電池の起電力と内部抵抗
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (3) ア (ア) ㋓「電気回路に関する実験などを行い,電気回路における基本的な法則を理解すること。」。
0. どういうまとまりか
ここまでの回路では、電池を「いつも決まった電圧を出すもの」として扱ってきました。
実際の電池は、電流を流すと、両端の電圧が少し下がります。電池そのものの中にも抵抗(内部抵抗)があるからです。
| 量 | 意味 | 式 |
|---|---|---|
| 起電力 | 電池が電位差をつくりだすはたらきの大きさ。電流が流れていないときの端子電圧 | 電池ごとに決まった値 |
| 内部抵抗 | 電池の内部にある抵抗 | 電池ごとに決まった値 |
| 端子電圧 | 電池の両極のあいだの、実際の電位差 | |
| 回路を流れる電流 | 外部に抵抗値 の抵抗をつないだとき |
分かれ目は次の 3 つ。
- 起電力と端子電圧は別のもの。電流を流すと、端子電圧は起電力より だけ小さくなる。等しいのは電流が 0 のときだけ
- 端子電圧 と電流 のグラフは右下がりの直線で、縦軸の切片が起電力 、傾きの大きさが内部抵抗
- 電流計は内部抵抗が小さいほど、電圧計は内部抵抗が大きいほど、つないだことによる回路の変化が小さい
1. 起電力・内部抵抗・端子電圧
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋓
内部抵抗のある電池は、「起電力 の、抵抗の無い電池」と「抵抗値 の抵抗」を直列につないだものと同じはたらきをします。こう置きかえれば、あとはこれまでの回路と同じに扱えます。
電池の起電力とは?
電池が、両極のあいだに電位差をつくりだすはたらきの大きさ。電流が流れていないときの両極間の電位差に等しい
単位はボルト()。電池の種類で決まり、つなぐ回路によって変わらない。
電池の内部抵抗とは? 回路を考えるときは、どう扱うか?
電池の内部にある抵抗。起電力 の抵抗の無い電池に、抵抗値 の抵抗が直列につながっているものとして扱う
電流は電池の中も通るので、電池の中でも電圧降下 が起こり、ジュール熱が発生する。
起電力 、内部抵抗 の電池から電流 が流れ出ているとき、端子電圧 は?
端子電圧は、電池の両極のあいだの実際の電位差。起電力から、内部抵抗での電圧降下 を引いたものになる。
電池の端子電圧が、起電力と等しくなるのはどんなときか?
電池に電流が流れていないとき()
で が 0 になる。電流を取り出しているあいだは、端子電圧は必ず起電力より小さい。
起電力 、内部抵抗 の電池に、抵抗値 の抵抗をつないだ。流れる電流 は?
内部抵抗 と外部の抵抗 が直列になっている。キルヒホッフの第 2 法則で 1 周すると 。端子電圧は外部の抵抗にかかる電圧 に等しい。
起電力 、内部抵抗 の電池に、ほかの電源から、正極から負極へ向かう向きの電流 を流しこんでいる(充電している)。このときの端子電圧 は?
。起電力より大きくなる
電流の向きが逆なので、内部抵抗での電圧降下の向きも逆になる。 は、電池が電流を送り出しているときの式である。
内部抵抗のある電池が電流 を流しているとき、電池が供給する電力 は、どこで消費されるか?
外部の抵抗で 、電池の内部抵抗で 。
の両辺に を掛けた式。内部抵抗で消費される分は電池の中で熱になり、外では使えない。
2. 起電力と内部抵抗の測定
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋓
起電力と内部抵抗は、電池につなぐ抵抗を変えながら端子電圧と電流を測ると、グラフから求められます。
電池の端子電圧 を縦軸、電流 を横軸にとったグラフは、どんな形になるか? 起電力 と内部抵抗 は、グラフのどこに現れるか?
右下がりの直線。縦軸の切片が起電力 、傾きの大きさが内部抵抗
は、 の一次関数である。 のとき で、 が 1 増えるごとに は ずつ減る。
電流が のとき端子電圧が 、電流が のとき端子電圧が だった。内部抵抗 と起電力 は、どう求めるか?
(電圧の減った分 ÷ 電流の増えた分)。求めた を に入れる
と の連立方程式を解いている。辺々を引くと が消える。
内部抵抗のある電池から取り出せる電流には、上限があるか?
ある。外部の抵抗を 0 に近づけても、電流は を超えない
で としたときの値。このとき端子電圧は 0 になる。実際に電池の両極を導線でじかにつなぐと、大きな電流が流れて発熱し、危険である。
使い古した電池で豆電球が暗くなるのは、主に、電池の何が変わったからか?
内部抵抗が大きくなったから。電流を流したときの端子電圧が大きく下がる
電流を流さずに測った電圧(ほぼ起電力)はあまり下がっていなくても、電流を取り出そうとすると の分だけ端子電圧が落ちる。
3. 電流計と電圧計の内部抵抗
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋓
電流計と電圧計にも内部抵抗があります。計器をつなぐと回路が少し変わるので、その変化が小さくなるようにつくられています。
電流計は、測りたい部分にどうつなぐか? 電流計の内部抵抗は、大きいほうがよいか小さいほうがよいか? その理由は?
直列につなぐ。内部抵抗は小さいほうがよい。直列に入れた電流計の抵抗の分だけ回路の抵抗が増え、流れる電流が減ってしまうから
内部抵抗が小さいほど、つなぐ前の電流に近い値が測れる。
電圧計は、測りたい部分にどうつなぐか? 電圧計の内部抵抗は、大きいほうがよいか小さいほうがよいか? その理由は?
並列につなぐ。内部抵抗は大きいほうがよい。電圧計のほうへ電流が分かれて流れ、測りたい部分の電圧が変わってしまうから
内部抵抗が大きいほど、電圧計へ分かれる電流が小さく、つなぐ前の電圧に近い値が測れる。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋓
問 1 起電力 、内部抵抗 の電池に、 の抵抗をつないだ。(1) 流れる電流を求めよ。(2) 電池の端子電圧を求めよ。
(1) (2)
方針 内部抵抗を、電池に直列につながった抵抗として扱う。電流は 、端子電圧は で求める。端子電圧は外部の抵抗にかかる電圧でもあるので、 で確かめられる。
- (1) 回路全体の抵抗は、外部の抵抗と内部抵抗の和で、
- 電流は から、
- (2) 内部抵抗での電圧降下は なので、
- 端子電圧は から、
- 確かめ。外部の抵抗にかかる電圧は で、一致する
ここで間違えやすい 端子電圧を起電力と同じ としてしまうこと。電流が流れているあいだは、内部抵抗での電圧降下の分だけ小さい。
問 2 ある電池につなぐ抵抗を変えて、端子電圧と電流を測った。電流が のとき端子電圧は 、電流が のとき端子電圧は であった。この電池の内部抵抗と起電力を求めよ。
内部抵抗 、起電力
方針 2 つの測定値はどちらも をみたす。グラフでいえば、2 点を通る直線の傾きの大きさが内部抵抗、縦軸の切片が起電力である。先に傾きから を出し、それを一方の式に入れて を求める。
- 電流の増えた分は、
- 端子電圧の減った分は、
- 内部抵抗は「電圧の減った分 ÷ 電流の増えた分」なので、
- 起電力は 。1 つ目の測定値を入れると、
- 確かめ。2 つ目の測定値を入れると、 で、一致する
問 3 ある電池に の抵抗をつなぐと の電流が流れ、 の抵抗につなぎかえると の電流が流れた。この電池の起電力と内部抵抗を求めよ。
起電力 、内部抵抗
方針 起電力 と内部抵抗 は、つなぐ抵抗を変えても変わらない。 の式を 2 つの場合について書き、連立方程式として解く。
- をつないだとき、
- をつないだとき、
- 手順 1 と手順 2 の右辺は等しいので、
- をまとめると なので、
- 手順 2 に入れると、 は
- 確かめ。手順 1 に入れると で、一致する
ここで間違えやすい 内部抵抗を考えずに を起電力としてしまうこと。これは端子電圧で、もう一方の場合の と合わない。端子電圧が電流によって変わるのが、内部抵抗のあるしるしである。
問 4 ある電池の端子電圧 と電流 の関係をグラフにしたところ、点(、)と点(、)を通る直線になった。(1) この電池の起電力と内部抵抗を求めよ。(2) この電池に の抵抗をつないだときの、電流と端子電圧を求めよ。(3) (2) のとき、外部の抵抗で消費される電力と、内部抵抗で消費される電力を求めよ。
(1) 起電力 、内部抵抗 (2) 電流 、端子電圧 (3) 外部の抵抗で 、内部抵抗で
方針 グラフの縦軸の切片が起電力、傾きの大きさが内部抵抗。それが分かれば、あとは と を使う。電力は、物理基礎で学んだ をそれぞれの抵抗に使う。
- (1) 電流が 0 のときの端子電圧が起電力なので、
- 電流が 増えるあいだに、端子電圧は 減っている。内部抵抗は
- (2) 回路全体の抵抗は なので、電流は
- 端子電圧は から、
- (3) 外部の抵抗で消費される電力は、
- 内部抵抗で消費される電力は、
- 確かめ。合わせて で、電池が供給する電力 の と一致する
問 5 起電力 の電池(内部抵抗は無視)に、 の抵抗 と の抵抗 を直列につないだ。(1) の両端の電圧を求めよ。(2) の両端に、内部抵抗 の電圧計をつないだ。電圧計の読みを求めよ。
(1) (2)
方針 電圧計は、内部抵抗と同じ値の抵抗として扱う。電圧計をつなぐと、 と電圧計が並列になって、その部分の抵抗が小さくなる。読みは、その並列部分にかかる電圧である。
- (1) 同じ抵抗値の 2 つの抵抗の直列なので、電圧は半分ずつにかかる。 の両端の電圧は
- (2) と電圧計の並列部分の合成抵抗は、
- 回路全体の抵抗は、
- 電池から流れる電流は、
- 並列部分にかかる電圧は、。これが電圧計の読み
ここで間違えやすい 電圧計をつないでも回路は変わらないと考えて、読みを としてしまうこと。電圧計の内部抵抗が、測りたい抵抗と比べて十分に大きくないと、読みは本来の値より小さくなる。
【発展】電流計や電圧計の測れる範囲を広げるには、どうするか(分流器と倍率器)
電流計には小さな抵抗(分流器)を並列につなぎ、電圧計には大きな抵抗(倍率器)を直列につなぐ。測れる範囲を 倍にするには、分流器は電流計の内部抵抗の 倍、倍率器は電圧計の内部抵抗の 倍の抵抗値にする
内部抵抗 の電流計で 倍の電流まで測るには、電流計に流れる分の 倍を分流器へ逃がします。並列では電圧が共通なので、流れる電流は抵抗値に反比例し、分流器の抵抗値は です。たとえば内部抵抗 の電流計の範囲を 10 倍にするには、 の分流器を並列につなぎます。内部抵抗 の電圧計で 倍の電圧まで測るには、電圧計にかかる分の 倍の電圧を倍率器に受けもたせます。直列では電流が共通なので、かかる電圧は抵抗値に比例し、倍率器の抵抗値は です。