粒子の波動性
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (4) ア (ア) ㋑「電子や光の粒子性と波動性について理解すること。」。
0. どういうまとまりか
光電効果とコンプトン効果は、波だと思っていた光が、粒子としてもふるまうことを示しました。
ド・ブロイは逆に、粒子だと思っていた電子も、波としてふるまうのではないかと考えました。
この波を物質波(ド・ブロイ波)といいます。予想は、電子の流れ(電子線)を結晶に当てると回折が起こる、という実験で確かめられました。
光も電子も、粒子の性質と波の性質をあわせもちます。これを粒子と波動の二重性といいます。
プランク定数を とします。粒子としての量(エネルギー・運動量)と、波としての量(振動数・波長)を、 が結びます。
| 粒子としての量 | 波としての量 | 2 つを結ぶ式 | |
|---|---|---|---|
| 光(光子) | エネルギー 、運動量 | 振動数 、波長 | 、 |
| 電子などの粒子 | 運動量 | 波長 |
| 波動性が現れる現象 | 粒子性が現れる現象 | |
|---|---|---|
| 光・X 線 | 干渉、回折(ヤングの実験、X 線回折) | 光電効果、コンプトン効果 |
| 電子 | 電子線回折 | 電荷と質量をもつ粒として 1 個ずつ数えられる(比電荷と電気素量の測定) |
分かれ目は次の 3 つ。
- 物質波の波長は、運動量が大きいほど短い。速い粒子ほど、重い粒子ほど、波長は短くなる
- 加速電圧 から波長を出すときは、速さを経由せず、運動量 を直接つくる
- 目に見える大きさの物体にも物質波の式は当てはまるが、波長が短すぎて波の性質は現れない
1. 物質波
根拠: 学習指導要領 物理-(4)-ア-(ア)-㋑
光子の運動量は でした。ド・ブロイは、この関係が電子のような粒子にもそのまま成り立つと考えました。
物質波(ド・ブロイ波)とは何か?
電子などの粒子が、波としてふるまうときの波
光が粒子の性質をもつなら、粒子も波の性質をもつはずだ、という考えから予想された。電子に限らず、陽子、中性子、原子などにも当てはまる。
質量 、速さ の粒子の、物質波の波長 を表す式は?
は粒子の運動量。光子の運動量の式 を、波長について解いたものと同じ形をしている。
質量 の粒子の運動エネルギーが のとき、運動量の大きさ を と で表すと?
の両辺に を掛けると になる。エネルギーから波長を求めるときは、この形で運動量をつくると速い。
静止していた電子(質量 、電荷の大きさ )を電圧 で加速した。物質波の波長 を表す式は?
加速された電子の運動エネルギーは なので、運動量は 。これを に入れる。
電子を加速する電圧を大きくすると、物質波の波長はどうなるか?
短くなる。波長は に反比例する
電圧を 4 倍にすると、波長は 倍になる。 そのものに反比例するのではない(X 線の最短波長 は に反比例する。取り違えやすい)。
投げたボールのような、目に見える大きさの物体で、波の性質が観察されないのはなぜか?
質量が大きいので運動量が大きく、物質波の波長が極端に短くなるから
波の性質(回折や干渉)がはっきり現れるのは、波長がすき間や障害物の大きさと同じくらいのとき。ボールの波長は原子の大きさよりはるかに短く、回折を起こすものが無い。
2. 電子線回折
根拠: 学習指導要領 物理-(4)-ア-(ア)-㋑
波であることを確かめるには、回折や干渉を見ればよい。これは X 線のときと同じ考え方で、使う道具も同じ結晶です。
電子線回折とは何か。何の証拠になるか?
電子線を結晶や薄い金属の膜に当てると、X 線を当てたときと同じような回折の模様ができる現象。電子が波の性質をもつことの証拠
回折は波に特有の現象である。デビッソンとガーマー、G.P.トムソン、菊池正士らの実験で確かめられた。
電子線の回折に、結晶が使われるのはなぜか?
数十 V から数百 V で加速した電子の物質波の波長が、結晶の中で原子が並ぶ間隔と同じくらいになるから
X 線のときと同じく、結晶が回折格子の役目をする。人がつくった回折格子では、間隔が広すぎて回折が見えない。
電子線を結晶に当てたとき、反射した電子線が強め合う条件は?
X 線と同じブラッグの条件 。 に物質波の波長 を入れる
は格子面の間隔、 は格子面と電子線のなす角、。実験で求めた波長が と一致したことで、ド・ブロイの予想が確かめられた。
電子顕微鏡が、光学顕微鏡より細かいものを見分けられるのはなぜか?
電子線の波長が、可視光の波長よりはるかに短いから
顕微鏡は、使う波の波長より細かいものを、回折のために見分けられない。電子は加速電圧を上げれば波長を短くできる。電子線は、ガラスのレンズの代わりに電界や磁界で曲げて集める。
3. 粒子性と波動性の二重性
根拠: 学習指導要領 物理-(4)-ア-(ア)-㋑
光も電子も、「粒子か波か」のどちらか一方に決めることはできません。現象によって、どちらの性質が表に出るかが変わります。
粒子と波動の二重性とは何か?
光も電子も、粒子の性質と波の性質の両方をあわせもつこと
伝わるときには波としてふるまい(干渉・回折)、物質とエネルギーをやりとりするときには粒子としてふるまう(1 個、2 個と数えられる)。
光について、波動性を示す現象と、粒子性を示す現象を挙げよ。
波動性は干渉と回折(ヤングの実験、回折格子、X 線回折)。粒子性は光電効果とコンプトン効果
偏光も波(横波)としての性質である。光電効果は光子のエネルギー を、コンプトン効果は光子の運動量 を示す。
電子について、粒子性を示す事実と、波動性を示す現象を挙げよ。
粒子性は、決まった電荷 と質量 をもち、1 個ずつ数えられること。波動性は電子線回折
比電荷の測定やミリカンの実験は、電子を粒子として扱って成り立っている。同じ電子が、結晶に当てると波として回折する。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(4)-ア-(ア)-㋑
以下、プランク定数を 、電子の質量を 、電気素量を とします。
問 1 速さ で進む電子の、物質波の波長を求めよ。
方針 質量と速さが分かっているので、運動量 を求めて に入れる。
- 運動量は 。値を入れると、
- に値を入れると、
問 2 質量 のボールが、速さ で飛んでいる。(1) 物質波の波長を求めよ。(2) 原子の大きさはおよそ である。このボールで波の性質が観察できない理由を述べよ。
(1) (2) 波長が原子の大きさと比べても桁違いに短く、回折や干渉を起こさせるすき間や障害物が存在しないから
方針 電子と同じ式 がそのまま使える。(2) は、回折が目立つのは波長とすき間の大きさが同じくらいのとき、という波の性質と比べる。
- (1) 運動量は 。値を入れると、
- に値を入れると、
- (2) この波長は、原子の大きさ の、さらに 分の 1 ほどしかない
- 回折や干渉がはっきり現れるのは、すき間や障害物の大きさが波長と同じくらいのときである。そのような小さなものは無いので、波の性質は観察できない
問 3 (1) 静止していた電子を の電圧で加速した。物質波の波長を求めよ。(2) 加速電圧を にすると、波長はいくらになるか。
(1) (2)
方針 加速された電子の運動エネルギーは 。運動量は でつくれるので、 に入れる。(2) は計算し直さず、波長が に反比例することを使う。
- (1) 根号の中は 。値を入れると、
- 平方根を取りやすいように、10 の指数を偶数にそろえる。
- なので 。したがって運動量は
- に値を入れると、
- (2) 電圧は 倍。波長は に反比例するので、 倍になる
ここで間違えやすい (2) で、波長が電圧に反比例すると考えて 倍にしてしまうこと。電圧に比例するのは運動エネルギーで、運動量はその平方根に比例する。
問 4 陽子(質量 、電荷 )と α 粒子(質量 、電荷 )を、どちらも静止した状態から同じ電圧 で加速した。α 粒子の物質波の波長は、陽子の物質波の波長の何倍か。 とする。
倍(約 倍)
方針 波長は運動量に反比例するので、2 つの粒子の運動量を比べる。運動量は、質量と運動エネルギーから でつくる。電荷が違うので、同じ電圧でも得る運動エネルギーが違うことに注意する。
- 電荷 の粒子が電圧 で加速されて得る運動エネルギーは 。陽子は 、α 粒子は
- 陽子の運動量は
- α 粒子の運動量は
- 波長の比は運動量の比の逆なので、
- 値にすると、 倍
ここで間違えやすい 質量だけを比べて 倍としてしまうこと。α 粒子は電荷も 2 倍なので、得る運動エネルギーも 2 倍になる。
問 5 格子面の間隔が の結晶に、速さのそろった電子線を当てた。格子面と電子線のなす角を から少しずつ大きくしていくと、 のときに最初の強い反射が起こった。(1) 電子の物質波の波長を求めよ。(2) 電子の速さを求めよ。 とする。
(1) (2)
方針 電子線回折にも、X 線と同じブラッグの条件 が使える。最初の強い反射なので 。波長が分かれば、 を について解いて速さが出る。
- (1) として
- 値を入れると、
- (2) を について解くと
- 分母は
- 値を入れると、