レンズ
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (2) ア (ウ) ㋐「光の伝わり方について理解すること。」。
0. どういうまとまりか
レンズは、屈折を利用して光を集めたり広げたりする道具です。
像がどこに、どんな大きさでできるかは、代表的な 3 本の光線を追えば作図で求められ、写像公式を使えば計算で求められます。
このノートは図を持たないので、作図は光線の進み方を言葉で覚え、問題は写像公式で解きます。
扱うのは、厚さを無視できる薄いレンズ 1 枚です。
このノートでは、レンズに対して物体のある側を「前方」、反対側を「後方」と呼びます。
物体からレンズまでの距離を 、レンズから像までの距離を 、焦点距離を として、写像公式は です。
符号の約束は、次の表の 1 つに決めます。
| 量 | 正の値にするとき | 負の値にするとき |
|---|---|---|
| (物体までの距離) | レンズの前方に物体がある(このノートではいつも正) | (扱わない) |
| (像までの距離) | 像がレンズの後方にできる(実像) | 像がレンズの前方にできる(虚像) |
| (焦点距離) | 凸レンズ | 凹レンズ |
物体の位置と像の関係は次のとおりです( は焦点距離の大きさ)。
| レンズ | 物体の位置 | 像の種類 | 向き | 大きさ |
|---|---|---|---|---|
| 凸レンズ | 焦点距離の 2 倍より遠い | 実像 | 倒立 | 物体より小さい |
| 凸レンズ | 焦点距離のちょうど 2 倍 | 実像 | 倒立 | 物体と同じ |
| 凸レンズ | 焦点と、焦点距離の 2 倍の位置との間 | 実像 | 倒立 | 物体より大きい |
| 凸レンズ | 焦点の上 | 像はできない | ||
| 凸レンズ | 焦点より内側 | 虚像 | 正立 | 物体より大きい |
| 凹レンズ | どこでも | 虚像 | 正立 | 物体より小さい |
分かれ目は次の 3 つ。
- 凸レンズは、物体が焦点の外側なら実像、内側なら虚像。境目は焦点である
- 凹レンズの焦点距離は負の値として公式に入れる。正のまま入れると、凸レンズの答えになってしまう
- が負になったら虚像。計算の誤りではなく、像がレンズの前方(物体と同じ側)にできるという意味である
1. 凸レンズと凹レンズ
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋐
レンズの中心を通り、レンズの面に垂直な直線を光軸といいます。レンズの性質は、光軸に平行な光がレンズを通ったあとどう進むかで決まります。
凸レンズと凹レンズは、形と、光に対するはたらきがどう違うか?
凸レンズは中央が周辺より厚く、光軸に平行な光を集める。凹レンズは中央が周辺より薄く、光軸に平行な光を広げる
どちらも、レンズの面で光が屈折することを利用している。
凸レンズの焦点とは、どんな点か?
光軸に平行な光がレンズを通ったあとに集まる、光軸上の点
レンズの前方と後方に 1 つずつあり、レンズの中心からの距離はどちらも等しい。この距離を焦点距離という。
凹レンズの焦点とは、どんな点か?
光軸に平行な光がレンズを通ったあと、そこから出たかのように広がっていく、レンズの前方にある光軸上の点
光が実際に集まる点ではない。凹レンズにも前方と後方に 1 つずつ焦点があり、レンズの中心からの距離は等しい。
2. 代表的な光線の進み方
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋐
物体の 1 点から出た光は、いろいろな向きに進みます。そのうち、レンズを通ったあとの進み方がすぐ分かる光線が 3 本あります。このうち 2 本を追えば、像の位置が決まります。
凸レンズで、進み方がすぐ分かる 3 本の光線とは?
①光軸に平行に進んできた光線は、後方の焦点を通る ②レンズの中心を通る光線は、そのまま直進する ③前方の焦点を通ってきた光線は、光軸に平行に進む
①と③は、光の進む向きを逆にするとたがいに入れかわる関係にある。
凹レンズで、進み方がすぐ分かる 3 本の光線とは?
①光軸に平行に進んできた光線は、前方の焦点から出たかのように広がって進む ②レンズの中心を通る光線は、そのまま直進する ③後方の焦点に向かって進んできた光線は、光軸に平行に進む
中心を通る光線が直進することは、凸レンズと同じ。
3. 実像と虚像
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋐
像には 2 種類あります。違いは、光が実際にそこに集まっているかどうかです。
実像と虚像の違いは?
実像は、物体の 1 点から出た光が実際に 1 点に集まってできる像で、そこにスクリーンを置くと映る。虚像は、光が実際には集まっておらず、レンズを通った光がそこから出たかのように見える像で、スクリーンには映らない
虚像は、レンズをのぞきこんだときに見える。虫めがねで拡大して見える像は虚像である。
4. 写像公式と倍率
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋐
3 本の光線の作図から、物体・像・焦点の位置のあいだに成り立つ 1 つの式が導けます。符号の約束を守れば、凸レンズにも凹レンズにも、実像にも虚像にも、同じ式が使えます。
レンズの写像公式は?(物体からレンズまでの距離 、レンズから像までの距離 、焦点距離 )
距離そのものではなく、距離の逆数どうしの式である。 を求めるときは、 を計算してから逆数をとる。
写像公式 で、 と の符号はどう約束するか?
は、像がレンズの後方にできる実像なら正、前方にできる虚像なら負。 は、凸レンズなら正、凹レンズなら負
計算の結果 が正なら倒立の実像、負なら正立の虚像と読みとる。
レンズがつくる像の倍率(像の大きさが物体の大きさの何倍か)は、 と でどう表されるか?
が負(虚像)のときも、絶対値をとって倍率にする。倍率が 1 より大きければ拡大、小さければ縮小である。
5. 物体の位置と像
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋐
同じレンズでも、物体をどこに置くかで、像の種類・向き・大きさが変わります。凸レンズでは焦点が境目になります。
凸レンズの焦点の外側(レンズから焦点より遠いところ)に物体を置くと、どんな像ができるか?
レンズの後方に、倒立の実像ができる
写像公式で のとき が正になることに対応する。物体をレンズから遠ざけるほど、像は焦点に近づく。
凸レンズがつくる実像は、物体の位置によって大きさがどう変わるか?
物体が焦点距離の 2 倍の位置より遠ければ物体より小さく、ちょうど 2 倍の位置なら物体と同じ大きさ、それより近ければ(焦点の外側まで)物体より大きい
ちょうど 2 倍の位置では で、倍率が 1 になる。カメラは縮小の実像、プロジェクターは拡大の実像を使う。
凸レンズの焦点の内側(レンズと焦点の間)に物体を置くと、どんな像ができるか?
レンズの前方(物体と同じ側)に、正立で物体より大きい虚像ができる
虫めがねの使い方である。写像公式では が負になる。後方にスクリーンを置いても像は映らない。
凸レンズのちょうど焦点の位置に物体を置くと、像はどうなるか?
像はできない。物体の 1 点から出た光は、レンズを通ったあと平行に進むため
写像公式で とすると となり、 にあたる値が無い。
凹レンズの前方に物体を置くと、どんな像ができるか?
物体をどこに置いても、レンズの前方(物体と同じ側)に、正立で物体より小さい虚像ができる
写像公式で が負なので、 は負にしかならない。像は物体よりレンズに近いところにできる。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋐
符号の約束は、冒頭の表のとおりとします。
問 1 焦点距離 の凸レンズの前方 の位置に、物体を置いた。(1) 像ができる位置を求めよ。(2) 像は実像か虚像か、正立か倒立か。(3) 倍率を求めよ。
(1) レンズの後方 (2) 倒立の実像 (3) 倍
方針 写像公式に 、(凸レンズなので正)を入れて を求める。 の符号から像の種類が分かる。
- 写像公式を について解くと、
- 値を入れると、右辺は
- 逆数をとって 。(1) 正なので、像はレンズの後方 にできる。
- (2) が正なので、倒立の実像。
- (3) 倍率は 。値を入れると、 倍
ここで間違えやすい を求めたところで止まり、 と答えてしまうこと。最後に逆数をとる。
問 2 焦点距離 の凸レンズの前方 の位置に、物体を置いた。(1) 像ができる位置を求めよ。(2) 像は実像か虚像か、正立か倒立か。(3) 倍率を求めよ。
(1) レンズの前方 (2) 正立の虚像 (3) 倍
方針 物体が焦点の内側にあるので、虚像ができるはずである。写像公式にそのまま値を入れると、 が負になって出てくる。
- 写像公式から、
- 値を入れると、右辺は
- 逆数をとって 。(1) 負なので、像はレンズの前方(物体と同じ側) にできる。
- (2) が負なので、正立の虚像。
- (3) 倍率は 。値を入れると、 倍
ここで間違えやすい が負になったのを計算の誤りと考えて、符号を勝手に正に直してしまうこと。負は「虚像」を表している。
問 3 焦点距離の大きさが の凹レンズの前方 の位置に、物体を置いた。(1) 像ができる位置を求めよ。(2) 像は実像か虚像か、正立か倒立か。(3) 倍率を求めよ。
(1) レンズの前方 (2) 正立の虚像 (3) 倍
方針 凹レンズなので、焦点距離を負の値 として写像公式に入れる。あとは凸レンズと同じ手順である。
- 写像公式から、
- 、 を入れると、右辺は
- 逆数をとって 。(1) 負なので、像はレンズの前方 にできる。
- (2) が負なので、正立の虚像。
- (3) 倍率は 。値を入れると、 倍
ここで間違えやすい 焦点距離を正の のまま入れてしまうこと。そうすると問 1 と同じ式になり、凸レンズの答え(後方 の実像)が出てしまう。
問 4 ある凸レンズの前方 の位置に、高さ の物体を置いたところ、レンズの後方 の位置に置いたスクリーンに、はっきりした像が映った。(1) このレンズの焦点距離を求めよ。(2) スクリーン上の像の高さを求めよ。
(1) (2)
方針 スクリーンに映ったので実像であり、(正)である。写像公式に と を入れれば が求まる。像の高さは、物体の高さに倍率を掛ける。
- 、 を写像公式の左辺に入れると、
- これが に等しいので、(1)
- 倍率は 。値を入れると、 倍
- (2) 像の高さは、物体の高さの 倍なので、
- 確かめ。物体の位置 は、焦点距離 とその 2 倍の との間にある。倒立で拡大の実像ができる位置であり、結果と合う。
問 5 物体とスクリーンを 離して固定し、その間に凸レンズを置いた。レンズの位置を調整したところ、スクリーンに、物体の 倍の大きさのはっきりした像が映った。(1) 物体からレンズまでの距離を求めよ。(2) このレンズの焦点距離を求めよ。
(1) (2)
方針 分からない量は と の 2 つ。条件も「 と の和が 」と「倍率が 」の 2 つあるので、連立して求める。そのあと写像公式で を出す。
- スクリーンに映ったので実像で、 は正。物体とスクリーンの間にレンズがあるので、
- 倍率が なので 。つまり
- 1 の式に入れると 、つまり 。したがって、(1)
- から、像までの距離は
- 写像公式の左辺に入れると、
- これが に等しいので、(2)
ここで間違えやすい をそのまま や として公式に入れてしまうこと。 は物体から像までの距離で、 と の和である。