気体の状態変化
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (1) ア (オ) ㋒「気体の状態変化に関する実験などを行い,熱,仕事及び内部エネルギーの関係を理解すること。」。
0. どういうまとまりか
気体を温めたり、押し縮めたりすると、圧力・体積・温度が変わります。このとき、熱・仕事・内部エネルギーの間の決まりが熱力学第一法則です。
法則そのものは物理基礎で学びました。ここでは理想気体に当てはめ、代表的な 4 つの変化(定積・定圧・等温・断熱)で、熱と仕事と内部エネルギーがそれぞれどうなるかを整理します。
このノートの符号の約束は次の 1 つに決め、最後まで変えません。
- は気体が吸収した熱量(放出したときは負)
- は気体が外部からされた仕事(気体が外部へ仕事をしたときは負)
- は内部エネルギーの増加(減少したときは負)
- 熱力学第一法則は
- 気体が外部へした仕事を書きたいときは、別の文字 を使う()
| 変化 | 一定に保つもの | された仕事 | 内部エネルギーの変化 | 熱力学第一法則の形 |
|---|---|---|---|---|
| 定積変化 | 体積 | 温度が上がれば正 | ||
| 定圧変化 | 圧力 | 温度が上がれば正 | ||
| 等温変化 | 温度 | 膨張で負、圧縮で正 | ||
| 断熱変化 | (熱の出入りが無い。) | 膨張で負、圧縮で正 | に等しい |
分かれ目は次の 3 つ。
- 仕事の符号は、体積が増えたか減ったかで決まる。膨張なら気体が仕事をし()、圧縮なら気体が仕事をされる()
- 4 つの変化は、それぞれ第一法則の 3 つの量のうち 1 つが 0 になる(定圧変化を除く)。定積は 、等温は 、断熱は
- 等温変化と断熱変化を取り違えない。等温は温度が変わらず熱が出入りする。断熱は熱が出入りせず温度が変わる
1. 熱力学第一法則と符号
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(オ)-㋒
式を書く前に、問題文の「吸収した・放出した」「した・された」を読んで、符号を決めます。
気体に当てはめた熱力学第一法則を、式で書け。それぞれの文字は何を表すか?
。 は気体の内部エネルギーの増加、 は気体が吸収した熱量、 は気体が外部からされた仕事
気体に入ってきたエネルギーの合計だけ、内部エネルギーが増える。気体が外部へした仕事 で書くと で、「吸収した熱は、内部エネルギーの増加と、外部への仕事に使われる」と読める。
気体が膨張するときと、圧縮されるときで、気体がされた仕事 の符号はどうなるか?
膨張するときは負(気体が外部へ仕事をする)。圧縮されるときは正(気体が外部から仕事をされる)
膨張するとき、気体はピストンを押す向きに動かすので、外部へ正の仕事をする。そのぶん気体はエネルギーを失うので、された仕事は負。
2. 気体がする仕事
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(オ)-㋒
気体の仕事は、ピストンを押す力と、ピストンが動いた距離から求めます。
圧力 を一定に保ったまま、気体の体積が だけ増えた。気体が外部へした仕事 は? どう導くか?
。断面積 のピストンを、力 で距離 だけ押すので、仕事は 。 が体積の増加 にあたる
された仕事で書くと 。体積が減るときは が負になり、 は正になる。
縦軸に圧力 、横軸に体積 をとった - グラフで、気体がした仕事の大きさは、何で表されるか?
変化を表す線と、横軸( 軸)とではさまれた部分の面積
圧力が一定なら長方形で 。圧力が変わりながら体積が変わるときも、線の下の面積が仕事の大きさになる。線が直線なら、台形の面積として求められる。
- グラフ上で、状態が右向き(体積が増える向き)に進むときと、左向き(体積が減る向き)に進むときで、仕事はどう違うか?
右向きに進むときは、気体が外部へ仕事をする()。左向きに進むときは、気体が外部から仕事をされる()。大きさはどちらも線の下の面積
真上や真下に進むとき(体積が変わらないとき)は、面積が無く、仕事は 0。
3. 4 つの変化
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(オ)-㋒
どの変化でも、使う式は熱力学第一法則 と状態方程式の 2 つだけです。変化ごとの条件を入れると、式が短くなります。
定積変化とは? このとき、熱力学第一法則はどうなるか?
体積を一定に保つ変化。仕事が 0 なので
吸収した熱量が、すべて内部エネルギーの増加になる。ふたを固定した容器の中の気体を温めるときがこれにあたる。
定圧変化とは? このとき、熱力学第一法則はどうなるか?
圧力を一定に保つ変化。 なので ()
吸収した熱量の一部が内部エネルギーの増加になり、残りが外部への仕事になる。なめらかに動くピストンで閉じこめた気体を、ゆっくり温めるときがこれにあたる。
物質量 の理想気体が、定圧変化で温度が だけ上がった。気体が外部へした仕事 を、 と で表すと?
変化の前後の状態方程式 、 の差をとる。圧力や体積が分からなくても、物質量と温度の変化から仕事が出せる。
等温変化とは? このとき、熱力学第一法則はどうなるか?
温度を一定に保つ変化。理想気体では なので ()
膨張するときは、吸収した熱量がすべて外部への仕事になる。圧縮されるときは、された仕事と同じ量の熱を放出する。温度が一定なので、ボイルの法則が成り立つ。
断熱変化とは? このとき、熱力学第一法則はどうなるか?
熱の出入りが無い変化。 なので
された仕事が、そのまま内部エネルギーの増加になる。温度が変わるので、ボイルの法則は成り立たない。
理想気体を断熱圧縮すると、温度はどうなるか? 断熱膨張させると、どうなるか?
断熱圧縮では温度が上がる。断熱膨張では温度が下がる
圧縮では なので で、内部エネルギーが増える。理想気体の内部エネルギーは温度だけで決まるので、温度が上がる。膨張では、外部へ仕事をしたぶん内部エネルギーが減る。
等温変化と断熱変化は、それぞれどうすれば実現できるか?
等温変化は、熱をよく通す容器に入れ、まわりと熱をやり取りしながらゆっくり変化させる。断熱変化は、断熱材で囲むか、熱が出入りする間もないほど急激に変化させる
「熱をよく通す容器でゆっくり」が等温、「断熱材」か「急激に」が断熱の合図。「ゆっくり」だけでは等温と決まらない。断熱材で囲んだ気体は、ゆっくり動かしても断熱変化である。
同じ状態の理想気体を、等温変化と断熱変化で、同じ体積まで膨張させた。膨張したあとの圧力が低いのはどちらか?
断熱変化のほうが低い
等温変化では温度が変わらないが、断熱膨張では温度が下がる。同じ体積なら、状態方程式から、温度が低いほうが圧力も低い。そのため - グラフでは、断熱変化の曲線のほうが等温変化の曲線より傾きが急になる。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(オ)-㋒
以下、気体は理想気体とし、気体定数を とします。・・・ の意味は、このノートの冒頭の約束のとおりです。
問 1 気体が、圧力を に保ったまま、体積 から まで膨張した。この間に、気体は の熱量を吸収した。(1) 気体が外部へした仕事を求めよ。(2) 内部エネルギーの変化を求めよ。
(1) (2) 増加した
方針 圧力が一定なので、気体がした仕事は 。熱力学第一法則 の は「された」仕事なので、した仕事は負の数にして入れる。
- (1) 体積の増加は
- 気体がした仕事は 。値を入れると、
- (2) 熱量は吸収したので、
- 仕事は外部へ「した」ので、された仕事は
- に入れると、 で、
- が正なので、内部エネルギーは増加した
ここで間違えやすい のまま足して としてしまうこと。膨張した気体は外部へ仕事をしていて、そのぶんエネルギーを失っている。
問 2 単原子分子の理想気体 を、体積を一定に保ったまま温め、 の熱量を吸収させた。(1) 内部エネルギーの変化を求めよ。(2) 温度は何 上がるか。
(1) 増加した (2)
方針 定積変化なので仕事は 0 で、。温度の上昇は、単原子分子の理想気体の から求める。
- (1) 体積が変わらないので、
- から 。内部エネルギーは 増加した
- (2) を について解くと、
- 分母は
- 割ると、
問 3 単原子分子の理想気体 を、圧力を一定に保ったまま、 から まで温めた。(1) 内部エネルギーの変化を求めよ。(2) 気体が外部へした仕事を求めよ。(3) 気体が吸収した熱量を求めよ。
(1) 増加した (2) (3)
方針 内部エネルギーの変化は、温度の変化だけで決まる。定圧変化で気体がした仕事は 。吸収した熱量は、熱力学第一法則を の形にして求める。
- 温度の変化は
- (1) に値を入れると、
- (2) に値を入れると、
- (3) された仕事は なので、 から
- 丸める前の値で足すと、
ここで間違えやすい (3) で、定積変化のように としてしまうこと。定圧変化では、気体は膨張して外部へ仕事をするので、そのぶん多くの熱量が要る。
問 4 単原子分子の理想気体 を膨張させ、外部へ の仕事をさせた。次のそれぞれの場合について答えよ。(1) 等温変化で膨張させたとき、内部エネルギーの変化と、気体が吸収した熱量を求めよ。(2) 断熱変化で膨張させたとき、内部エネルギーの変化と、温度の変化を求めよ。
(1) 内部エネルギーの変化 、吸収した熱量 (2) 内部エネルギーは 減少し、温度は 下がる
方針 外部へした仕事は同じでも、等温変化では 、断熱変化では と、0 になる量が違う。どちらも、された仕事は として熱力学第一法則に入れる。
- 気体は外部へ仕事を「した」ので、された仕事は
- (1) 等温変化では温度が変わらないので、
- から 。 で、 を吸収した
- (2) 断熱変化では なので、。内部エネルギーは 減少した
- を について解く。分母になる は、
- は 。符号が負なので、温度は 下がる
ここで間違えやすい (1) で「熱を吸収したのだから温度が上がる」と考えてしまうこと。等温変化では、吸収した熱量をすべて外部への仕事に使うので、内部エネルギーも温度も変わらない。
問 5 単原子分子の理想気体を、状態 A(圧力 、体積 )から状態 B(圧力 、体積 )へ変化させた。この変化は、- グラフ上で A と B を結ぶ直線で表される。(1) 気体が外部へした仕事を求めよ。(2) 内部エネルギーの変化を求めよ。(3) 気体が吸収した熱量を求めよ。
(1) (2) 増加した (3)
方針 圧力が変わりながら膨張するので、仕事は - グラフの線の下の面積(台形)で求める。内部エネルギーは、途中の経路によらず、はじめと終わりの の差で決まる。熱量は熱力学第一法則から出す。
- (1) 線の下の部分は、上底 、下底 、高さ(体積の増加) の台形
- 台形の面積は、。体積が増えているので、これは気体が外部へした仕事
- (2) A での は、
- B での は、
- なので、内部エネルギーの変化は で、 の増加
- (3) と から、
- 値を入れると、 で、 を吸収した
ここで間違えやすい (1) を、はじめの圧力や終わりの圧力だけを使って で計算してしまうこと。圧力が変わるときは、線の下の面積で求める。