鏡
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (2) ア (ウ) ㋐「光の伝わり方について理解すること。」。
0. どういうまとまりか
鏡は、反射を利用して像をつくります。使う法則は反射の法則 1 つだけです。
平面鏡は、鏡の向こう側に物体と同じ大きさの虚像をつくります。球面の一部を鏡にした球面鏡は、レンズと同じように焦点をもち、レンズと同じ形の写像公式が成り立ちます。
レンズと違うのは、光が鏡で折り返すので、実像が物体と同じ側にできることです。
このノートでは、鏡に対して物体のある側(光を反射する側)を「前方」、鏡の裏側を「後方」と呼びます。
物体から鏡までの距離を 、鏡から像までの距離を 、焦点距離を として、写像公式は です。
符号の約束は、次の表の 1 つに決めます。
| 量 | 正の値にするとき | 負の値にするとき |
|---|---|---|
| (物体までの距離) | 鏡の前方に物体がある(このノートではいつも正) | (扱わない) |
| (像までの距離) | 像が鏡の前方にできる(実像) | 像が鏡の後方にできる(虚像) |
| (焦点距離) | 凹面鏡 | 凸面鏡 |
鏡の種類と像の関係は次のとおりです。
| 鏡 | 物体の位置 | 像の種類 | 向き | 大きさ |
|---|---|---|---|---|
| 平面鏡 | どこでも | 虚像 | 正立 | 物体と同じ |
| 凹面鏡 | 焦点より外側 | 実像 | 倒立 | 位置によって変わる |
| 凹面鏡 | 焦点より内側 | 虚像 | 正立 | 物体より大きい |
| 凸面鏡 | どこでも | 虚像 | 正立 | 物体より小さい |
分かれ目は次の 3 つ。
- 光を集めるのは凹面鏡。レンズでは凸レンズが光を集めたが、鏡では凹面のほうである
- 実像は鏡の前方、虚像は鏡の後方。レンズとは前後が逆になる
- 凸面鏡の焦点距離は負の値として公式に入れる。凹レンズと同じ扱いである
1. 平面鏡
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋐
物体の 1 点から出て平面鏡で反射した光は、鏡の向こう側の 1 点から出たかのように広がって進みます。目は、その点に物体があるように受けとります。
平面鏡がつくる像は、どこに、どんな像としてできるか?
鏡の面に対して物体と対称な位置(鏡の後方で、鏡からの距離が物体と等しいところ)に、物体と同じ大きさの正立の虚像ができる
光が実際に鏡の後方へ進むわけではないので、虚像である。反射の法則(入射角と反射角が等しい)から導かれる。
2. 球面鏡の焦点
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋐
球面の一部を反射面にした鏡を球面鏡といいます。球面の中心(球心)と鏡の面の中心を結ぶ直線が光軸です。
凹面鏡と凸面鏡は、形と、光に対するはたらきがどう違うか?
凹面鏡は球面の内側が反射面で、光軸に平行な光を集める。凸面鏡は球面の外側が反射面で、光軸に平行な光を広げる
物体のある側から見て、面がへこんでいるのが凹面鏡、ふくらんでいるのが凸面鏡である。
凹面鏡の焦点と、凸面鏡の焦点は、それぞれどんな点か?
凹面鏡の焦点は、光軸に平行な光が反射したあとに集まる、鏡の前方の点。凸面鏡の焦点は、光軸に平行な光が反射したあと、そこから出たかのように広がっていく、鏡の後方の点
凸面鏡の焦点には、光は実際には集まらない。凹レンズの焦点と同じ考え方である。
球面鏡の焦点距離 の大きさは、球面の半径 とどんな関係にあるか?
(焦点は、球心と鏡の面の中心とのちょうど中間にある)
光軸の近くを通る光について成り立つ。凸面鏡では、写像公式に入れるときに負の符号を付けて とする。
3. 代表的な光線の進み方
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋐
レンズと同じように、反射したあとの進み方がすぐ分かる光線があります。このうち 2 本を追えば、像の位置が決まります。
凹面鏡で、反射後の進み方がすぐ分かる 3 本の光線とは?
①光軸に平行に進んできた光線は、反射後に焦点を通る ②焦点を通ってきた光線は、反射後に光軸に平行に進む ③球心を通ってきた光線は、反射後にもとの道を逆向きに戻る
③は、球心を通る直線が球面に垂直に当たる(入射角が になる)ためである。
凸面鏡で、反射後の進み方がすぐ分かる 3 本の光線とは?
①光軸に平行に進んできた光線は、鏡の後方の焦点から出たかのように反射する ②鏡の後方の焦点に向かって進んできた光線は、反射後に光軸に平行に進む ③鏡の後方の球心に向かって進んできた光線は、反射後にもとの道を逆向きに戻る
凸面鏡では焦点も球心も鏡の後方にあるので、光線は実際にはそこを通らない。
4. 写像公式と符号の約束
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋐
球面鏡でも、レンズと同じ形の式が成り立ちます。違うのは、どちら側の像を正とするかです。
球面鏡の写像公式と、像の倍率の式は?(物体から鏡までの距離 、鏡から像までの距離 、焦点距離 )
写像公式は 。倍率は
どちらもレンズの式と同じ形である。 を求めるときは、 を計算してから逆数をとる。
球面鏡の写像公式で、 と の符号はどう約束するか?
は、像が鏡の前方にできる実像なら正、後方にできる虚像なら負。 は、凹面鏡なら正、凸面鏡なら負
計算の結果 が正なら倒立の実像、負なら正立の虚像と読みとる。
実像ができる側は、レンズと鏡でどう違うか?
レンズでは、物体と反対側(後方)にできる。鏡では、物体と同じ側(前方)にできる
実像は光が実際に集まるところにできる。レンズでは光が通りぬけた先に、鏡では光が折り返した先に集まる。
5. 物体の位置と像
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋐
凹面鏡は凸レンズと、凸面鏡は凹レンズと、像のでき方がよく似ています。
凹面鏡の前方に物体を置くとき、焦点の外側と内側とで、像はどう違うか?
焦点の外側なら、鏡の前方に倒立の実像ができる。焦点の内側なら、鏡の後方に正立で物体より大きい虚像ができる
境目が焦点であることは、凸レンズと同じ。顔を近づけて使う拡大鏡は、焦点の内側での虚像を利用している。
凸面鏡の前方に物体を置くと、どんな像ができるか。この性質は何に利用されているか?
物体をどこに置いても、鏡の後方に、正立で物体より小さい虚像ができる。広い範囲が小さく映るので、道路のカーブミラーなどに利用されている
写像公式で が負なので、 は負にしかならない。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋐
符号の約束は、冒頭の表のとおりとします。
問 1 球面の半径が の凹面鏡がある。この鏡の前方 の光軸上に、物体を置いた。(1) 焦点距離を求めよ。(2) 像ができる位置と、像の種類を答えよ。(3) 倍率を求めよ。
(1) (2) 鏡の前方 に、倒立の実像 (3) 倍
方針 まず で焦点距離を求める。凹面鏡なので は正。写像公式に と を入れて を求め、符号から像の種類を読みとる。
- (1) 焦点距離は球面の半径の半分なので、
- 写像公式を について解くと、
- 、 を入れると、右辺は
- 逆数をとって 。(2) 正なので、鏡の前方 に倒立の実像ができる。
- (3) 倍率は 。値を入れると、 倍
ここで間違えやすい 球面の半径 を、そのまま焦点距離として公式に入れてしまうこと。
問 2 焦点距離 の凹面鏡の前方 の光軸上に、物体を置いた。(1) 像ができる位置と、像の種類を答えよ。(2) 倍率を求めよ。
(1) 鏡の後方 に、正立の虚像 (2) 倍
方針 物体が焦点の内側にあるので、虚像ができるはずである。写像公式にそのまま値を入れると、 が負になって出てくる。
- 写像公式から、
- 、 を入れると、右辺は
- 逆数をとって 。(1) 負なので、鏡の後方 に正立の虚像ができる。
- (2) 倍率は 。値を入れると、 倍
ここで間違えやすい が負のとき、像を鏡の「前方」と答えてしまうこと。鏡では、負の は鏡の後方(裏側)を表す。レンズとは前後が逆である。
問 3 球面の半径が の凸面鏡がある。この鏡の前方 の光軸上に、物体を置いた。(1) 像ができる位置と、像の種類を答えよ。(2) 倍率を求めよ。
(1) 鏡の後方 に、正立の虚像 (2) 倍
方針 焦点距離の大きさは半径の半分で、凸面鏡なので負の符号を付ける。あとは凹面鏡と同じ手順である。
- 焦点距離の大きさは 。凸面鏡なので
- 写像公式から、
- 、 を入れると、右辺は
- 逆数をとって 。(1) 負なので、鏡の後方 に正立の虚像ができる。
- (2) 倍率は 。値を入れると、 倍
ここで間違えやすい 焦点距離を正の のまま入れてしまうこと。そうすると となって、像が求まらなくなる。