空気抵抗を受ける落下
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (1) ア (ア) ㋑「水平投射及び斜方投射された物体の運動を直線運動と関連付けて理解すること。」。この事項の内容の取扱いに「空気の抵抗がある場合の落下運動にも触れること。」とあります。
0. どういうまとまりか
物理基礎では、空気抵抗を受ける落下を「速くなるほど抵抗が大きくなり、やがて終端速度に達する」と言葉で押さえました。
物理では、抵抗力の大きさが速さに比例する(大きさ )とした場合について、運動方程式を立て、終端速度を式で求めます。
このノートでは、鉛直下向きを正の向きとし、物体の質量を 、速さを 、抵抗力の比例定数を とします。
| 速さ | 抵抗力の大きさ | 加速度 | |
|---|---|---|---|
| 落ちはじめ | |||
| 落下の途中 | 増えていく | 増えていく | 小さくなっていく |
| 十分に時間がたったあと | で一定 | (重力とつり合う) |
分かれ目は次の 3 つ。
- 運動方程式は 。右辺に速さ が入っているので、加速度は一定ではない
- 終端速度は「加速度が 0」、つまり重力と抵抗力のつり合いから求める。 から
- 等加速度直線運動の式は使えない。使えるのは、ある瞬間の運動方程式と、終端速度でのつり合いの式である
1. 運動方程式
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ア)-㋑
落下する物体が受ける力は、鉛直下向きの重力と、鉛直上向きの空気抵抗の 2 つです。この 2 つで運動方程式を立てます。
空気抵抗の大きさが速さに比例するとき、速さ で運動する物体が受ける抵抗力の大きさと向きは?
大きさは ( は比例定数)。向きは速度と逆向き
は物体の形や大きさなどで決まる正の定数である。静止している物体()には、抵抗力は働かない。
速さに比例する空気抵抗(大きさ )を受けて落下する質量 の物体の運動方程式は?(鉛直下向きが正)
重力 は下向きなので正、抵抗力 は上向きなので負の符号が付く。
速さに比例する空気抵抗を受けて落下する物体の加速度は、速さ を使ってどう表されるか? 落ちはじめの加速度は?
。落ちはじめ()は
速さが増えるほど、加速度は小さくなる。加速度が一定でないので、等加速度直線運動の式は使えない。
抵抗力の比例定数 (抵抗力の大きさが )の単位は?
( と同じ)
なので、 を で割る。 を入れると になる。
2. 終端速度
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ア)-㋑
速さが増えると抵抗力も増え、やがて重力と同じ大きさになります。そこから先は、速さが変わりません。
速さに比例する空気抵抗(大きさ )を受けて落下する質量 の物体の、終端速度の大きさは? どんな条件から求めるか?
。加速度が 0、つまり重力と抵抗力がつり合う条件 から求める
運動方程式 で とおけばよい。終端速度に達したあとは、等速直線運動で落ち続ける。
比例定数 が同じ(形と大きさが同じ)で、質量だけが違う 2 つの物体を落とす。終端速度が大きいのはどちらか?
質量が大きいほう。終端速度 は質量に比例する
重い物体ほど、重力とつり合うのに大きな抵抗力、つまり大きな速さが必要になる。空気抵抗があるときに「重いものほど速く落ちる」のは、このためである。
速さに比例する空気抵抗を受けて落下する物体の加速度を、終端速度 を使って表すと?
に を入れた形である。速さが終端速度の半分のとき、加速度は になる。
終端速度より大きい速さで、物体を鉛直下向きに投げ下ろした。その後、速さはどう変わるか?(抵抗力は速さに比例する)
減速して、終端速度に近づいていく
が より大きいので、合力は上向きになり、加速度は負(上向き)になる。速さが終端速度より大きくても小さくても、最後は終端速度に落ち着く。
3. - グラフ
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ア)-㋑
速さの変化をグラフにすると、空気抵抗の無い場合との違いがはっきりします。図は無いので、形を言葉で押さえます。
空気抵抗を受けて静かに落ちはじめた物体の - グラフは、どんな形になるか?(縦軸は下向きの速さ、横軸は時刻)
原点から傾き で立ち上がり、傾きがしだいにゆるやかになって、(終端速度)の水平な線に近づいていく曲線
- グラフの傾きは加速度を表す。加速度が から 0 へ小さくなっていくので、グラフは上に凸の曲線になる。
同じ物体を静かに落とすとき、空気抵抗が無い場合と有る場合とで、- グラフはどう違うか?
無い場合は、原点を通る傾き の直線で、速さは増え続ける。有る場合は、はじめはその直線に沿い、しだいに下へ離れて終端速度で頭打ちになる
落ちはじめは速さが小さく抵抗力もほぼ 0 なので、2 つのグラフはほとんど重なる。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ア)-㋑
以下、重力加速度の大きさを とし、空気抵抗の大きさは速さに比例するものとします。
問 1 質量 の物体が、空気抵抗を受けながら鉛直に落下している。抵抗力の比例定数は である。(1) 終端速度の大きさを求めよ。(2) 速さが になった瞬間の、加速度の向きと大きさを求めよ。
(1) (2) 鉛直下向きに
方針 物体が受ける力は、重力(下向き)と抵抗力(上向き)の 2 つ。終端速度はこの 2 つのつり合いから、途中の加速度は運動方程式 から求める。
- (1) 終端速度では なので、
- 値を入れると、
- (2) 鉛直下向きを正として、運動方程式は 。両辺を で割ると
- 第 2 項に値を入れると、
- よって加速度は、。正なので、向きは鉛直下向き。
ここで間違えやすい (2) で等加速度直線運動の式を使おうとすること。加速度は速さとともに変わるので、その瞬間の運動方程式から求める。
問 2 質量 の小さな球を高いところから落としたところ、十分に時間がたったあとは、一定の速さ で落下した。抵抗力の比例定数 を求めよ。
方針 一定の速さで落下しているので、加速度は 0 で、重力と抵抗力がつり合っている。つり合いの式 を について解く。
- 球が受ける力は、重力 (下向き)と抵抗力 (上向き)。一定の速さなので、この 2 つはつり合っている。
- から、
- 値を入れると、
問 3 形と大きさが同じで、質量が の球 A と、質量が の球 B を、同じ高さから静かに落とした。抵抗力の比例定数は A と B で等しい。(1) 落ちはじめた瞬間の加速度は、どちらが大きいか。(2) 終端速度は、B が A の何倍か。
(1) 等しい(どちらも ) (2) 倍
方針 どちらの球についても、運動方程式 と、終端速度の式 が成り立つ。質量を入れかえて比べる。
- (1) 落ちはじめた瞬間は なので、抵抗力は 0。受ける力は重力だけである。
- A の運動方程式は 、B の運動方程式は 。どちらも となり、加速度は等しい。
- (2) A の終端速度は 、B の終端速度は
- は等しいので、B の終端速度は A の 倍。
ここで間違えやすい 「重い B のほうが、落ちはじめから大きな加速度で落ちる」と考えてしまうこと。差がつくのは、速さが増えて抵抗力が効いてきてからである。