薄膜の干渉
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (2) ア (ウ) ㋑「光の回折と干渉に関する実験などを行い,光の回折と干渉を光波の性質と関連付けて理解すること。」。
0. どういうまとまりか
シャボン玉や水面に広がった油の膜は、色づいて見えます。薄膜の表の面で反射した光と、裏の面で反射した光が干渉するからです。
ヤングの実験や回折格子と違うのは、次の 2 点を考えに入れるところです。
- 光が膜の中(屈折率が 1 でない媒質)を進むので、距離の差ではなく光路長の差(光路差)で比べる
- 反射するときに位相がずれる場合があるので、その回数によって明暗の条件が入れかわる
膜の屈折率を 、厚さを 、真空中の光の波長を とし、光が膜に垂直に入射するとします。光路差は です()。
| 位相が半波長ぶんずれる反射の回数 | 反射光が強め合う(明るい) | 反射光が弱め合う(暗い) | 例 |
|---|---|---|---|
| 1 回 | 空気中のシャボン膜、水面の油膜 | ||
| 0 回または 2 回 | ガラスの表面の反射防止膜 |
分かれ目は次の 3 つ。
- 光路差は 。膜を往復するので厚さの 2 倍、膜の中を進むので屈折率を掛ける
- 位相がずれるのは、屈折率の小さい媒質の側から、大きい媒質との境界面に当たって反射するときだけ
- 表と裏の 2 つの反射のうち、位相がずれるものが 1 回なら、明暗の条件はふつうの干渉と逆になる。0 回または 2 回なら、そのままである
1. 光路長
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋑
屈折率 の媒質の中では、光の波長が に縮みます。同じ距離でも、屈折率の大きい媒質の中には、より多くの波が入ります。これを真空中の距離に換算したものが光路長です。
光路長(光学距離)とは何か。屈折率 の媒質中の距離 の光路長は?
媒質中の距離を、同じ数の波が入る真空中の距離に換算したもの。光路長は
媒質中の波長は なので、距離 の中にある波の数は 。これは、真空中の距離 の中にある波の数と同じである。
屈折率の違う媒質を通る 2 つの光の干渉を考えるとき、何を、何と比べるか?
2 つの光の光路長の差(光路差)を、真空中の波長 と比べる
光路長に直しておけば、どの媒質を通った部分も真空中の波長で数えられる。距離の差をそのまま比べてはいけない。
2. 反射による位相のずれ
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋑
光は、境界面で反射するときに、位相が半波長ぶんずれることがあります。ずれるかどうかは、境界面の両側の屈折率の大小で決まります。
光が境界面で反射するとき、位相が半波長ぶん()ずれるのは、どんな反射か?
屈折率の小さい媒質の中を進んできた光が、屈折率の大きい媒質との境界面で反射するとき
空気中からガラスや水の表面に当たって反射する光がこれにあたる。山が谷になって返るので、固定端での反射に対応する。
光が境界面で反射するとき、位相がずれないのは、どんな反射か?
屈折率の大きい媒質の中を進んできた光が、屈折率の小さい媒質との境界面で反射するとき
ガラスや水の中から空気との境界面に当たって反射する光がこれにあたる。山が山のまま返るので、自由端での反射に対応する。
光が境界面で屈折して、となりの媒質へ進むとき、位相はずれるか?
ずれない
位相のずれを考えるのは、反射する光だけである。膜の中へ入る光や、膜から出る光については考えなくてよい。
3. 薄膜による干渉の条件
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋑
薄膜に垂直に光を当てたとき、反射光が強め合うか弱め合うかは、光路差と、位相がずれる反射の回数の 2 つで決まります。
薄膜に光を垂直に当てたとき、干渉するのは、どの光とどの光か。その光路差は?(膜の屈折率 、厚さ )
膜の表の面で反射した光と、膜の中へ入って裏の面で反射し、ふたたび表の面から出てきた光。光路差は
裏の面で反射する光は、膜の中を 1 往復ぶん(距離 )余分に進む。膜の中なので、屈折率を掛けて光路長にする。
薄膜の干渉の条件式を立てる手順を、順に 3 つ言うと?
①光路差 を求める ②表の面の反射と裏の面の反射のそれぞれについて、位相がずれるかどうかを屈折率の大小から調べる ③ずれる反射が 1 回なら条件を入れかえ、0 回または 2 回ならそのままにして、明暗の式を書く
式を覚えるより、この手順で毎回立てるほうが確実である。膜の上と下の媒質が変われば、同じ膜でも条件が変わる。
薄膜の表と裏の反射のうち、位相がずれる反射が 1 回だけのとき、反射光が強め合う条件と弱め合う条件は?()
強め合うのは 。弱め合うのは
片方の光だけが半波長ぶんずれるので、ふつうの干渉の条件(整数倍で強め合う)と逆になる。空気中のシャボン膜では、表の面の反射だけがずれる。
薄膜の表と裏の反射で、位相がずれる反射が 0 回または 2 回のとき、反射光が強め合う条件と弱め合う条件は?( は 0 以上の整数)
強め合うのは ( は 1 以上)。弱め合うのは
2 つの光がどちらも半波長ぶんずれれば、ずれは打ち消し合う。ガラス(屈折率が膜より大きい)の表面に付けた膜では、表も裏も「小さい側から大きい側へ」の反射なので、2 回になる。
シャボン玉に白色光が当たると、色づいて見えるのはなぜか?
反射光が強め合う条件は波長によって違うので、膜の厚さに応じて、特定の波長(色)の光だけが強め合って目に届くから
膜の厚さは場所によって違い、時間とともに変わる。そのため、場所ごとに違う色が見え、色の模様が動く。
4. くさび形空気層
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋑
2 枚の平らなガラス板を重ね、一方の端に薄い紙などをはさむと、ガラスの間にくさび形の空気の層ができます。上から単色光を当てて上から見ると、等しい間隔の明暗のしまが見えます。空気の層が薄膜の役目をしています。
くさび形空気層で、空気層の厚さが の位置に、上から見て明線ができる条件と、暗線ができる条件は?()
明線は 。暗線は
空気層の屈折率は 1 なので光路差は 。上のガラスの下面での反射(ガラスから空気へ)はずれず、下のガラスの上面での反射(空気からガラスへ)だけがずれる。ずれる反射が 1 回なので、ガラスが接している端()は暗線になる。
くさび形空気層で、ガラスが接している端から距離 の位置に、厚さ のものをはさんである。隣り合う明線の間隔 は?
となりの明線へ移ると、空気層の厚さが だけ増える。厚さは接している端からの距離に比例して増え、距離 で になるので、厚さが 増える距離は である。
5. ニュートンリング
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋑
平らなガラス板の上に、片面が平面で片面がゆるい球面のレンズ(平凸レンズ)を、球面を下にして置きます。上から単色光を当てて上から見ると、接点を中心とする同心円状の明暗の輪が見えます。これをニュートンリングといいます。
ニュートンリングで、中心(接点)から距離 の位置の空気層の厚さ は?(レンズの球面の半径 )
が に比べて十分小さいときの近似式である。厚さは中心からの距離の 2 乗に比例して増えるので、輪の間隔は外側ほどせまくなる。
ニュートンリングを上から(反射光で)見るとき、中心は明るいか暗いか。また、中心から 番目の暗い輪の半径 は?(中心を とする)
中心は暗い。暗い輪の半径は
くさび形空気層と同じく、位相がずれる反射は 1 回。暗くなる条件 に を入れると になる。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋑
以下、空気の屈折率を とし、光は膜やガラスの面に垂直に入射するものとします。波長は、すべて真空中(空気中)での値です。
問 1 屈折率 、厚さ のガラス板を、波長 の光が垂直に通りぬける。(1) ガラス板の中の光路長を求めよ。(2) ガラス板の厚さの中には、波がいくつ入っているか。(3) 同じ厚さの空気の層を通る光との光路差を求めよ。
(1) (2) 個 (3)
方針 光路長は「屈折率 × 距離」。光路長を真空中の波長で割れば、その中にある波の数が出る。光路差は、2 つの経路の光路長の差である。
- (1) 光路長は 。値を入れると、
- (2) 波の数は、光路長を真空中の波長で割って、 個
- (3) 同じ厚さの空気の層の光路長は、
- 光路差は、
ここで間違えやすい (2) で、厚さをそのまま真空中の波長で割ってしまうこと。ガラスの中では波長が縮んでいるので、厚さでなく光路長を割る。
問 2 空気中に、屈折率 のシャボン膜がある。この膜に波長 の光を垂直に当てる。(1) 膜の表の面と裏の面での反射のうち、位相がずれるのはどちらか。(2) 反射光が強め合う膜の厚さのうち、最も薄いものを求めよ。(3) その次に薄いものを求めよ。
(1) 表の面での反射だけ (2) (3)
方針 まず 2 つの反射の位相のずれを調べる。ずれる反射が 1 回なので、強め合う条件は になる。最も薄いのは 、次は である。
- (1) 表の面では、空気()の側から膜()に当たって反射する。小さい側から大きい側へ向かう反射なので、位相がずれる。
- 裏の面では、膜()の側から空気()に当たって反射する。大きい側から小さい側へ向かう反射なので、位相はずれない。
- ずれる反射は 1 回。強め合う条件は
- (2) とすると 。厚さについて解くと
- 値を入れると、
- (3) とすると 。厚さは のときの 3 倍になるので、
ここで間違えやすい 位相のずれを考えずに を強め合う条件として使ってしまうこと。シャボン膜では、これは弱め合う条件である。
問 3 屈折率 のガラスの表面に、屈折率 の透明な薄膜を付けて、反射光を弱めたい。空気中から波長 の光を垂直に当てるとき、反射光が弱め合う膜の厚さのうち、最も薄いものを求めよ。
方針 膜の表の面(空気から膜へ)と裏の面(膜からガラスへ)の反射の位相のずれを調べる。どちらもずれるので 2 回となり、弱め合う条件は になる。
- 表の面では、空気()の側から膜()に当たって反射する。小さい側から大きい側へ向かうので、位相がずれる。
- 裏の面では、膜()の側からガラス()に当たって反射する。これも小さい側から大きい側へ向かうので、位相がずれる。
- ずれる反射は 2 回で、ずれは打ち消し合う。弱め合う条件は
- 最も薄いのは のときで、。厚さについて解くと
- は膜の屈折率 である。値を入れると、
ここで間違えやすい にガラスの屈折率 を入れてしまうこと。光路差 の は、光が往復する膜の屈折率である。ガラスの屈折率は、位相がずれるかどうかの判定にだけ使う。
問 4 2 枚の平らなガラス板を重ね、ガラスが接している端から の位置に、薄い紙をはさんだ。上から波長 の単色光を当てて上から見ると、明線が の間隔で並んでいた。紙の厚さを求めよ。
方針 くさび形空気層の明線の間隔の式 を、紙の厚さ について解く。明線の間隔は m に直しておく。
- 明線の間隔は
- の両辺に を掛けると、
- 値を入れると、
- これは にあたる。直接は測りにくい厚さが、しまの間隔から求められる。
ここで間違えやすい 分母の 2 を落として、ヤングの実験の式と同じ形 にしてしまうこと。空気層を往復するので、光路差は厚さの 2 倍である。
問 5 平らなガラス板の上に、球面の半径が の平凸レンズを、球面を下にして置いた。上から波長 の単色光を当てて上から見ると、同心円状の明暗の輪が見えた。中心の暗い部分を 0 番目として、4 番目の暗い輪の半径は何 mm か。
方針 上から見るニュートンリングでは、暗い輪の条件は 。これに空気層の厚さ を入れると になる。 を入れて を求める。
- 位相がずれる反射は、下のガラス板の上面での 1 回だけ。暗くなる条件は
- を入れると 。したがって
- 、、 を入れると、右辺は
- がこの値になるので、 は
- mm に直すと、
ここで間違えやすい として、平方根をとり忘れること。半径は の平方根に比例するので、輪の間隔は外側ほどせまくなる。