等速円運動
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (1) ア (ウ) ㋐「円運動をする物体の様子を表す方法やその物体に働く力などについて理解すること。」。
0. どういうまとまりか
円周上を一定の速さで回る運動が等速円運動です。速さは一定でも、速度の向きが変わり続けるので、加速度があり、力を受けています。
このノートでは、まず回り方を表す量(角速度・周期・回転数)をそろえ、次に加速度(向心加速度)を、最後に力(向心力)と運動方程式の立て方を扱います。
半径 の円周上を、速さ 、角速度 で等速円運動をする質量 の物体について、量と式は次のとおりです。
| 量 | 記号と単位 | 式 |
|---|---|---|
| 角速度 | [rad/s] | |
| 速さ | [m/s] | |
| 周期 | [s] | |
| 回転数 | [Hz] | |
| 向心加速度 | [m/s²] | (円の中心の向き) |
| 向心力 | [N] | (円の中心の向き) |
分かれ目は次の 3 つ。
- 速さは一定でも、速度は一定ではない。速度の向きが変わるので加速度があり、その向きは円の中心を向く
- 向心力は「新しい種類の力」ではない。張力・摩擦力・重力・垂直抗力など、実際に受けている力の合力のこと。力を挙げるときに、向心力を 1 つ余分に数えない
- と は同じ量の 2 つの書き方。角速度が分かっているときは前者、速さが分かっているときは後者を使う
このノートでは、周期を と書くので、糸の張力の大きさは と書きます。
1. 角度と角速度
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ウ)-㋐
円運動では、進んだ距離の代わりに「どれだけ回ったか」を角で表します。角の単位にラジアンを使うと、弧の長さと角が掛け算 1 つで結べます。
弧度法では、角の大きさをどう表すか?
半径 の円で、弧の長さが になる中心角を とする。単位はラジアン(rad)
弧の長さが半径と等しいときの中心角が 。1 回転は 、半回転()は である。
等速円運動の角速度とは何か? 式と単位は?
単位時間あたりの回転角。時間 の間に角 だけ回るとき 。単位は rad/s(ラジアン毎秒)
等速円運動では角速度は一定。直線運動の「速さ」にあたる量を、回転の角で数えたものである。
半径 の等速円運動で、速さ と角速度 の関係は?
時間 の間に進む弧の長さは 。これを で割ると速さになる。角をラジアンで測っているから、この形になる。
等速円運動をする物体の速度の向きは? 速度は一定といえるか?
速度の向きは、その点での円の接線の向き。速さは一定だが、向きが変わり続けるので速度は一定ではない
速度は大きさと向きをもつ量である。向きが変われば、大きさが同じでも速度は変化している。
2. 周期と回転数
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ウ)-㋐
回る速さは、「1 回転にかかる時間」でも「1 秒間に回る回数」でも表せます。どちらも角速度に直せるようにしておきます。
等速円運動の周期とは何か? 速さ 、角速度 で表すと?
1 回転するのにかかる時間。
1 回転で進む距離は円周 、回る角は 。それぞれを速さ、角速度で割ればよい。
等速円運動の回転数とは何か? 周期 、角速度 との関係は?
単位時間あたりに回転する回数。、。単位は Hz(ヘルツ)
1 回転で 回るので、1 秒間に 回転すれば 1 秒間に 回る。
3. 向心加速度
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ウ)-㋐
速度の向きが変わるので、等速円運動には加速度があります。その向きと大きさは決まっています。
等速円運動の加速度(向心加速度)の向きと大きさは?
向きは円の中心の向き。大きさは
を使えば 2 つの式は互いに移り変わる。 と書いてもよい。向きは物体の位置とともに変わり続ける。
等速円運動は速さが変わらないのに、なぜ加速度があるのか?
加速度は速度の変化を表す量で、速度の向きが変わっているから
向心加速度は速度に垂直である。速度に垂直な加速度は、速度の向きだけを変え、速さを変えない。
同じ角速度で回る 2 点と、同じ速さで回る 2 点。向心加速度の大きさと半径の関係は、それぞれどうなるか?
角速度が同じなら、 から半径に比例する。速さが同じなら、 から半径に反比例する
1 枚の円板の上の 2 点は角速度が同じなので、外側ほど向心加速度が大きい。何が共通なのかを先に確かめてから式を選ぶ。
4. 向心力と運動方程式
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ウ)-㋐
加速度があるので、運動方程式 から、物体は円の中心に向かう力を受けています。これを向心力と呼びます。
等速円運動をする質量 の物体が受ける向心力の向きと大きさは?
向きは円の中心の向き。大きさは
運動方程式 の に向心加速度を入れたもの。物体が受ける力の合力が、この向きと大きさになっている。
向心力は、重力や張力と並ぶ「新しい種類の力」か?
ちがう。向心力は、物体が実際に受けている力(張力・摩擦力・重力・垂直抗力など)の合力が果たしている役割の名前
力を挙げるときは、重力と、触れているものから受ける力だけを挙げる。そこへ「向心力」を 1 つ足すと、同じ力を 2 度数えることになる。
等速円運動の運動方程式は、どう立てるか?
①物体が受ける力を全部挙げる ②円の中心の向きを正とする ③ (または )の右辺に、力の中心向きの成分の和を書く
中心に向かう力は正、中心から遠ざかる力は負。円の面に垂直な方向には動かないので、その方向はつり合いの式を別に書く。
糸に付けた物体を、なめらかな水平面上で等速円運動させている。糸が切れると、物体はその後どう動くか?
切れた瞬間の速度のまま、円の接線の向きに等速直線運動をする
向心力が無くなると、速度の向きを変えるものが無くなる。慣性の法則どおりに直進するのであって、中心から遠ざかる向きに飛び出すのではない。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ウ)-㋐
以下、重力加速度の大きさを とします。円周率の扱いは、問題ごとに指定します。
問 1 物体が半径 の円周上を、速さ で等速円運動をしている。(1) 角速度を求めよ。(2) 周期を求めよ。円周率は とする。(3) 向心加速度の大きさを求めよ。
(1) (2) (3)
方針 速さと半径が分かっているので、 から角速度を出す。周期は 、向心加速度は に角速度を入れる。
- (1) から 。値を入れると、
- (2) に値を入れると、
- (3) に値を入れると、
- 確かめ。 でも、 で一致する。
問 2 半径 の円板が、中心を通る軸のまわりに 1 秒間に 回の割合で一定の速さで回転している。円板のふちの点について、(1) 周期、(2) 角速度、(3) 速さを求めよ。円周率は のまま答えよ。
(1) (2) (3)
方針 「1 秒間に 回」は回転数 である。周期は 、角速度は 、速さは の順に求める。
- (1) 回転数は 。 に入れると、
- (2)
- (3)
ここで間違えやすい 回転数 をそのまま角速度として使ってしまうこと。角速度は 1 秒間に回る角(ラジアン)で、回転数の 倍である。
問 3 なめらかな水平面上で、長さ の軽い糸の一端を面上の点に固定し、他端に質量 の小球を付けて、等速円運動をさせる。(1) 小球の速さが のとき、糸の張力の大きさを求めよ。(2) この糸は、張力が をこえると切れる。糸が切れない最大の速さを求めよ。
(1) (2)
方針 小球が受ける力は、重力(鉛直下向き)、垂直抗力(鉛直上向き)、糸の張力(円の中心の向き)の 3 つ。水平面内で中心に向かう力は張力だけなので、張力がそのまま向心力になる。
- 鉛直方向は、重力と垂直抗力がつり合っている。水平面内の力は張力 だけ。
- 円の中心の向きを正として、運動方程式は 。円の半径は糸の長さ
- (1) 値を入れると、
- (2) 張力が のときの速さを求める。 から
- 値を入れると、。よって
ここで間違えやすい 速さが 2 倍になると張力も 2 倍、と考えてしまうこと。向心力は速さの 2 乗に比例するので、速さが 2 倍なら張力は 4 倍になる。
問 4 水平なあらい円板の上で、中心から の位置に質量 の小物体を置き、円板を中心を通る鉛直な軸のまわりに回転させる。小物体と円板の間の静止摩擦係数は である。(1) 角速度が のとき、小物体は円板上ですべらずに回っていた。小物体が受ける静止摩擦力の向きと大きさを求めよ。(2) 角速度をゆっくり大きくしていくと、小物体はすべり出した。そのときの角速度を求めよ。
(1) 円板の中心の向きに (2)
方針 小物体が受ける力は、重力、垂直抗力、静止摩擦力の 3 つ。水平方向の力は静止摩擦力だけなので、これが向心力になる。すべり出すのは、必要な向心力が最大摩擦力 に達したときである。
- 鉛直方向のつり合いから
- 円板の中心の向きを正として、運動方程式は ( は静止摩擦力の大きさ)
- (1) 値を入れると、。向心力なので、向きは円板の中心の向き。
- (2) すべり出す直前は 。運動方程式に入れると
- 両辺を で割って整理すると 。値を入れると、
- よって
ここで間違えやすい (1) で摩擦力を ()と答えてしまうこと。 は静止摩擦力の最大値で、すべり出す前の静止摩擦力は運動方程式から決まる。
問 5 質量 の物体が、半径 の円周上を周期 で等速円運動をしている。(1) 物体が受ける向心力の大きさを、、、 で表せ。円周率は とする。(2) 半径を変えずに周期を 2 倍にすると、向心力の大きさは何倍になるか。
(1) (2) 倍
方針 周期が与えられているので、角速度を で表し、 に入れる。
- (1) 周期と角速度の関係から
- に入れると、
- (2) 向心力は に反比例する。 を に置きかえると、分母は
- よって向心力は、もとの 倍になる。