気体の内部エネルギー
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (1) ア (オ) ㋑「気体の内部エネルギーについて,気体分子の運動と関連付けて理解すること。」。
0. どういうまとまりか
物理基礎では、物体を構成する原子や分子がもつエネルギーの総和を内部エネルギーと呼びました。
理想気体では分子の間に力が働かないので、内部エネルギーは分子の運動エネルギーの和だけになります。
分子 1 個の平均の運動エネルギーは絶対温度で決まるので、理想気体の内部エネルギーも絶対温度だけで決まり、絶対温度に比例します。
単原子分子の理想気体(物質量 、絶対温度 、圧力 、体積 、気体定数 )について、式は次のとおりです。
| 知りたいもの | 式 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 内部エネルギー | 物質量と温度が分かっているとき | |
| 内部エネルギー(圧力と体積で) | 圧力と体積が分かっているとき | |
| 内部エネルギーの変化 | 温度が だけ変わったとき |
分かれ目は次の 3 つ。
- 理想気体の内部エネルギーは温度だけで決まる。体積や圧力が変わっても、温度が同じなら変わらない
- 内部エネルギーの変化は、はじめと終わりの温度だけで決まる。途中でどう変化させたかによらない
- 係数 が使えるのは単原子分子の理想気体。問題文の「単原子分子」を確かめてから使う
1. 理想気体の内部エネルギーとは
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(オ)-㋑
内部エネルギーの中身を、分子の運動から見直します。
理想気体の内部エネルギーとは、何の和か?
気体の分子がもつ、熱運動の運動エネルギーの総和
理想気体では分子の間に力が働かないと考えるので、分子の間の力による位置エネルギーが無い。残るのは運動エネルギーだけ。
実在の物体の内部エネルギーと、理想気体の内部エネルギーは、中身がどう違うか?
実在の物体では「熱運動の運動エネルギー」と「分子の間に働く力による位置エネルギー」の和。理想気体では運動エネルギーだけ
液体や固体は分子どうしが近く、位置エネルギーを無視できない。理想気体はこれを無視したので、内部エネルギーが温度だけで決まる。
単原子分子とは? 例を挙げよ。
原子 1 個がそのまま分子としてふるまうもの。ヘリウム、ネオン、アルゴンなど
単原子分子の運動エネルギーは、分子全体が飛び回る運動のエネルギーだけ。水素や酸素のように原子 2 個からなる分子は、回転の運動エネルギーももつ。
2. 単原子分子の理想気体の式
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(オ)-㋑
分子 1 個の平均の運動エネルギー ( はボルツマン定数)に、分子の数を掛ければ内部エネルギーになります。
単原子分子の理想気体 の、絶対温度 での内部エネルギー は? どう導くか?
。分子 1 個の平均の運動エネルギー に、分子の数 を掛ける
で、 なので になる。
単原子分子の理想気体の内部エネルギーを、圧力 と体積 で表すと?
に状態方程式 を入れる。物質量や温度が与えられていなくても、圧力と体積から内部エネルギーが出せる。
単原子分子の理想気体 の温度が だけ変わったとき、内部エネルギーの変化 は?
は温度の差なので、 で測っても で測っても同じ数になる。温度が上がれば は正、下がれば負。
理想気体の内部エネルギーは、温度とどんな関係にあるか?
絶対温度に比例する
絶対温度が 2 倍になれば、内部エネルギーも 2 倍。比例するのは絶対温度に対してであり、セルシウス温度が 2 倍になっても内部エネルギーは 2 倍にならない。
は、どんな気体に使える式か?
単原子分子の理想気体
原子 2 個からなる分子の気体は、回転の運動エネルギーをもつぶん、内部エネルギーが より大きい。その場合も、内部エネルギーが絶対温度に比例することは変わらない。
3. 温度だけで決まるということ
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(オ)-㋑
には、体積も圧力も入っていません。このことが、次のノートで状態変化を調べるときの決め手になります。
一定量の理想気体の体積や圧力を変えた。変化の前後で温度が同じなら、内部エネルギーはどうなっているか?
変わっていない。理想気体の内部エネルギーは、温度だけで決まる
体積が 2 倍になっていても、圧力が半分になっていても、温度が同じなら分子の平均の運動エネルギーが同じで、その和も同じ。
一定量の理想気体を、状態 A から状態 B へ変化させた。内部エネルギーの変化は、途中の変化のさせ方によって変わるか?
変わらない。はじめの温度と終わりの温度だけで決まる
内部エネルギーは、そのときの状態(温度)で決まる量だからである。これに対して、気体が吸収する熱量や、気体がする仕事は、途中の変化のさせ方によって変わる。
一定量の理想気体が、ある変化をして元の状態に戻った。この間の内部エネルギーの変化は?
0
元の状態に戻れば温度も元に戻るので、内部エネルギーも元の値に戻る。途中で熱の出入りや仕事があっても同じ。
断熱材で囲んだ 2 つの容器に、温度の違う理想気体が入っている。容器をつないで気体を混ぜたとき、混ぜる前後で保たれる量は?
内部エネルギーの和と、物質量の和
外部と熱のやり取りが無く、容器全体の体積も変わらないので外部へ仕事もしない。エネルギーの出入りが無いので、2 つの気体の内部エネルギーの和が保存される。混ぜたあとの温度は、この式から求める。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(オ)-㋑
以下、気体は単原子分子の理想気体とし、気体定数を とします。
問 1 物質量 、温度 の気体がある。(1) 内部エネルギーを求めよ。(2) 温度を にすると、内部エネルギーは何倍になるか。
(1) (2) 2 倍
方針 物質量と温度が分かっているので、 を使う。内部エネルギーは絶対温度に比例する。
- (1) 、 を に入れる
- (2) 絶対温度は 倍になった
- 内部エネルギーは絶対温度に比例するので、2 倍
問 2 物質量 の気体の温度を、 から に上げた。内部エネルギーの変化を求めよ。
増加した
方針 温度の変化が分かっているので、 を使う。 は温度の差なので、セルシウス温度のまま引いてよい。
- 温度の変化は
- に値を入れる
- が正なので、内部エネルギーは増加した
ここで間違えやすい に 273 を足して としてしまうこと。273 を足すのは温度そのものを直すときだけで、差には足さない。
問 3 圧力 、体積 の気体がある。(1) 内部エネルギーを求めよ。(2) 圧力を一定に保ったまま、体積を にした。内部エネルギーの変化を求めよ。
(1) (2) 増加した
方針 物質量も温度も与えられていないが、圧力と体積が分かっているので を使う。(2) は、変化のあとの内部エネルギーを同じ式で求めて、差をとる。
- (1) に値を入れる
- (2) 変化のあとの内部エネルギーは、
- 差をとると、 で、
- 差が正なので、内部エネルギーは増加した。圧力一定で体積が増えたので、温度が上がっている
問 4 断熱材で囲んだ容器 A に 、 の気体が、同じく断熱材で囲んだ容器 B に 、 の気体が入っている。2 つの容器を細い管でつないで気体を混ぜ、十分に時間がたった。混ぜたあとの気体の温度を求めよ。
方針 外部との熱のやり取りも仕事も無いので、内部エネルギーの和が保存される。混ぜる前の 2 つの気体の内部エネルギーの和と、混ぜたあとの全体の内部エネルギーを等しいとおく。
- 混ぜたあとの温度を とする。物質量の和は
- 内部エネルギーの和が保存されるので、
- 両辺を で割ると、
- 左辺は
- について解くと、 で、
ここで間違えやすい 2 つの温度をそのまま平均して としてしまうこと。物質量が違うので、物質量の多い B の温度のほうに寄る。
問 5 物質量 、温度 、圧力 の気体を、温度を一定に保ったまま、体積が 2 倍になるまでゆっくり膨張させた。(1) 内部エネルギーの変化を求めよ。(2) 膨張したあとの圧力を求めよ。
(1) (変化しない) (2)
方針 内部エネルギーは温度だけで決まるので、温度が変わらなければ内部エネルギーも変わらない。圧力は、温度が一定なのでボイルの法則から求める。
- (1) 変化の前後で温度は のまま。 なので、
- (2) 温度が一定なので、ボイルの法則 が成り立つ
- 体積が 2 倍になったので、圧力は 2 分の 1 になる
ここで間違えやすい 体積も圧力も変わったのだから内部エネルギーも変わった、と考えてしまうこと。圧力は半分、体積は 2 倍で、 は同じ値のままである。