空のほうが気温が高くなる。音は速さの小さい地面の側へ曲がるので、上へ逃げずに遠くまで届く
昼間は逆に、地面の近くのほうが気温が高い。音は上空の側へ曲がって上へ逃げるので、地上の遠くには届きにくい。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(イ)-㋐
以下、音の速さを とします。
問 1 2 つのスピーカー A、B から、振動数 の音を同位相で出している。(1) 点 P は A から 、B から の距離にある。P で音は強め合うか、弱め合うか。(2) 点 Q は A から 、B から の距離にある。Q ではどうか。
(1) 強め合う (2) 弱め合う
方針 まず から波長を求める。次に、経路差を波長で割る。答えが整数なら強め合い、整数と半分なら弱め合う。
- 波長は なので、
- (1) P の経路差は
- 波長で割ると 。整数なので、P では強め合う。
- (2) Q の経路差は
- 波長で割ると 。整数と半分なので、Q では弱め合う。
問 2 離して向かい合わせに置いた 2 つのスピーカー A、B から、振動数 の音を同位相で出している。A と B を結ぶ線分の上を、マイクをゆっくり動かして音の大きさを調べた。(1) 音が大きくなる点は、何 m ごとに現れるか。(2) 音が大きくなる点は、線分の上に何個あるか。両端の A、B の位置は数えない。
(1) ごと (2) 9 個
方針 線分の上では、中点から だけ動くと経路差が になる。経路差が波長の整数倍になる点を、中点から順に数える。
- 波長は なので、
- 中点は A、B から等しい距離にあり、経路差が 0 なので強め合う。
- 中点から だけ離れた点の経路差は 。強め合う条件は なので、
- (1) 間隔は半波長で、
- (2) 中点から端までは で、。 の点はちょうど端なので数えない。片側には から までの 4 個がある。
- 両側の 4 個ずつと中点の 1 個を合わせて、 個
ここで間違えやすい 間隔を波長 としてしまうこと。線分の上では、動いた長さの 2 倍だけ経路差が変わるので、間隔は半波長になる。
問 3 クインケ管の入口に、一定の振動数の音を出すスピーカーを置いた。出し入れできる管を少しずつ引き出していくと、出口の音が最も小さくなる位置があり、そこからさらに 引き出したところで、次に音が最も小さくなった。(1) この音の波長と振動数を求めよ。(2) 音が最も小さい位置から だけ引き出したとき、出口の音はどうなるか。
(1) 波長 、振動数 (2) 最も大きくなる
方針 管を 引き出すと経路差は 変わる。音が小さい状態から次の小さい状態までに、経路差は 1 波長ぶん変わる。
- 引き出した長さを m で表すと
- (1) 経路差の変化は引き出した長さの 2 倍で、これが 1 波長にあたる。
- 振動数は なので、
- (2) 引き出すと、経路差の変化は
- これは半波長にあたる。弱め合っていた状態から半波長ぶんずれるので、強め合う状態になり、音は最も大きくなる。
ここで間違えやすい 引き出した長さ をそのまま波長としてしまうこと。振動数が 2 倍の になってしまう。
問 4 座標の単位を m として、点 A と点 B にスピーカーを置き、同じ振動数の音を同位相で出す。点 P で音を聞きながら、振動数をごく低いところからゆっくり上げていった。(1) P で音が最初に最も小さくなるときの振動数を求めよ。(2) そのあと、P で音が最初に最も大きくなるときの振動数を求めよ。
(1) (2)
方針 P の位置は動かないので、経路差は一定。振動数を上げると波長が短くなっていく。経路差が半波長に等しくなったとき最初に弱め合い、1 波長に等しくなったとき次に強め合う。
- A から P までの距離は
- B から P までの距離は、三平方の定理から
- 経路差は
- (1) 振動数がごく低いあいだは、波長が経路差よりずっと長く、2 つの音はほぼそろって届く。波長が短くなって、経路差が半波長に等しくなったときに最初に弱め合う。このときの波長は
- 振動数は なので、
- (2) さらに波長が短くなり、経路差が 1 波長に等しくなったときに強め合う。このときの波長は なので、
問 5 部屋の中のスピーカーから、振動数 の低い音と の高い音が出ている。幅 の戸口の外で、戸口の正面から横にずれたところに立って聞くと、どちらの音がよく聞こえるか。それぞれの波長を求めて答えよ。
の音(波長 )のほうがよく聞こえる。 の音の波長は
方針 戸口の横へ音が届くのは回折による。回折は、波長がすき間の幅と同じくらいか、それより長いときに目立つ。2 つの音の波長を求めて、戸口の幅と比べる。
- の音の波長は
- の音の波長は
- 戸口の幅 と比べると、 の音は波長のほうが長く、 の音は波長のほうがずっと短い。
- 波長の長い の音はよく回り込むので、横にずれたところでもよく聞こえる。 の音はほぼまっすぐ進み、横には届きにくい。