はね返り係数
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (1) ア (イ) ㋒「衝突における力学的エネルギーの変化について理解すること。」。
0. どういうまとまりか
運動量保存の式は 1 本です。衝突後に 2 つの物体が別々に動くと、未知の速度が 2 つあるので、式が 1 本足りません。
足りない 1 本を与えるのがはね返り係数です。ボールがよくはずむか、はずまないかを、衝突の前後の速さの比で表します。
「近づく速さ」に対して「遠ざかる速さ」が何倍か、というのがその意味で、衝突する物体の材質の組み合わせで決まります。
| 場面 | 式 |
|---|---|
| 一直線上の 2 物体の衝突 | (遠ざかる速さ ÷ 近づく速さ) |
| 動かない床・壁への垂直な衝突 | (速さの比)。速度で書けば |
| 高さ から落として、高さ まではね上がる | |
| なめらかな面への斜めの衝突 | 面に平行な速度の成分は変わらない。面に垂直な成分は、向きが逆で大きさが 倍 |
| の値 | 衝突の呼び名 | 衝突後のようす |
|---|---|---|
| 弾性衝突 | 近づく速さと同じ速さで遠ざかる | |
| 非弾性衝突 | 近づく速さより遅く遠ざかる | |
| 完全非弾性衝突 | 遠ざからない(一体となる) |
分かれ目は次の 3 つ。
- 式のマイナスは、 を正にするためのもの。相対速度は衝突の前後で向きが逆になる
- 高さの比は でなく 。はね上がる高さは、速さの 2 乗に比例する
- 斜めの衝突で が効くのは、面に垂直な成分だけ。なめらかな面では、平行な成分はそのまま残る
1. はね返り係数の定義
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(イ)-㋒
衝突の前、2 つの物体は近づいています。衝突の後は、遠ざかります。その速さの比をとります。
はね返り係数(反発係数) とは何か?
衝突後に 2 物体が遠ざかる速さを、衝突前に 2 物体が近づく速さで割った値
。速さの比なので、単位は無い。
一直線上を速度 、 で進む 2 物体が衝突し、速度が 、 になった。はね返り係数 の式は?
分母は衝突前の、分子は衝突後の「物体 2 から見た物体 1 の相対速度」。分母と分子で、物体 1 と物体 2 の順番をそろえる。
はね返り係数の式 に、マイナスが付いているのはなぜか?
衝突の前後で相対速度の向きが逆になる(近づいていたものが遠ざかる)ので、 を正の値にするため
マイナスを忘れると、 が負になってしまう。連立方程式で使うときは、 の形にする。
はね返り係数 がとる値の範囲は?
衝突では、遠ざかる速さが近づく速さをこえないので、1 より大きくならない。 の値は、衝突する 2 物体の材質の組み合わせで決まる。
はね返り係数 の値によって、衝突を 3 つに呼び分けると?
は弾性衝突、 は非弾性衝突、 は完全非弾性衝突
のときは遠ざかる速さが 0 なので、2 物体は衝突後に同じ速度で一体となって進む。
2. 床や壁との衝突
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(イ)-㋒
相手が動かない床や壁なら、相手の速度は衝突の前後とも 0 です。式は、ボール 1 つの速さの比になります。
動かない床(または壁)に、物体が垂直に速さ で衝突し、速さ ではね返った。はね返り係数 は?
2 物体の式で、床の速度を衝突の前後とも 0 としたもの。衝突前に進んでいた向きを正として速度で書けば、 となる。
高さ から静かに落とした球が、床ではね返って高さ まで上がった。はね返り係数 を高さで表すと?
高さの比そのものではなく、その平方根である。逆に言えば、はね上がる高さは 。
床ではね返る球のはね返り係数が になるのは、なぜか?
床に衝突する直前の速さが 、直後の速さが で、その比をとるから
どちらも力学的エネルギーの保存(または )から出る。 で、 が消える。
球が床でくり返しはね返るとき、はね上がる最高点の高さは、1 回ごとにどう変わるか?
1 回はね返るごとに 倍になる
例えば なら、高さは毎回 倍になる。衝突直後の速さのほうは、毎回 倍である。
3. なめらかな面への斜めの衝突
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(イ)-㋒
斜めに当たるときは、速度を「面に平行な成分」と「面に垂直な成分」に分けます。はね返り係数が関わるのは片方だけです。
なめらかな面に、物体が斜めに衝突した。衝突の前後で、速度の成分はどう変わるか?
面に平行な成分は変わらない。面に垂直な成分は、向きが逆になり、大きさが 倍になる
衝突前の成分を (平行)、(垂直)とすると、衝突後は と である。
なめらかな面への斜めの衝突で、速度の面に平行な成分が変わらないのは、なぜか?
面がなめらかで摩擦力が無いので、物体が面から受ける力は面に垂直な向きだけであり、面に平行な向きの力積を受けないから
力積が 0 の方向では、運動量が変わらない。面があらい場合は、平行な成分も変わる。
なめらかな面に斜めに衝突した物体の速度が、面となす角は、衝突の前後でどう変わるか( のとき)?
衝突後のほうが小さくなる(面に沿う向きに寝る)。衝突前の角を 、衝突後の角を とすると
平行な成分はそのままで、垂直な成分だけが 倍に小さくなるからである。 のときだけ、角は等しい。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(イ)-㋒
問 1 球が水平な床に鉛直に速さ で衝突し、鉛直上向きに速さ ではね返った。球と床との間のはね返り係数を求めよ。
方針 床は動かないので、はね返り係数は、衝突直後の速さを衝突直前の速さで割ったものになる。
- 衝突直前の速さは 、衝突直後の速さは
- に入れると、
問 2 球を高さ のところから水平な床に静かに落としたところ、高さ まではね上がった。(1) 球と床との間のはね返り係数を求めよ。(2) 球がもう一度床に落ちてはね返ったとき、はね上がる高さを求めよ。
(1) (2)
方針 高さとはね返り係数の関係 を使う。2 回目は、1 回目にはね上がった高さから落ちてくるので、そこからさらに 倍になる。
- (1) に入れると、
- (2) はね上がる高さは、落ちはじめの高さの 倍。 は
- 2 回目は高さ から落ちるので、
ここで間違えやすい 高さの比 をそのままはね返り係数だと答えてしまうこと。高さの比は である。
問 3 一直線上を、物体 A が右向きに速さ で、物体 B がその前方を右向きに速さ で進んでいた。A が B に追突し、衝突後は A が右向きに速さ 、B が右向きに速さ になった。A と B の間のはね返り係数を求めよ。
方針 右向きを正として、衝突の前後の速度を に入れる。A を物体 1、B を物体 2 とし、分母と分子で順番をそろえる。
- 衝突前の相対速度は (A は B に で近づく)
- 衝突後の相対速度は (B は A から で遠ざかる)
- は
ここで間違えやすい 分子を 、分母を と、順番をそろえずにマイナスを付けてしまい、 が負になること。「遠ざかる速さ ÷ 近づく速さ」で確かめるとよい。
問 4 一直線上を、質量 の物体 A が右向きに速さ で、質量 の物体 B が左向きに速さ で進み、正面衝突した。A と B の間のはね返り係数は である。衝突後の A、B の速度をそれぞれ求めよ。
A は左向きに 、B は右向きに
方針 未知の速度が 2 つあるので、運動量保存の式とはね返り係数の式の 2 本を連立させる。右向きを正とし、衝突後の速度は文字のまま置く。
- 右向きを正とする。衝突前の速度は、A が 、B が 。衝突後の速度を、A は 、B は とする。
- 衝突前の運動量の和は
- 運動量保存の式は …①
- 衝突前の相対速度は
- はね返り係数の式 の右辺は 。よって …②
- ②から 。これを①に入れると
- から 。正なので右向き。
- ②に戻すと 。負なので左向き。
- 確かめ。運動量の和は 。遠ざかる速さは で、近づく速さ の 倍になっている。
ここで間違えやすい 近づく速さを としてしまうこと。B は左向きなので速度は で、向かいあって近づく速さは である。
問 5 なめらかな水平な床に、小球が斜めに衝突した。衝突直前の速度は、床に平行な成分が 、床に垂直な成分が下向きに であった。小球と床との間のはね返り係数は である。(1) 衝突直後の速度の、床に平行な成分と垂直な成分を求めよ。(2) 衝突直後の速さを求めよ。 とする。
(1) 床に平行な成分 、床に垂直な成分は上向きに (2)
方針 床がなめらかなので、床に平行な成分は変わらない。床に垂直な成分だけが、向きを逆にして 倍になる。速さは 2 つの成分から三平方の定理で求める。
- (1) 床に平行な成分は、衝突の前後で変わらず
- 床に垂直な成分は、向きが上向きに変わり、大きさは
- (2) 速さの 2 乗は
- 速さは
ここで間違えやすい 衝突直前の速さ 全体に を掛けて としてしまうこと。 が掛かるのは、床に垂直な成分だけである。