静電エネルギーと誘電体
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (3) ア (ア) ㋒「コンデンサーの性質を理解するとともに,電気容量を電界や電位差と関連付けて理解すること。」。
0. どういうまとまりか
充電したコンデンサーは、放電させると電球を光らせたりモーターを回したりできます。つまりエネルギーを蓄えています。これが静電エネルギーです。
また、極板のあいだに絶縁体(誘電体)をはさむと、電気容量が大きくなります。
| 量 | 式 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 静電エネルギー | と の両方が分かっているとき | |
| が一定のとき(電池をつないだまま) | ||
| が一定のとき(電池を切り離したあと) | ||
| 充電で電池がした仕事 | 静電エネルギーの 2 倍 | |
| 誘電体を入れたときの電気容量 | は比誘電率、 は真空のときの電気容量 |
分かれ目は次の 3 つ。
- 静電エネルギーの 3 つの式は同じもの。一定に保たれる量( か )が入った形を選ぶと、変化が追いやすい
- 電池がした仕事 のうち、蓄えられるのは半分の 。残りの半分は、導線や抵抗でジュール熱になる
- 誘電体を入れると電気容量は 倍になる。そのあと と のどちらが変わるかは、電池をつないだままか切り離したあとかで決まる
1. 静電エネルギー
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋒
コンデンサーを充電するには、電荷を電位差に逆らって運ぶ仕事が要ります。その仕事が、コンデンサーにエネルギーとして蓄えられます。
コンデンサーの静電エネルギーとは?
充電したコンデンサーが蓄えているエネルギー。充電のとき、電荷を極板間の電位差に逆らって運ぶのに要した仕事にあたる
単位はジュール()。放電させると、このエネルギーが熱や光などに変わる。
電気容量 のコンデンサーに電気量 が蓄えられ、極板間の電位差が のとき、静電エネルギー を 3 つの形で表すと?
もとの形は 。これに を入れると 、 を入れると になる。
静電エネルギーの式 と は、どう使い分けるか?
電池をつないだまま( が一定)なら 、電池を切り離したあと( が一定)なら を使う
一定な量が入った式を選ぶと、 が変わったときの静電エネルギーの増減がすぐ分かる。 一定なら は に比例し、 一定なら は に反比例する。
静電エネルギーが ではなく になるのはなぜか?
充電の途中では、極板間の電位差が 0 から まで少しずつ大きくなるので、電荷を運ぶ仕事は平均の電位差 で運んだ分になるから
電気量を横軸、電位差を縦軸にとると、グラフは原点を通る直線になる。仕事は、この直線と横軸が囲む三角形の面積 である。
2. 電池がした仕事との関係
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋒
電池の側から見ると、電池は一定の電圧 のまま電気量 を送り出しています。その仕事と静電エネルギーは一致しません。
電圧 の電池が、電気量 を送り出したとき、電池がした仕事は?
電池は、はじめから終わりまで一定の電圧 で電荷を送り出す。充電の途中の極板間の電位差とは違い、平均をとる必要がない。
電荷を蓄えていないコンデンサーを電池で充電した。電池がした仕事 と、蓄えられた静電エネルギー の差は、どこへ行ったか?
充電のあいだに流れた電流によって、導線や抵抗でジュール熱になった
失われるのは電池がした仕事のちょうど半分 で、回路の抵抗の大きさによらない。
コンデンサーを含む回路で、エネルギーの収支の式はどう書けるか?
電池がした仕事 = 静電エネルギーの増加 + 発生したジュール熱
電池がした仕事は「電池を通った電気量 × 電池の電圧」。電荷が電池を逆向きに通ったときは、電池がした仕事を負として扱う。極板を動かすなど、外から力を加えて仕事をしたときは、その仕事も左辺に加える。
3. 誘電体
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋒
極板のあいだにガラスや紙、プラスチックなどの絶縁体をはさむと、電気容量が大きくなります。電気的な性質に注目するとき、絶縁体を誘電体と呼びます。
誘電体とは?
絶縁体のこと。電界の中に置くと、表面に正と負の電荷が現れる(誘電分極)という性質に注目した呼び名
誘電体の中の電子は原子や分子からはなれられないが、位置がわずかにずれる。そのため、電界の向きの側の表面に正、反対側の表面に負の電荷が現れる。
比誘電率 とは?
物質の誘電率 が、真空の誘電率 の何倍かを表す値。
単位は無い。真空は 1 で、物質は 1 より大きい。空気はほぼ 1 なので、空気中のコンデンサーは真空中と同じに扱ってよい。
極板のあいだを比誘電率 の誘電体で満たすと、電気容量は、真空のときの値 と比べてどうなるか?
倍になる()
の が に置きかわる。小さな形で大きな電気容量を得るために、実際のコンデンサーには誘電体がはさんである。
誘電体をはさむと電気容量が大きくなるのはなぜか?
誘電分極で誘電体の表面に現れた電荷が、極板の電荷がつくる電界を弱めるので、同じ電気量でも極板間の電位差が小さくなるから
なので、同じ で が小さくなれば は大きくなる。
充電したコンデンサーを電池から切り離し、極板のあいだを比誘電率 の誘電体で満たした。、、静電エネルギー はそれぞれ何倍になるか?
は変わらない。 は 倍、 は 倍
が一定で が 倍になるので、 も も 倍になる。
コンデンサーを電池につないだまま、極板のあいだを比誘電率 の誘電体で満たした。、、静電エネルギー はそれぞれ何倍になるか?
は変わらない。 は 倍、 は 倍
が一定で が 倍になるので、 も も 倍になる。増えた分の電荷は電池から送りこまれる。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋒
問 1 電気容量 のコンデンサーを の電源で充電した。(1) 蓄えられた静電エネルギーを求めよ。(2) 蓄えられた電気量を求め、 でも同じ値になることを確かめよ。
(1) (2) 電気量は で、静電エネルギーは同じ になる
方針 分かっているのは と なので、まず を使う。電気量は で出し、 に入れて比べる。
- 電気容量を で表すと、
- (1) に入れると、
- (2) から、
- に入れると、 で、(1) と一致する
ここで間違えやすい の 2 乗を落として としないこと。
問 2 電荷を蓄えていない電気容量 のコンデンサーを、抵抗を通して の電池につなぎ、十分に時間がたった。(1) 電池がした仕事を求めよ。(2) コンデンサーに蓄えられた静電エネルギーを求めよ。(3) 抵抗で発生したジュール熱を求めよ。
(1) (2) (3)
方針 電池がした仕事は「送り出した電気量 × 電池の電圧」。蓄えられるのは で、その差がジュール熱になる。抵抗の値は与えられていないが、エネルギーの収支で求められる。
- 充電が終わったときの電気量は から、
- (1) 電池がした仕事は から、
- (2) 静電エネルギーは から、
- (3) エネルギーの収支から、ジュール熱は 。
問 3 極板のあいだが真空で、電気容量 の平行板コンデンサーを の電源で充電し、電源から切り離した。そのあと、極板のあいだを比誘電率 の誘電体で満たした。(1) 誘電体を入れたあとの極板間の電位差を求めよ。(2) 誘電体を入れる前とあとの静電エネルギーをそれぞれ求めよ。
(1) (2) 入れる前は 、入れたあとは
方針 電源から切り離したので、電気量が変わらない。誘電体で電気容量が 5.0 倍になるので、電位差は 、静電エネルギーは の入った形 で求める。
- 切り離す前の電気量は、。このあと変わらない
- 誘電体を入れたあとの電気容量は、
- (1) 電位差は から、
- (2) 入れる前の静電エネルギーは、
- 入れたあとは から、
ここで間違えやすい 電位差が のままだとして に入れ、静電エネルギーが 5.0 倍になったとしてしまうこと。切り離したあとは、電位差のほうが変わる。
問 4 問 3 と同じコンデンサーを の電源につないだまま、極板のあいだを比誘電率 の誘電体で満たした。十分に時間がたったあとの、蓄えられた電気量と静電エネルギーを求めよ。
電気量 、静電エネルギー
方針 電源をつないだままなので、電位差が のまま変わらない。電気容量が 5.0 倍になるので、電気量は 、静電エネルギーは の入った形 で求める。
- 誘電体を入れたあとの電気容量は、
- 電気量は から、
- 静電エネルギーは から、
- 入れる前(問 3 の と )と比べると、どちらも 5.0 倍になっている
問 5 電気容量 の平行板コンデンサーを の電池で充電し、電池から切り離した。そのあと、極板間隔を 2 倍に広げた。(1) 広げる前とあとの静電エネルギーをそれぞれ求めよ。(2) 静電エネルギーが変化した分は、何によってもたらされたか。
(1) 広げる前は 、広げたあとは (2) 極板を引きはなすために外から加えた力がした仕事
方針 電池から切り離したので、電気量が一定。電気容量は間隔に反比例して半分になるので、 から静電エネルギーは 2 倍になる。増えた分は、エネルギーの保存から、外からされた仕事である。
- 電気量は から、。このあと変わらない
- (1) 広げる前の静電エネルギーは、
- 間隔を 2 倍にすると、電気容量は 倍の になる
- 広げたあとは から、
- (2) 正と負の極板は引きあっている。それに逆らって極板を引きはなすには、外から力を加えて仕事をしなければならない。その仕事 の分だけ、静電エネルギーが増えた
【発展】極板を引きはなすのに要る仕事から、極板どうしが引きあう力の大きさを求めるとどうなるか
極板どうしが引きあう力の大きさは
電池から切り離した平行板コンデンサー(電気量 、極板の面積 、極板間の誘電率 )で、極板間隔を から へ、ゆっくり広げることを考えます。静電エネルギーは なので、広げたことによる増加は です。この増加は、極板が引きあう力 とつり合う力を外から加えて だけ動かした仕事 に等しいので、 となります。極板間の電界の強さ を使うと と書けます。 ではなく半分になるのは、一方の極板が受ける力は、もう一方の極板だけがつくる電界(強さ )から受ける力だからです。この力は極板間隔によらず一定です。