運動量と力積
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (1) ア (イ) ㋐「運動量と力積との関係について理解すること。」。
0. どういうまとまりか
バットでボールを打つときのように、短い時間に大きな力が働く現象では、力がどう変化したかを細かく追えません。
それでも、「力を受ける前と後で、運動がどれだけ変わったか」は言えます。そのための量が運動量と力積です。
運動量は運動の勢いを、力積は力が時間をかけて及ぼした効果を表します。物体の運動量の変化は、受けた力積に等しくなります。
どちらも向きをもつ量(ベクトル)なので、符号や向きの扱いがこのノートの中心です。
| 量 | 式 | 向き | 単位 |
|---|---|---|---|
| 運動量 | 速度と同じ向き | ||
| 力積 | 力と同じ向き | ||
| 2 つの関係 | 運動量の変化の向き = 力積の向き | と は同じ単位 |
分かれ目は次の 3 つ。
- 運動量も力積もベクトル。一直線上の運動では、正の向きを決めて符号つきで書く。はね返ったあとの速度は負になる
- 運動量の変化は「あと − まえ」。はね返る球では、速さの差でなく和が出てくる
- 運動量と運動エネルギーは別の量。運動量を変えるのは力積(力 × 時間)、運動エネルギーを変えるのは仕事(力 × 距離)
1. 運動量
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(イ)-㋐
同じ速さでも、重い物体ほど止めにくく、同じ質量でも速いほど止めにくい。この「運動の勢い」を、質量と速度の積で表します。
運動量とは何か。質量 、速度 の物体の運動量の式・向き・単位は?
。速度と同じ向きをもつベクトルで、単位は
例えば、質量 の物体が で進んでいれば、運動量の大きさは 。
一直線上の運動で、運動量の向きはどう表すか?
正の向きを決め、その向きの運動量を正、逆向きの運動量を負として、符号で表す
右向きを正とすると、左向きに速さ で進む質量 の物体の運動量は である。
運動量 と運動エネルギー は、量としてどう違うか?
運動量は向きをもつ量(ベクトル)、運動エネルギーは向きをもたない量(スカラー)
同じ速さで逆向きに進む 2 つの同じ物体は、運動エネルギーは等しいが、運動量は符号が逆で、等しくない。
2. 力積
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(イ)-㋐
力がどれだけ運動を変えるかは、力の大きさだけでなく、力が働いた時間の長さにもよります。
力積とは何か。一定の力 が時間 だけ働いたときの力積の式・向き・単位は?
。力と同じ向きをもつベクトルで、単位は
力と、力が働いた時間の積である。小さな力でも長い時間働けば、力積は大きくなる。
力積の単位 と、運動量の単位 は、同じ単位か?
同じ単位である
なので、これに を掛けると になる。だから運動量の変化と力積を等号で結べる。
力の大きさが時間とともに変わるとき、力積の大きさはどう求めるか?
力 と時間 の関係を表すグラフ(- グラフ)と、 軸とで囲まれた部分の面積
力が一定なら長方形の面積 になる。衝突のときの力は山の形に変化するので、その山の面積が力積である。
衝突のときの「平均の力」とは、何を指すか。力積の大きさを 、力が働いた時間を として、式は?
同じ時間に同じ力積を与える、一定の力のこと。
- グラフでいえば、山の面積と同じ面積で、横幅が同じ長方形の高さにあたる。
3. 運動量の変化と力積
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(イ)-㋐
運動量と力積は、運動方程式を通して等号で結ばれます。これがこのフォルダ全体の出発点です。
物体の運動量の変化と、その間に物体が受けた力積との関係は?
運動量の変化は、受けた力積に等しい。
左辺は「あとの運動量 − まえの運動量」。力が変化するときは、右辺を平均の力と時間の積、または - グラフの面積に読みかえる。
運動量の変化が力積に等しいことは、何から導かれるか?
運動方程式 に、加速度 を入れ、両辺に を掛ける
から 。新しい法則ではなく、運動方程式を「時間をかけた効果」の形に書きかえたものである。
質量 の球が、壁に垂直に速さ で当たり、速さ ではね返った。球が壁から受けた力積の大きさと向きは?
大きさは 、向きは壁から離れる向き
はじめに進んでいた向きを正とすると、あとの速度は 。運動量の変化は で、負なので壁から離れる向き。 としない。
平面内で、物体の速度の向きが変わった。受けた力積は、どう求めるか?
あとの運動量のベクトルから、まえの運動量のベクトルを引く。または、 成分と 成分に分けて、成分ごとに「あと − まえ」を求める
運動量の大きさどうしを引き算してはいけない。速さが変わらなくても、向きが変われば運動量は変化していて、力積を受けている。
同じだけ運動量を変化させるとき、力が働く時間を長くすると、受ける力の大きさはどうなるか?
小さくなる
力積 が同じなら、 が大きいほど は小さい。着地のときにひざを曲げる、クッションで受け止める、などは時間をのばして力を小さくしている。
物体の運動量を変えるものと、運動エネルギーを変えるものは、それぞれ何か?
運動量を変えるのは力積(力 × 時間)、運動エネルギーを変えるのは仕事(力 × 力の向きに動いた距離)
どちらも運動方程式から出てくるが、力を「時間」で積み上げるか「距離」で積み上げるかが違う。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(イ)-㋐
問 1 なめらかな水平面上に静止している質量 の物体に、水平に の一定の力を の間加えた。(1) 物体が受けた力積の大きさを求めよ。(2) 力を加え終わったときの物体の速さを求めよ。
(1) (2)
方針 力が一定なので、力積は 。はじめ静止していたので、受けた力積がそのまま、あとの運動量になる。
- 力の向きを正とする。(1) 力積は
- まえの運動量は 0 なので、
- (2) は
問 2 質量 のボールが、水平に速さ で飛んできた。これをバットで打ち返すと、ボールは逆向きに速さ で水平に飛んでいった。(1) ボールがバットから受けた力積の大きさと向きを求めよ。(2) ボールとバットが触れていた時間が のとき、ボールが受けた平均の力の大きさを求めよ。
(1) 、打ち返されたあとにボールが飛んでいく向き (2)
方針 はじめにボールが飛んできた向きを正とし、あとの速度を負の値にして「あと − まえ」を計算する。平均の力は、力積を時間で割る。
- はじめに飛んできた向きを正とする。まえの速度は 、あとの速度は
- 運動量の変化は
- (1) これが受けた力積に等しい。大きさは 。負なので、はじめの向きと逆、つまり打ち返されたあとに飛んでいく向きである。
- (2) 平均の力の大きさは 。有効数字 2 桁で
ここで間違えやすい 速さの差をとって としてしまうこと。向きが逆になっているので、運動量の変化の大きさは速さの和に質量を掛けたものになる。
問 3 静止していた質量 の球を打った。球が受けた力の大きさは、打ちはじめの 0 から の間に まで一定の割合で増え、続く の間に一定の割合で 0 まで減った。力の向きは変わらなかった。(1) 球が受けた力積の大きさを求めよ。(2) 打たれた直後の球の速さを求めよ。(3) 球が受けた平均の力の大きさを求めよ。
(1) (2) (3)
方針 力が変化するので、力積は - グラフの面積で求める。グラフは底辺 、高さ の三角形になる。
- 力が働いた時間は、あわせて
- (1) 三角形の面積は
- (2) はじめ静止していたので、あとの運動量が力積に等しい。速さは
- (3) 平均の力は、力積を時間で割って 。有効数字 2 桁で
ここで間違えやすい 力の最大値 にそのまま時間を掛けてしまうこと。それは長方形の面積で、実際の力積の 2 倍になる。
問 4 なめらかな水平面上( 平面)を、質量 の球が 軸の正の向きに速さ で進んでいた。短い時間だけ力を受けたあと、球は 軸の正の向きに速さ で進んだ。球が受けた力積の 成分、 成分と、力積の大きさを求めよ。
成分 、 成分 、大きさ
方針 向きが変わっているので、運動量を成分に分け、成分ごとに「あと − まえ」を計算する。大きさは、2 つの成分から三平方の定理で求める。
- まえの運動量は、 成分が 、 成分が 0
- あとの運動量は、 成分が 0、 成分が
- 力積の 成分は
- 力積の 成分は
- 力積の大きさは
ここで間違えやすい 運動量の大きさどうしを引いて としてしまうこと。運動量はベクトルなので、向きが違うものは成分ごとに引く。
問 5 質量 の台車が、速さ で水平に進んできて、壁に当たって止まった。当たってから止まるまでの時間が、(1) 台車の先端がかたくて だった場合と、(2) 先端にばねが付いていて だった場合について、台車が壁から受けた平均の力の大きさをそれぞれ求めよ。
(1) (2)
方針 どちらの場合も、運動量の変化(受けた力積)は同じ。違うのは時間だけなので、平均の力は時間に反比例する。
- はじめの運動量の大きさは 。止まるので、あとの運動量は 0
- 受けた力積の大きさは、どちらも (向きは、はじめに進んでいた向きと逆)
- (1) 平均の力は 。有効数字 2 桁で
- (2) 平均の力は
- 時間が 20 倍になると、力は 20 分の 1 になっている。