静電気とクーロンの法則
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (3) ア (ア) ㋐「電荷が相互に及ぼし合う力を理解すること。また,電界の表し方を理解すること。」。
0. どういうまとまりか
電気と磁気の単元は、「電荷は互いに力を及ぼし合う」という 1 つの事実から始まります。
このノートでは、物体が電気を帯びるしくみ、帯電体を近づけたときに物体の中で電荷がどう動くか(静電誘導と誘電分極)、そして電荷どうしが及ぼし合う力の大きさを表すクーロンの法則を扱います。
前半は言葉で説明する内容、後半は計算する内容です。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 帯電 | 物体のあいだで電子が移動して起こる。電子を失った側が正、受け取った側が負 |
| 電気量保存の法則 | 電荷のやりとりの前後で、電気量の総和は変わらない |
| 静電誘導 | 導体に帯電体を近づけると、自由電子が移動して、近い側に異符号、遠い側に同符号の電荷が現れる |
| 誘電分極 | 不導体に帯電体を近づけると、原子や分子の中で電荷の分布がずれて、表面に電荷が現れる |
| クーロンの法則 | 。力は 2 つの電荷を結ぶ直線上にはたらき、同符号は反発、異符号は引き合う |
分かれ目は次の 3 つ。
- 静電誘導は電荷が導体の中を移動する。誘電分極は原子や分子の中でずれるだけ。静電誘導で現れた電荷は分けて取り出せるが、誘電分極で現れた電荷は取り出せない
- クーロンの法則の式は力の大きさを出す。向きは符号から別に決める。式には電気量の大きさ(絶対値)を入れる
- 3 つ以上の電荷があるときは、2 つずつの力を別々に求めてから、向きを考えて合わせる
1. 帯電と電気量の保存
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋐
物体が電気を帯びることを帯電といい、帯電した物体がもつ電気を電荷、その量を電気量といいます。電気量の単位はクーロン(記号 C)です。
異なる物質をこすり合わせると、なぜ帯電するのか。どちらが正に、どちらが負に帯電するか?
一方の物体からもう一方へ電子が移動するから。電子を失った物体が正に、電子を受け取った物体が負に帯電する
動くのは負の電荷をもつ電子で、正の電荷をもつ原子核は動かない。こすり合わせた 2 つの物体は、同じ大きさで逆符号の電気量を帯びる。
電気量保存の法則とは?
物体のあいだで電荷のやりとりがあっても、その前後で電気量の総和は変わらない
電荷は移動するだけで、新しく生まれたり消えたりしない。和をとるときは、正と負の符号を付けたまま足す。
同じ大きさ・同じ形の 2 つの金属球が、電気量 、 を帯びている。接触させてから離すと、それぞれの電気量はいくらになるか?
どちらも
接触すると電荷が移動し、同じ大きさ・同じ形なので等しく分かれる。総和は電気量保存の法則で のまま。、 は符号を付けて足す。
2. 静電誘導と誘電分極
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋐
帯電していない物体に帯電体を近づけると、物体の中で電荷のかたよりが生じます。起こることは、物体が導体か不導体かで違います。
導体と不導体(絶縁体)の違いは何か?
導体は、物質の中を自由に動ける電子(自由電子)をもち、電気をよく通す。不導体は、電子が原子や分子から離れられず、電気をほとんど通さない
金属は導体、ガラスやプラスチックやゴムは不導体である。帯電体を近づけたときに起こることが、この違いで分かれる。
静電誘導とは、どういう現象か?
導体に帯電体を近づけると、導体の中の自由電子が移動して、帯電体に近い側に異符号の電荷、遠い側に同符号の電荷が現れる現象
負の帯電体を近づけると、自由電子は反発して遠い側へ移動する。近い側は電子が不足して正に、遠い側は電子が余って負になる。導体全体の電気量の和は 0 のまま。
誘電分極とは、どういう現象か?
不導体に帯電体を近づけると、原子や分子の中で電荷の分布がわずかにずれ、帯電体に近い側の表面に異符号の電荷、遠い側の表面に同符号の電荷が現れる現象
不導体には自由電子が無いので、電子は物体の端から端へは移動しない。1 つ 1 つの原子や分子の中でのずれが、表面の電荷として現れる。
静電誘導で現れた電荷と、誘電分極で現れた電荷は、取り出せるかどうかでどう違うか?
静電誘導で現れた正と負の電荷は、導体を 2 つに分ければ別々に取り出せる。誘電分極で現れた電荷は、原子や分子の中でのずれなので、取り出せない
帯電体を近づけたまま導体を 2 つに切り離すと、一方は正、他方は負に帯電した導体になる。不導体を切り離しても、どちらも帯電しない。
帯電していない物体(導体でも不導体でも)が、帯電体に引き寄せられるのはなぜか?
帯電体に近い側に異符号の電荷が、遠い側に同符号の電荷が現れる。近い側の電荷が受ける引力のほうが、遠い側の電荷が受ける斥力より大きいから
静電気力は距離が近いほど強い。帯電した下敷きが髪の毛や紙きれを引き寄せるのは、このためである。
3. 箔検電器
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋐
箔検電器は、金属板と、金属棒でつながった 2 枚の薄い金属箔からできています。箔が同じ符号に帯電すると反発して開くので、電荷の有無や符号が調べられます。
帯電していない箔検電器の金属板に、負の帯電体を近づけると、箔が開く。金属板と箔には、それぞれどんな電荷が現れているか?
金属板には正の電荷、箔には負の電荷が現れている
静電誘導である。自由電子が帯電体に反発して、遠い側の箔へ移動する。2 枚の箔はどちらも負になり、反発し合って開く。帯電体を遠ざければ、箔は閉じる。
帯電していない箔検電器に負の帯電体を近づけ、そのまま金属板に指で触れ、指を離してから帯電体を遠ざけた。箔検電器はどうなるか?
正に帯電する(近づけた帯電体と逆の符号)。箔は、指で触れたときに閉じ、帯電体を遠ざけたときにふたたび開く
指で触れると、箔に集まっていた電子が指を通って体のほうへ逃げ、箔は閉じる。金属板の正の電荷は、帯電体に引きつけられて残る。指を離して帯電体を遠ざけると、残った正の電荷が全体に広がり、箔が開く。
箔検電器を静電誘導で帯電させるとき、「指を離す」と「帯電体を遠ざける」の順番を逆にするとどうなるか?
帯電しない。先に帯電体を遠ざけると、逃げていた電子が指を通って戻り、箔検電器は電気的に中性に戻る
帯電体が近くにあるうちに指を離して、電子の通り道を断つことが要る。順番は「指を離す」が先、「帯電体を遠ざける」が後である。
4. クーロンの法則
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋐
電荷どうしが及ぼし合う力を静電気力(クーロン力)といいます。大きさをもたない点とみなせる電荷を点電荷といい、点電荷のあいだの力は 1 本の式で表せます。
電気量の大きさが 、 の 2 つの点電荷が、距離 だけ離れている。及ぼし合う静電気力の大きさ は?
(クーロンの法則)
力の大きさは、電気量の大きさの積に比例し、距離の 2 乗に反比例する。 はクーロンの法則の比例定数で、真空中では 。距離が 2 倍になれば、力は 倍になる。
2 つの点電荷が及ぼし合う静電気力は、どの向きにはたらくか?
2 つの電荷を結ぶ直線上にはたらく。同符号どうしなら反発し合う向き(斥力)、異符号どうしなら引き合う向き(引力)
正と正、負と負は反発し、正と負は引き合う。力の向きは、電気量の符号の組み合わせだけで決まる。
電気量 の点電荷 A と、電気量 の点電荷 B がある。A が B から受ける力と、B が A から受ける力は、どちらが大きいか?
同じ大きさ。向きは逆
2 つの力は作用・反作用の関係にある。クーロンの法則の式は と を入れかえても同じ値になる。電気量の大きいほうが大きな力を及ぼす、と考えるのは誤りである。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋐
以下、クーロンの法則の比例定数を とします。
問 1 電気量 の点電荷 A と、電気量 の点電荷 B を、 離して置いた。(1) A と B が及ぼし合う静電気力の大きさと、引力か斥力かを答えよ。(2) 距離を 2 倍の にすると、力の大きさはいくらになるか。
(1) の斥力 (2)
方針 大きさはクーロンの法則 で求める。向きは符号の組み合わせで決める。距離を変えたときは、力が距離の 2 乗に反比例することを使う。
- (1) 式に値を入れると、
- どちらも正の電荷なので、反発し合う。斥力である。
- (2) 距離が 2 倍になると、分母の は 倍になるので、力は 倍になる。
- 力の大きさは
ここで間違えやすい 距離が 2 倍なら力は 倍、としてしまうこと。分母は でなく である。
問 2 同じ大きさ・同じ形の 2 つの金属球 A、B がある。A は 、B は に帯電している。金属球は点電荷とみなせるものとする。(1) A と B を 離して置いたとき、及ぼし合う力の大きさと、引力か斥力かを答えよ。(2) A と B を接触させてから、ふたたび 離して置いた。それぞれの電気量と、及ぼし合う力の大きさ、引力か斥力かを答えよ。
(1) の引力 (2) どちらも 。 の斥力
方針 接触の前後で電気量の総和は変わらない。同じ大きさ・同じ形の金属球なので、接触すると総和が等しく分かれる。力は、接触の前と後のそれぞれについてクーロンの法則で求める。
- (1) クーロンの法則には電気量の大きさを入れる。
- 正と負なので、引き合う。引力である。
- (2) 電気量の総和を を単位にして求めると、符号を付けて足して
- 2 つの球に等しく分かれるので、。それぞれ
- 力の大きさは
- どちらも正なので、反発し合う。斥力である。
ここで間違えやすい 電気量の総和を としてしまうこと。負の電荷は、正の電荷の一部を打ち消す。
問 3 軸上の原点に電気量 の点電荷 A を、 の点に電気量 の点電荷 B を固定した。A と B のあいだの 軸上に、第 3 の点電荷 C を置いたところ、C が受ける静電気力がつり合った。C の位置の 座標を求めよ。
方針 C が A から受ける力と B から受ける力は、A と B のあいだでは逆向きになる。2 つの力の大きさが等しくなる位置を求める。C の電気量と比例定数 は両辺で消える。
- C の電気量の大きさを 、位置を とする。A から C までの距離は 、B から C までの距離は
- A と B はどちらも正。C が正なら、A からは 軸の正の向きに、B からは負の向きに押される。C が負なら、どちらの力も向きが逆になる。どちらの場合も、2 つの力は逆向きである。
- 大きさが等しい条件は、
- 両辺を で割り、分母を払うと、
- も も正なので、両辺の正の平方根をとって
- 展開して 。 について解くと
ここで間違えやすい つり合いの位置を中点にしてしまうこと。つり合う点は、電気量の小さい B に近い側にずれる。A から 、B から で、距離の比が 、電気量の比が になっている。
問 4 軸上の原点に電気量 の点電荷 A、 の点に電気量 の点電荷 B、 の点に電気量 の点電荷 C がある。C が受ける静電気力の合力の大きさと向きを求めよ。
大きさ 、 軸の負の向き
方針 C が A から受ける力と、C が B から受ける力を別々に求める。それぞれの向きを符号の組み合わせから決めて、最後に合わせる。
- A と C の距離は 。C が A から受ける力の大きさは
- A も C も正なので斥力。C は A から遠ざかる向き、つまり 軸の正の向きに押される。
- B と C の距離は 。C が B から受ける力の大きさは
- B は負、C は正なので引力。C は B に近づく向き、つまり 軸の負の向きに引かれる。
- 2 つの力は逆向きなので、合力の大きさは 。B からの力のほうが大きいので、向きは 軸の負の向き。
問 5 帯電していない箔検電器がある。次の操作を順に行ったとき、それぞれの段階で、金属板と箔の電荷、箔の開き方はどうなるか。(1) 正に帯電したガラス棒を金属板に近づける。(2) ガラス棒を近づけたまま、金属板に指で触れる。(3) 指を離す。(4) ガラス棒を遠ざける。
(1) 金属板は負、箔は正。箔は開く (2) 金属板は負のまま、箔の電荷は無くなる。箔は閉じる (3) 変わらない。箔は閉じたまま (4) 負の電荷が全体に広がる。箔は開き、箔検電器は負に帯電している
方針 動くのは自由電子だけ、と考える。帯電体に引かれるか反発するかで電子の移動を追い、指で触れているあいだは、指が電子の出入り口になる。
- (1) 自由電子が正のガラス棒に引かれて、金属板へ移動する。金属板は電子が余って負に、箔は電子が不足して正になる。2 枚の箔は同じ正なので、反発して開く。
- (2) 指で触れると、箔検電器は人の体とつながる。ガラス棒に引かれて、体のほうから電子が流れ込み、箔の正の電荷を打ち消す。箔は閉じる。金属板の負の電荷は、ガラス棒に引きつけられたまま残る。
- (3) 指を離すと、電子の出入り口が無くなる。箔検電器は、全体として電子が余った状態のまま切り離される。電荷の分布は変わらず、箔は閉じたまま。
- (4) ガラス棒を遠ざけると、金属板に引きつけられていた負の電荷が、箔を含む全体に広がる。2 枚の箔はどちらも負になり、反発して開く。
- 結果として、箔検電器は、近づけた帯電体(正)と逆の符号(負)に帯電する。
ここで間違えやすい (4) で「ガラス棒が正だから箔検電器も正に帯電する」としてしまうこと。ガラス棒は箔検電器に触れていないので、ガラス棒の電荷は移っていない。指から流れ込んだ電子が残る。