運動量保存の法則
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (1) ア (イ) ㋑「物体の衝突や分裂に関する実験などを行い,運動量保存の法則を理解すること。」。
0. どういうまとまりか
2 つの物体が衝突するとき、それぞれの運動量は変わります。ところが、2 つの運動量を足したものは、衝突の前後で変わりません。
衝突の間に物体どうしが及ぼしあう力は、作用・反作用の関係にあり、互いに逆向きで同じ大きさの力積を与えあうからです。
これが運動量保存の法則です。衝突の最中の力が分からなくても、前と後の速度を結びつけられます。
合体も分裂も、同じ 1 本の式で扱えます。
| 場面 | 式(一直線上。速度は符号つき) |
|---|---|
| 衝突 | |
| 合体(衝突後に一体となる) | |
| 分裂(速度 で進む物体が 2 つに分かれる) | |
| 静止した物体の分裂 | |
| 平面内の衝突 | 成分、 成分のそれぞれで上の式を立てる |
分かれ目は次の 3 つ。
- 保存されるのは運動量の和。1 つの物体だけを見れば、運動量は変わっている
- 成り立つのは、外力の力積が無視できるとき。内力は、どんな力でも和を変えない
- 正の向きを決めて、速度を符号つきで式に入れる。向きの分からない速度は文字のまま置き、答えの符号で向きを読む
1. 法則と、成り立つ条件
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(イ)-㋑
法則を使う前に、何を「ひとまとまり」と見るかを決めます。そのまとまりの外から力が働くかどうかで、使えるかどうかが決まります。
運動量保存の法則とは何か。一直線上で衝突する 2 物体について式で書くと?
物体どうしが力を及ぼしあうだけで、外から力積を受けなければ、運動量の和は変わらない。
左辺は衝突前、右辺は衝突後の運動量の和。速度は符号つきで入れる。
衝突で運動量の和が変わらないのは、なぜか?
2 物体が及ぼしあう力は作用・反作用の関係にあり、互いに逆向きで同じ大きさの力積を与えあうので、運動量の変化が打ち消しあうから
物体 1 の運動量の変化を とすると、物体 2 の変化は 。足すと 0 になる。
内力と外力とは、それぞれ何か?
内力は、注目している物体の集まり(物体系)の中で物体どうしが及ぼしあう力。外力は、物体系の外から受ける力
2 つの球の衝突なら、球どうしが押しあう力が内力、重力や床からの力が外力である。何を物体系と見るかで、内力と外力の区別は変わる。
運動量保存の法則が使えるのは、どんなときか?
物体系が外力を受けないとき、外力の和が 0 のとき、または、衝突や分裂の時間がきわめて短く、その間の外力の力積が無視できるとき
内力は、摩擦力でもばねの力でも爆発の力でも、運動量の和を変えない。条件に関わるのは外力だけである。
外力が、ある方向にだけ働いていない。運動量の和はどうなるか?
その方向の成分だけが保存される
例えば、なめらかな水平面上の物体系は、鉛直方向には重力と垂直抗力を受けるが、水平方向には外力を受けない。水平方向の運動量の和が保存される。
衝突する 2 物体のうち、片方だけに注目した。その物体の運動量は保存されるか?
保存されない。保存されるのは、2 物体の運動量の和である
片方だけを見れば、相手から受けた力は外力であり、その力積のぶんだけ運動量が変わる。
2. 一直線上の衝突・合体・分裂
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(イ)-㋑
一直線上では、ベクトルの向きを符号で表せます。符号の扱いさえ決めれば、衝突も合体も分裂も同じ手順で式になります。
一直線上の衝突で、運動量保存の式を立てる手順を順に言うと?
①正の向きを決める ②衝突前後の速度を、符号つきで書き出す ③「衝突前の運動量の和=衝突後の運動量の和」と書く
向きの分からない速度は、文字のまま(正の向きと仮定して)式に入れる。答えが負になれば、実際の向きは逆だったと読む。
速度 の質量 の物体と、速度 の質量 の物体が衝突して一体となった。合体後の速度 は?
から。合体後は 1 つの物体なので、未知の速度は 1 つだけで、運動量保存の式 1 本で決まる。
静止していた物体が、質量 と の 2 つに分裂した。分裂後の 2 つの速度の向きと、速さの比は?
互いに逆向きに進み、速さの比は質量の逆比
から 。軽いほうが速い。
速度 で進んでいた物体が、質量 と の 2 つに分裂した。運動量保存の式は?
左辺は分裂前の運動量で、0 ではない。静止からの分裂と違い、2 つが同じ向きに進むこともある。
3. 平面内の衝突
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(イ)-㋑
運動量はベクトルなので、平面内では矢印の足し算として保存されます。計算するときは、成分に分けます。
平面内での衝突では、運動量保存の法則をどう式にするか?
成分と 成分に分け、成分ごとに「衝突前の和=衝突後の和」の式を立てる
と、 成分についての同じ形の式の 2 本になる。速さ(大きさ)どうしを足してはいけない。
静止していた物体が、平面内で 2 つに分裂した。2 つの破片の進む向きには、どんな関係があるか?
互いに正反対の向きに進む(一直線上を逆向きに進む)
分裂後の運動量のベクトルの和が 0 でなければならないので、2 つの運動量は大きさが等しく逆向きになる。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(イ)-㋑
以下、水平面はなめらかで、物体系は水平方向に外力を受けないものとします。
問 1 右向きに速さ で進む質量 の台車が、静止している質量 の台車に衝突し、2 台は一体となって進んだ。一体となったあとの速度を求めよ。
右向きに
方針 合体するので、衝突後の速度は 1 つ。運動量保存の式 1 本で決まる。
- 右向きを正とする。衝突前の運動量の和は
- 一体となったあとの質量は 。速度を とすると、運動量は
- 運動量保存から
- は 。正なので右向き。
問 2 一直線上を、質量 の物体 A が右向きに速さ で、質量 の物体 B が左向きに速さ で進み、正面衝突した。衝突後、A は左向きに速さ で進んだ。衝突後の B の速度を求めよ。
右向きに
方針 右向きを正として、左向きの速度を負の値にして式に入れる。B の衝突後の速度は文字のまま置き、答えの符号で向きを読む。
- 右向きを正とする。衝突前の速度は、A が 、B が
- 衝突前の運動量の和は
- 衝突後の A の速度は 。B の速度を とすると、衝突後の運動量の和は
- 運動量保存から
- は 。正なので右向き。
- 確かめ。衝突後の和は で、衝突前と一致する。
ここで間違えやすい B の衝突前の速度を正の のまま入れてしまうこと。左向きなので である。
問 3 右向きに速さ で進んでいた質量 の物体が、内部のばねのはたらきで、質量 の部分 P と質量 の部分 Q に分裂した。分裂後、P は右向きに速さ で進んだ。分裂後の Q の速度を求めよ。
左向きに
方針 ばねの力は内力なので、分裂の前後で運動量の和は変わらない。分裂前の運動量は 0 ではないことに注意して式を立てる。
- 右向きを正とする。分裂前の運動量は
- 分裂後の P の運動量は
- Q の速度を とすると、運動量保存から
- は 。負なので左向き。
- 確かめ。分裂後の和は で、分裂前と一致する。
ここで間違えやすい 分裂だからといって、左辺を 0 にしてしまうこと。0 になるのは、分裂前に静止していたときだけである。
問 4 なめらかな水平面上( 平面)で、 軸の正の向きに速さ で進む質量 の物体と、 軸の正の向きに速さ で進む質量 の物体が衝突し、一体となった。一体となったあとの速度の 成分、 成分と、速さを求めよ。 とする。
成分 、 成分 、速さ ( 軸の正の向きから 軸の正の向きへ 回った向き)
方針 平面内なので、運動量保存の式を 成分と 成分に分けて立てる。一体となったあとの質量は、どちらの式でも 2 つの質量の和である。
- 一体となったあとの質量は 。速度の成分を 、 とする。
- 成分。衝突前に 方向の運動量をもつのは の物体だけなので、
- は
- 成分。衝突前に 方向の運動量をもつのは の物体だけなので、
- は
- 2 つの成分が等しいので、速さは成分の 倍。。向きは両軸のちょうど中間である。
ここで間違えやすい 衝突前の運動量の大きさ と をそのまま足して とし、 で割ってしまうこと。向きが違う運動量は、成分ごとに扱う。
問 5 なめらかな水平面上( 平面)で、質量 の球 A が 軸の正の向きに速さ で進み、静止していた質量 の球 B に衝突した。衝突後、A は 軸の正の向きに速さ で進んだ。衝突後の B の速度の 成分と 成分を求めよ。
成分 、 成分
方針 成分と 成分のそれぞれで運動量保存の式を立てる。衝突前は 方向の運動量が 0 なので、衝突後の 方向の運動量の和も 0 になる。
- 衝突後の B の速度の成分を 、 とする。
- 成分。衝突前の和は 。衝突後、A の速度の 成分は 0 なので、和は
- から、 は
- 成分。衝突前の和は 0。衝突後の和は
- から、 は
- 確かめ。 成分の和は で、衝突前と一致する。
ここで間違えやすい B の 成分を 0 としてしまうこと。A が 軸の正の向きの運動量をもったので、B は同じ大きさで負の向きの運動量をもつ。