ヤングの実験
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (2) ア (ウ) ㋑「光の回折と干渉に関する実験などを行い,光の回折と干渉を光波の性質と関連付けて理解すること。」。
0. どういうまとまりか
2 つの波源から出た波が重なると、強め合うところと弱め合うところができます(「07 波の伝わり方」の水面波の干渉)。
ヤングの実験は、これを光でやってみせた実験です。近接した 2 本のスリットを通った光が、スクリーンに明暗のしま模様(干渉じま)をつくります。
水面波と同じ条件式が使え、違うのは、光の波長がとても短いので経路差を近似で求めるところです。
スリットの間隔を 、スリットからスクリーンまでの距離を 、光の波長を 、スクリーンの中央から測った位置を とします()。
| 条件 | スクリーン上の位置 | |
|---|---|---|
| 経路差 | ||
| 明線(強め合う) | ||
| 暗線(弱め合う) | ||
| 隣り合う明線の間隔 |
分かれ目は次の 3 つ。
- 経路差が波長の整数倍なら明線、半波長ずれていれば暗線。水面波の干渉と同じ条件である
- 明線の間隔は、波長 と距離 に比例し、スリットの間隔 に反比例する。 を広げると、しまは細かくなる
- 長さの単位を m にそろえてから式に入れる。 は mm、 は の桁、 は m と、桁がばらばらに与えられる
1. 実験のしくみ
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋑
光源の光を、まず 1 本のスリット(単スリット)に通し、次に近接した 2 本のスリット(複スリット)に通して、その先のスクリーンで観察します。
ヤングの実験で、スクリーンに明暗のしま模様ができるのはなぜか?
2 本のスリットを通った光がそれぞれ回折して広がり、スクリーン上で重なって干渉するから
2 本のスリットが、同じ振動をする 2 つの波源の役目をする。経路差によって、強め合うところ(明線)と弱め合うところ(暗線)が交互に並ぶ。
ヤングの実験で、複スリットの手前に単スリットを置くのは何のためか?
単スリットで回折した 1 つの光を 2 本のスリットに当てることで、2 本のスリットを通る光の振動をそろえる(同位相にする)ため
別々の光源から出た光どうしは、振動のそろい方がたえず変わるので、安定した干渉じまをつくらない。レーザー光は振動がよくそろっているので、単スリットが無くても干渉じまが見える。
ヤングの実験は、光についてどんなことを示したか?
光が波であること
干渉と回折は、波に特有の現象である。光が干渉じまをつくることが、光の波動性の証拠になった。
2. 経路差の求め方
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋑
スクリーン上の点 P が明るいか暗いかは、2 本のスリットから P までの距離の差(経路差)で決まります。この差は光の波長と同じくらいの小さな長さなので、近似を使って求めます。
ヤングの実験で、スクリーンの中央から の位置の点までの、2 本のスリットからの経路差は?(スリットの間隔 、スリットからスクリーンまでの距離 )
と が に比べて十分小さいときに成り立つ近似式である。実験では が 1 m 程度、 と が mm 程度なので、この条件を満たす。
ヤングの実験の経路差 は、どんな近似から出てくるか?
スリットから点 P へ向かう方向が光軸となす角を とすると、経路差は 。 が小さいので を で置きかえる
2 本のスリットから遠くの点 P へ向かう 2 本の光線は、ほぼ平行とみなせる。その 2 本の進む距離の差が である。
3. 明線と暗線の条件
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋑
2 本のスリットを通る光は同位相なので、水面波の 2 つの波源が同位相のときと同じ条件になります。
ヤングの実験で、スクリーン上に明線ができる条件と、暗線ができる条件は?()
明線は (経路差が波長の整数倍)。暗線は (経路差が波長の整数倍から半波長ずれる)
山と山が重なれば強め合い、山と谷が重なれば弱め合う。
ヤングの実験で、スクリーンの中央(2 本のスリットから等しい距離の点)は、明線か暗線か?
明線( の明線)
経路差が 0 なので、2 つの光はいつも同位相で重なり、強め合う。この明線を中心に、両側に対称に明線と暗線が並ぶ。
ヤングの実験で、中央から 番目の明線の位置 は?(中央の明線を とする)
明線の条件 を について解いた式。暗線は、隣り合う明線のちょうど中間にできる。
4. 明線の間隔
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋑
明線の位置の式で が 1 増えると、 は決まった長さだけ増えます。つまり、明線は等しい間隔で並びます。この間隔を測れば、光の波長が求められます。
ヤングの実験で、隣り合う明線の間隔 は?
隣り合う暗線の間隔も同じ値である。、、 を測れば、 から光の波長が分かる。
ヤングの実験で、①光の波長を長くする ②スリットの間隔を広げる ③スクリーンを遠ざける と、明線の間隔はそれぞれどうなるか?
①広がる ②せまくなる ③広がる
で、 と は分子に、 は分母にある。赤い光は青い光より波長が長いので、同じ装置なら赤い光のほうがしまの間隔が広い。
ヤングの実験の装置全体を、屈折率 の液体の中に入れると、明線の間隔はどうなるか?
倍になる(せまくなる)
液体の中では光の波長が になるので、 となる。
ヤングの実験を白色光で行うと、スクリーンにはどんな模様が見えるか?
中央の明線は白く、その両側の明線は色づいて見える。色づいた明線は、中央に近い側が紫、遠い側が赤になる
中央は、どの波長の光も経路差 0 で強め合うので白い。それ以外の明線の位置 は波長に比例するので、波長の短い紫ほど中央の近くにできる。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ウ)-㋑
問 1 間隔 の複スリットに、波長 の単色光を当て、スリットから 離れたスクリーンで干渉じまを観察した。隣り合う明線の間隔は何 mm か。
方針 明線の間隔の式 を使う。式に入れる前に、スリットの間隔を m に直しておく。
- は なので、 は
- に値を入れると、
- mm に直すと、
ここで間違えやすい を のまま入れてしまうこと。 と が m なので、 も m にそろえる。
問 2 間隔 の複スリットに単色光を当て、スリットから 離れたスクリーンで干渉じまを観察したところ、隣り合う明線の間隔は であった。この光の波長を求めよ。
方針 を波長について解いた を使う。 と の両方を m に直す。
- は 、 は
- の両辺に を掛けると、
- 値を入れると、
- 可視光線の波長の範囲( から )に入っている。
問 3 間隔 の複スリットに、波長 の単色光を当て、スリットから 離れたスクリーンで干渉じまを観察した。中央の明線を 0 番目として、(1) 3 番目の明線は、中央から何 mm の位置にできるか。(2) 中央の明線に最も近い暗線は、中央から何 mm の位置にできるか。
(1) (2)
方針 まず明線の間隔 を求める。 番目の明線は中央から の位置、中央に最も近い暗線は中央の明線と 1 番目の明線の中間、つまり の位置にある。
- は
- に値を入れると、。つまり
- (1) 3 番目の明線は、中央から間隔 3 つぶん離れている。
- (2) 中央に最も近い暗線は、暗線の条件で としたもの。位置は間隔の半分なので、
ここで間違えやすい (2) で、最も近い暗線を「1 番目」と考えて を入れてしまうこと。暗線の条件 は から始まる。
問 4 ある複スリットと単色光でヤングの実験を行ったところ、隣り合う明線の間隔は であった。次のように条件を 1 つだけ変えると、明線の間隔は何 mm になるか。(1) スリットの間隔を 2 倍にする。(2) スリットからスクリーンまでの距離を 1.5 倍にする。(3) 装置全体を屈折率 の液体の中に入れる。
(1) (2) (3)
方針 で、変えた量が分子にあるか分母にあるかを見る。分子の量を何倍かにすれば間隔も同じ倍になり、分母の量を何倍かにすれば間隔はその逆数倍になる。
- (1) は分母にある。 を 2 倍にすると、間隔は 倍。
- (2) は分子にある。 を 1.5 倍にすると、間隔も 1.5 倍。
- (3) 屈折率 の液体の中では、波長が 倍になる。 は分子にあるので、間隔も 倍。
ここで間違えやすい (1) で「スリットの間隔を広げたのだから、しまの間隔も広がる」と考えてしまうこと。スリットの間隔としまの間隔は、反比例の関係にある。
問 5 ヤングの実験で、スクリーン上の点 P までの、2 本のスリットからの経路差が であった。(1) 波長 の光を使うと、点 P は明線になるか、暗線になるか。(2) 波長 の光を使うと、点 P は明線になるか、暗線になるか。
(1) 暗線 (2) 明線
方針 経路差が波長の何倍にあたるかを計算する。整数倍なら明線、整数に を加えた倍なら暗線である。
- (1) 経路差を波長で割ると、
- は なので、暗線の条件で としたものにあたる。点 P は暗線。
- (2) 経路差を波長で割ると、
- は整数なので、明線の条件で としたものにあたる。点 P は明線。
- 同じ点でも、光の波長が変われば明暗が変わる。白色光で明線が色づくのは、このためである。