電位
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (3) ア (ア) ㋑「電界と電位との関係を静電気力による位置エネルギーと関連付けて理解すること。」。
0. どういうまとまりか
重力がする仕事は通った道すじによらないので、重力による位置エネルギーが決められました。静電気力も同じ性質をもつ保存力なので、静電気力による位置エネルギーが決められます。
電界が「 あたりの力」だったのと同じように、 あたりの位置エネルギーを考えたものが電位です。
電界はベクトルで、足し合わせに手間がかかりました。電位は向きをもたない量(スカラー)なので、足し合わせはただの足し算です。そのかわり、符号を落とさないことが大事になります。
| 力の見方 | エネルギーの見方 | |
|---|---|---|
| 電荷 がもつ量 | 静電気力 | 静電気力による位置エネルギー |
| あたりの量 | 電界 (単位 ) | 電位 (単位 ) |
| 量の種類 | ベクトル(向きがある) | スカラー(向きがない。正負の符号はある) |
| 点電荷 のまわり | 強さ | (無限遠を基準) |
| 重ね合わせ | ベクトルの和 | 符号を付けたままの、ただの和 |
分かれ目は次の 3 つ。
- 電位の式には、電気量を符号ごと入れる。負の電荷のまわりの電位は負になる。電界の強さの式に大きさを入れたのとは扱いが違う
- 静電気力がする仕事は 、外力がゆっくり運ぶ仕事は 。「はじめ − あと」か「あと − はじめ」かを、誰がする仕事かで決める
- 電位は 、電界の強さは 。距離が 2 倍になると、電位は 倍、電界の強さは 倍になる
1. 静電気力による位置エネルギーと電位
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋑
位置エネルギーを決められるのは、力のする仕事が道すじによらないときだけです。静電気力はこの条件を満たします。
静電気力が保存力であるとは、どういうことか?
電荷を 2 点のあいだで動かすとき、静電気力のする仕事が、途中の道すじによらず、はじめの位置と終わりの位置だけで決まること
重力や弾性力と同じ性質である。この性質があるので、静電気力による位置エネルギーを決めることができ、力学的エネルギー保存の法則も使える。
電位とは何か。電位 の点に置いた電気量 の電荷がもつ、静電気力による位置エネルギー は?単位は?
電位は、その点に置いた の電荷がもつ、静電気力による位置エネルギー。。電位の単位はボルト(記号 V)で、
も も符号つきで入れる。電位は場所で決まる量で、そこに置く電荷にはよらない。
電位が高い場所に置いた負の電荷の位置エネルギーは、電位が低い場所に置いたときと比べて、大きいか小さいか?
小さい
で が負なので、 が大きいほど は小さくなる。負の電荷にとっては、電位の高いところが「エネルギーの低いところ」である。
電位の基準(電位 0 の場所)は、どう決めるか?
どこに選んでもよい。点電荷のまわりを考えるときは無限遠を、実用の電気回路などでは大地(地面)を、電位 0 の基準にすることが多い
意味をもつのは 2 点のあいだの電位の差(電位差、電圧)で、基準を変えても電位差は変わらない。電気器具を導線で大地につなぐことを接地(アース)といい、つないだ部分の電位は大地と同じになる。
2. 電位差と仕事
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋑
電位は、電荷を動かすときの仕事と結びつけて使います。仕事の式は、位置エネルギーの差を書きかえたものです。
電気量 の電荷が、電位 の点 A から電位 の点 B へ移動する。このあいだに静電気力がする仕事 は?
静電気力がする仕事は、位置エネルギーの減少ぶん に等しい。「はじめの電位 − あとの電位」の順である。途中の道すじにはよらない。
電気量 の電荷を、電位 の点 A から電位 の点 B へ、外力を加えてゆっくり運ぶ。外力がする仕事は?
ゆっくり運ぶとき、外力は静電気力とつり合っているので、外力がする仕事は静電気力がする仕事の符号を逆にしたもの。位置エネルギーの増加ぶん に等しい。「あとの電位 − はじめの電位」の順である。
静電気力だけを受けて静かに動きはじめる電荷は、電位の高いほうと低いほうのどちらへ動くか。正の電荷と負の電荷で答えよ。
正の電荷は電位の低いほうへ、負の電荷は電位の高いほうへ動く
どちらも、自分の位置エネルギー が減るほうへ動く。正の電荷は が下がると、負の電荷は が上がると、位置エネルギーが減る。
質量 、電気量 の荷電粒子が、静電気力だけを受けて運動する。電位 の点での速さを とすると、どんな保存の式が成り立つか?
一定(力学的エネルギー保存の法則)
静電気力は保存力なので、運動エネルギーと静電気力による位置エネルギーの和が保たれる。2 点 A、B について書けば 。
3. 点電荷のまわりの電位
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋑
点電荷のまわりの電位は、無限遠を基準にして 1 本の式で表せます。電界の式と形が似ているので、違いを並べて押さえます。
電気量 の点電荷から、距離 だけ離れた点の電位 は?基準はどこか?
。基準(電位 0)は無限遠
は符号ごと入れる。正の点電荷のまわりの電位は正で、近づくほど高い。負の点電荷のまわりの電位は負で、近づくほど低い。
複数の点電荷があるとき、ある点の電位はどう求めるか?
それぞれの点電荷が単独でその点につくる電位を、符号を付けたまま足し合わせる
電位はスカラーなので、向きを考える必要がない。成分に分ける手間がいらないぶん、電界より計算しやすい。正の電荷による電位と負の電荷による電位は、打ち消し合う。
点電荷のまわりの「電界の強さ」と「電位」は、距離 への依存のしかたと、量の種類がどう違うか?
電界の強さは で距離の 2 乗に反比例し、ベクトル。電位は で距離に反比例し、スカラー
電界の強さの式には電気量の大きさを入れて、向きは別に決める。電位の式には電気量を符号ごと入れる。分母の と を取り違えやすい。
同じ大きさの電気量をもつ 2 つの点電荷を結ぶ線分の中点で、電位と電界はどうなるか。2 つが異符号のときと同符号のときで答えよ。
異符号のとき: 電位は 0、電界は 0 でない。同符号のとき: 電界は 0、電位は 0 でない
電位は符号つきの和、電界はベクトルの和なので、打ち消し合う条件が違う。「電位が 0 なら電界も 0」「電界が 0 なら電位も 0」は、どちらも成り立たない。
電気量 、 の 2 つの点電荷が、距離 だけ離れている。無限遠を基準にした、静電気力による位置エネルギー は?
がつくる電位 の点に を置いたと考えて、 に入れたもの。同符号なら正(無限遠から近づけるのに外力の仕事が要る)、異符号なら負になる。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋑
以下、クーロンの法則の比例定数を とし、点電荷のまわりの電位は無限遠を基準とします。座標の単位は m です。
問 1 電位が の点 A と、電位が の点 B がある。(1) 電気量 の電荷が A から B へ移動するとき、静電気力がする仕事を求めよ。(2) 電気量 の電荷を、A から B へ外力を加えてゆっくり運ぶとき、外力がする仕事を求めよ。
(1) (2)
方針 静電気力がする仕事は 、外力がゆっくり運ぶ仕事は 。電気量は符号ごと入れる。
- (1) A と B の電位の差は
- 静電気力がする仕事は なので、
- (2) 外力がする仕事は 。 は 、電気量は
- 負の数どうしの積なので正になる。大きさは (1) と同じで、
ここで間違えやすい (2) を負としてしまうこと。負の電荷は、電位の高い A のほうへ引かれている。それに逆らって電位の低い B へ運ぶので、外力は正の仕事をする。
問 2 電気量 の点電荷 Q が固定されている。(1) Q から 離れた点 A の電位と、 離れた点 B の電位を求めよ。(2) 電気量 の点電荷を、B から A へ外力を加えてゆっくり運ぶ。外力がする仕事を求めよ。
(1) A は 、B は (2)
方針 点電荷のまわりの電位は 。外力がゆっくり運ぶ仕事は、「電気量 ×(あとの電位 − はじめの電位)」。
- (1) A の電位は
- B の電位は
- (2) はじめが B、あとが A。電位の差は
- 外力がする仕事は
ここで間違えやすい 電位を で計算してしまうこと。距離が 2 倍になると、電位は 倍になる( 倍になるのは電界の強さ)。
問 3 軸上の原点に電気量 の点電荷 A を、 の点に電気量 の点電荷 B を固定した。(1) の点の電位を求めよ。(2) A と B のあいだの 軸上で、電位が 0 になる点の 座標を求めよ。
(1) (2)
方針 電位はスカラーなので、A による電位と B による電位を、符号を付けたまま足す。向きは考えなくてよい。
- (1) の点は、A からも B からも 。電位の和は で、距離が等しいので、電気量を先に足してまとめられる。
- 値を入れると、
- (2) 求める点の座標を とする()。A からの距離は 、B からの距離は
- 電位の和が 0 になる条件は、
- 両辺を で割って移項すると、
- 分母を払うと、
- 展開して 。 について解くと
ここで間違えやすい 電位が 0 の点では電界も 0、と考えること。 の点では、A の電界も B の電界も 軸の正の向きで、電界は 0 にならない。
問 4 質量 、電気量 の小球を、電位 の点 A に静かに置いたところ、小球は静電気力だけを受けて動きはじめ、電位 の点 B を通過した。B を通過するときの小球の速さを求めよ。
方針 静電気力は保存力なので、力学的エネルギー保存の法則 一定 を使う。A では速さが 0 なので、位置エネルギーの減少ぶんが、そのまま B での運動エネルギーになる。
- A と B について、
- 運動エネルギーについて解くと、
- 電位の差は なので、右辺は
- なので、値を入れると
- 速さは
問 5 平面上の点 A と点 B に、それぞれ電気量 の点電荷を固定した。(1) 点 P の電位と、原点 O の電位を求めよ。(2) 電気量 の点電荷を、P から O へ外力を加えてゆっくり運ぶ。外力がする仕事を求めよ。
(1) P は 、O は (2)
方針 電位はスカラーなので、成分に分けずに、A による電位と B による電位をそのまま足す。A と B は電気量も P(または O)までの距離も等しいので、1 つぶんを 2 倍すればよい。
- (1) A から P までの距離は、三平方の定理から 。B から P までも同じ。
- P の電位は 。有効数字 2 桁で
- O は、A からも B からも 。O の電位は
- (2) はじめが P、あとが O。電位の差は、丸める前の値を使って
- 外力がする仕事は
ここで間違えやすい 電界のときと同じように成分に分けて、 を掛けてしまうこと。電位には向きがないので、成分は無い。同じ配置で電界を求めると 成分が打ち消し合うが、電位は打ち消し合わない。