電流と抵抗率
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (3) ア (ア) ㋓「電気回路に関する実験などを行い,電気回路における基本的な法則を理解すること。」。
0. どういうまとまりか
物理基礎では、金属の電流が自由電子の流れであること、オームの法則、抵抗が と表せることを学びました。
ここでは、その先を 3 つ扱います。電流を自由電子の数と速さで表すこと、抵抗率が温度で変わること、そして温度が変わるために電流と電圧が比例しなくなる例(電球)です。
| 扱うこと | 式や性質 | 文字の意味 |
|---|---|---|
| 電流と自由電子の運動 | は電気素量、 は単位体積あたりの自由電子の数、 は導線の断面積、 は自由電子の平均の速さ | |
| 抵抗率の温度変化 | は のときの抵抗率、 はセ氏温度、 は抵抗率の温度係数 | |
| 電球の電流と電圧 | 比例しない(グラフが曲線になる) | 電流が大きいほどフィラメントが高温になり、抵抗が大きくなる |
分かれ目は次の 3 つ。
- の は、自由電子が導線に沿って進む平均の速さで、とても遅い。電子 1 個 1 個が飛びまわる速さのことではない
- 金属の抵抗率は、温度が上がると大きくなる。式の は のときの値で、室温の値ではない
- 電流と電圧が比例するのは、温度が一定とみなせるときだけ。電球は温度が大きく変わるので、抵抗は「その点での 」として求める
1. 電流と自由電子の運動
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋓
電流の大きさは、導線の断面を 1 秒間に通る電気量です。これを、自由電子の数と速さから組み立てます。
断面積 の導線の中を、単位体積あたり 個の自由電子が平均の速さ で進んでいる。電気素量を として、電流の大きさ は?
の単位は (1 立方メートルあたりの個数)。電流の向きは、自由電子が進む向きと逆である。
は、どう導かれるか?
時間 のあいだにある断面を通るのは、その手前の長さ 、体積 の部分にいた自由電子 個。運ばれる電気量 を で割る
「体積の中の個数を数え、電気量に直し、時間で割る」の 3 段。電流の定義 に入れている。
導線の中を自由電子が進む平均の速さ は、ふつうどのくらいか? それでもスイッチを入れるとすぐ電流が流れるのはなぜか?
とても遅い(1 秒間に も進まない程度)。スイッチを入れると電界が導線全体にほぼ一瞬で伝わり、導線の中の自由電子がいっせいに動きだすから
電子がスイッチから電球まで走っていくのではない。自由電子は熱運動で激しく飛びまわっているが、向きがばらばらなので、平均すると導線に沿ってゆっくり進むだけになる。
太さが途中で変わる 1 本の導線に電流が流れている。細い部分と太い部分で、自由電子の平均の速さはどちらが大きいか?
細い部分のほうが大きい
1 本の導線ではどの断面でも電流 が等しい。同じ材質なら と も同じなので、 から は断面積 に反比例する。
2. 抵抗率の温度変化
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋓
物理基礎では、抵抗率は物質の種類で決まると学びました。くわしく見ると、同じ物質でも温度によって抵抗率が変わります。
金属の抵抗率は、温度が上がるとどうなるか? セ氏温度 のときの抵抗率 を式で表せ。
大きくなる。
は のときの抵抗率、 は抵抗率の温度係数。温度の範囲があまり広くなければ、抵抗率は温度とともにほぼ直線的に増える。
抵抗率の温度係数 は、何を表す量か? 単位は?
温度が 上がるごとに、抵抗率が のときの値の何倍ずつ増えるかを表す。単位は
物質によって決まる値で、問題では与えられる。金属では正の値である。
金属の抵抗率が、温度が上がると大きくなるのはなぜか?
金属の中の陽イオンの熱運動(振動)が激しくなり、自由電子の進行をさまたげるはたらきが大きくなるから
抵抗の原因は、自由電子が陽イオンにさまたげられること。温度が高いほど陽イオンが大きく振動し、さまたげが増える。
のときの抵抗が の金属線がある。セ氏温度 のときの抵抗 は?
で、温度による長さと断面積の変化は小さいので無視する。すると抵抗は抵抗率に比例し、同じ形の式になる。
ある金属線の、温度 での抵抗 が分かっている。別の温度 での抵抗 を求めるには、どうするか?
と の比をとり、 とする
としてはいけない。式の基準は のときの値 である。
3. 電球の電流と電圧
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋓
抵抗率が温度で変わるので、電流を流すと温度が大きく変わるものでは、電流と電圧が比例しなくなります。その代表が電球です。
オームの法則(電流が電圧に比例する)が成り立つのは、どんなときか?
導体の温度が一定とみなせるとき
温度が変わると抵抗率が変わり、抵抗 が一定でなくなる。ふつうの抵抗器は、温度の変化が小さい範囲で使うので、 を一定として扱える。
非直線抵抗(非オーム抵抗)とは? 例を挙げよ。
電流と電圧が比例せず、電流と電圧の関係のグラフが直線にならない抵抗。電球やダイオードがその例
かける電圧によって抵抗の値が変わる。これに対し、電流と電圧が比例するものを直線抵抗(オーム抵抗)という。
電球にかける電圧を大きくしていくと、電流と電圧の関係のグラフ(横軸が電圧、縦軸が電流)が直線にならず、増え方がにぶくなっていくのはなぜか?
電流が大きくなるほどジュール熱でフィラメントの温度が上がり、抵抗率が大きくなって、抵抗が増えるから
抵抗が一定なら原点を通る直線になる。電球では、電圧を 2 倍にしても電流は 2 倍にはならない。
電球の電流と電圧の関係のグラフ(曲線)上の 1 点で、電球の抵抗はどう求めるか?
その点の電圧 と電流 の比 で求める
グラフの接線の傾きから求めるのではない。点ごとに の値が違い、それがそのときの電球の抵抗である。
電球と抵抗値 の抵抗を直列にして、起電力 の電池(内部抵抗は無視)につないだ。電球に流れる電流は、どんな手順で求めるか?
電球の電圧を 、電流を として、回路の式 を立てる。この式と、電球の電流と電圧の関係のグラフとを、同時にみたす点(交点)を探す
電球の抵抗が分からないので、オームの法則だけでは解けない。未知数は と の 2 つで、条件は「回路の式」と「グラフ」の 2 つ。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋓
問 1 断面積 の銅線に の電流が流れている。銅の単位体積あたりの自由電子の数を 、電気素量を として、自由電子が導線に沿って進む平均の速さを求めよ。
方針 電流を自由電子の数と速さで表す式 を、 について解く。指数の計算は、数の部分と の累乗の部分に分けて行う。
- を について解くと、
- 分母の数の部分は
- 分母の の累乗の部分は 。したがって
ここで間違えやすい 答えがとても小さいので計算ちがいを疑ってしまうこと。1 秒間に しか進まないが、これで正しい。
問 2 導線に の電流が流れている。導線のある断面を、 のあいだに通る自由電子の数を求めよ。電気素量を とする。
個
方針 電流は「1 秒間に断面を通る電気量」。通った電気量を、電子 1 個の電気量の大きさ で割ると個数になる。
- のあいだに断面を通る電気量は から、
- 電子 1 個が運ぶ電気量の大きさは
- 個数は なので、 個
問 3 のときの抵抗が の銅線がある。銅の抵抗率の温度係数を として、 のときの抵抗を求めよ。温度による銅線の長さと断面積の変化は無視する。
方針 長さと断面積が変わらないので、抵抗は抵抗率に比例する。 に、 のときの抵抗とセ氏温度を入れる。
- を先に計算すると、
- かっこの中は
- に入れると、
問 4 ある電球のフィラメントの抵抗は、 のとき である。この電球を点灯させて電圧と電流を測ったところ、 で であった。フィラメントの金属の抵抗率の温度係数を とし、高温までこの値のまま使えるものとして、点灯しているときのフィラメントの温度を求めよ。
方針 まず、点灯しているときの抵抗を、測った電圧と電流の比で求める。次に、 を について解いて、その抵抗になる温度を求める。
- 点灯しているときの抵抗は から、
- の両辺を で割ると、。値を入れると
- は、12 から 1 を引いた 11
- なので、。有効数字 2 桁で
ここで間違えやすい 点灯しているときの抵抗が、点灯していないときの 12 倍にもなること。電球の抵抗を「一定の値」として扱えないのは、このためである。
問 5 ある電球にかける電圧と流れる電流を測ったところ、次のようになった。電圧 で 、 で 、 で 、 で 、 で 。この電球と の抵抗を直列にして、起電力 の電池(内部抵抗は無視)につないだ。(1) 電球に流れる電流と、電球にかかる電圧を求めよ。(2) このときの電球の抵抗と消費電力を求めよ。
(1) 電流 、電圧 (2) 抵抗 、消費電力
方針 電球の抵抗は電圧によって変わるので、先に決められない。電球の電圧を 、電流を とおいて回路の式を立て、測定値の中から、その式もみたす組を探す(グラフでいえば、電球の曲線と回路の式の直線の交点)。
- 直列なので、抵抗にも電球と同じ電流 が流れる。抵抗での電圧降下は
- 電池の起電力は、電球の電圧と抵抗の電圧降下の和に等しい。回路の式は 、つまり
- 測定値の電流を回路の式に入れて、電圧が測定値と合うものを探す。 では が で は となり、測定値の と合わない
- では が で、 は残りの 。測定値の と合う
- では が で は となり、測定値の と合わない。(1) の答えは 、
- (2) 抵抗は なので、
- 消費電力は なので、
ここで間違えやすい 電球の抵抗を、ほかの測定値から決めた一定の値(たとえば で から )として計算してしまうこと。電球の抵抗は、かかる電圧ごとに違う。
【発展】自由電子の運動から、オームの法則と抵抗率を導くとどうなるか
自由電子が電界から受ける力と、陽イオンから受ける抵抗力がつり合うと考えると、 となって電流が電圧に比例する。抵抗率は
長さ 、断面積 の導線の両端に電圧 をかけると、導線の中に強さ の電界ができ、自由電子は大きさ の力を受けます。一方、自由電子は陽イオンにさまたげられ、平均すると速さ に比例する抵抗力 ( は比例定数)を受けるとみなせます。2 つの力がつり合って一定の速さになるとすると なので、 です。これを に入れると となり、電流は電圧に比例します。 と比べると で、物理基礎で学んだ の抵抗率が と表せたことになります。温度が上がると陽イオンの熱運動が激しくなって が大きくなる、と考えれば、抵抗率の温度変化ともつながります。