正弦波の式
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (2) ア (ア) ㋐「波の伝わり方とその表し方について理解すること。」。
0. どういうまとまりか
物理基礎では、波を - グラフ(ある時刻の波形)と - グラフ(ある点の振動)の 2 枚で表しました。
物理では、この 2 枚を 1 本の式にまとめます。位置 と時刻 を入れると、その点のその時刻の変位 が出る式で、これを波の式(正弦波の式)といいます。
波の式は覚えるものではなく、「原点の振動が、遅れて伝わる」という 1 つの考えから毎回作るものです。
波の進む向きが変わる反射や屈折は、次のノートでホイヘンスの原理を使って扱います。
記号は、振幅 、周期 、波長 、波の速さ です。原点の媒質は、時刻 0 に変位 0 から 軸の正の向きに動きはじめるとします。
このノートで「時刻 0 に動きはじめる」と書くときは、波はすでに 軸の全体に広がっていて、時刻 0 の瞬間に原点の媒質が変位 0 のところをその向きに通り過ぎる、という意味です(時刻 0 に初めて波が出はじめるのではありません)。
| 何の式か | 式 |
|---|---|
| 原点()の媒質の振動 | |
| 軸の正の向きに進む正弦波 | |
| 軸の負の向きに進む正弦波 | |
| 位相 | の中身の角 |
分かれ目は次の 3 つ。
- 正の向きに進む波は、 から を引く。位置 の媒質は、原点より だけ遅れて同じ振動をするから。足すと負の向きに進む波になる
- 式は原点の振動から作る。原点が負の向きに動きはじめるなら から始める。いつも同じ形だと決めてかからない
- 同位相・逆位相は、位相の差が の何倍かで決まる。距離でいえば、波長の整数倍だけ離れた点が同位相、半波長の奇数倍だけ離れた点が逆位相
1. 波の式を作る
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ア)-㋐
正弦波では、媒質のどの点も同じ単振動をします。違うのは、振動を始める時刻だけです。
原点の媒質が、時刻 0 に変位 0 から 軸の正の向きに動きはじめ、振幅 、周期 で単振動している。時刻 の変位 は?
は単振動の角振動数 。1 周期 たつと の中身がちょうど 進み、もとの状態に戻る。
速さ で 軸の正の向きに進む波で、位置 の媒質の振動は、原点の振動とどういう関係にあるか?
原点より時間 だけ遅れて、同じ振動をする
原点の振動が位置 まで伝わるのに かかる。だから、位置 の時刻 の変位は、原点の時刻 の変位に等しい。
軸の正の向きに進む正弦波の式(波の式)は?
原点の式 の を に置きかえ、 を使って整理した形。
波の式を作る手順を、順に 3 つ言うと?
①原点の媒質の振動を式にする ②正の向きに進む波なら、その式の を に置きかえる ③ ()で整理する
①は問題の条件(時刻 0 での変位と、動きはじめる向き)から決める。
軸の負の向きに進む正弦波の式は? 正の向きの式とどこが違い、なぜそうなるか?
。 の項の符号が正になる。位置 の媒質が、原点より だけ早く同じ振動をするから
負の向きに進む波は、 が正の点を先に通ってから原点に届く。 を に置きかえる。
原点の媒質が、時刻 0 に変位 0 から 軸の負の向きに動きはじめる。正の向きに進む波の式はどうなるか?
原点の振動が になるだけで、あとの手順は同じ。時刻 0 に原点が山(変位 )にあるなら、 から始める。
2. 位相
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ア)-㋐
媒質の各点が、振動のどの段階にあるかを表す量が位相です。位相を使うと、2 つの点の振動のそろい方を数で言えます。
波の式 で、位相とは何か?
の中身の角 。媒質がいま振動のどの状態にあるかを表す
位相が なら山、 なら谷。単位はラジアン。位相が だけ違えば、同じ状態である。
同位相・逆位相とは? 波の進む方向にどれだけ離れた 2 点がそうなるか?
同位相は位相の差が の整数倍で、振動の状態がいつも同じ。波長の整数倍だけ離れた 2 点。逆位相は位相の差が の奇数倍で、変位がいつも逆。半波長の奇数倍だけ離れた 2 点
山と隣の山は同位相、山と隣の谷は逆位相である。
波の進む方向に距離 だけ離れた 2 点の、位相の差は? 位相が遅れているのはどちらの点か?
。波が後から届く点(進む向きの先にある点)のほうが遅れている
1 波長離れるごとに位相は ずれる。距離を波長で割って を掛ければよい。
固定端と自由端での反射を、位相の言葉で言うと?
固定端反射では位相が ずれる(入射波と反射波が端で逆位相になる)。自由端反射では位相はずれない
物理基礎で学んだ「固定端では山が谷になって返り、自由端では山が山のまま返る」を、位相で言いなおしたもの。
3. 式から読み取る
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ア)-㋐
波の式が与えられたら、 の形に直して見比べます。
波の式が の形(、 は正の定数)で与えられた。周期・波長・波の速さはどう読み取るか?
周期は 、波長は 、速さは
と見比べると、 の係数 が (振動数)、 の係数 が 。先に をくくり出しておくこと。
波の式を見て、波の進む向きを見分けるには?
の中の の項と の項の符号が異なれば 軸の正の向き、同じなら負の向き
も も正の向きに進む波。 は負の向きに進む波。
波の式で、時刻 を 1 つの値に固定すると何が得られるか? 位置 を固定すると?
を固定すると、その時刻の波形(- グラフ)。 を固定すると、その点の媒質の振動(- グラフ)
例えば で とすると 。原点のすぐ先( が少し正)は負の変位になっている。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ア)-㋐
問 1 振幅 、周期 の正弦波が、 軸の正の向きに速さ で進んでいる。原点の媒質は、時刻 0 に変位 0 から 軸の正の向きに動きはじめた。位置 〔m〕、時刻 〔s〕での変位 〔m〕を表す式を作れ。
方針 原点の振動を式にし、位置 では だけ遅れることを使って を置きかえる。最後に波長を出して整理する。
- 原点の振動は の形。値を入れると
- 正の向きに進むので、位置 の媒質は原点より だけ遅れる。 を に置きかえると
- 波長は なので、
- をかっこの中に入れると、 の項の分母は になり、
問 2 軸上を進む正弦波が、 と表される(、 の単位は m、 の単位は s)。この波の (1) 振幅、(2) 周期、(3) 波長、(4) 速さと進む向きを求めよ。
(1) (2) (3) (4) で、 軸の正の向き
方針 と見比べる。 の係数が 、 の係数が である。
- (1) の前の数が振幅なので、
- (2) の係数は なので、周期は
- (3) の係数は なので、波長は
- (4) 速さは なので、
- の項と の項の符号が異なるので、進む向きは 軸の正の向き
問 3 軸上を進む正弦波が、 と表される(、 の単位は m、 の単位は s)。この波の (1) 周期、(2) 波長、(3) 速さと進む向きを求めよ。
(1) (2) (3) で、 軸の負の向き
方針 の中が になっているので、まず の形に直す。そのあとで係数を読む。
- から 2 をくくり出すと、
- (1) の係数は なので、周期は
- (2) の係数は なので、波長は
- (3) 速さは なので、
- の項と の項の符号が同じなので、進む向きは 軸の負の向き
ここで間違えやすい の形に直さずに係数を読み、周期を 、波長を としてしまうこと。
問 4 正弦波が と表される(、 の単位は m、 の単位は s)。(1) 時刻 での、位置 の媒質の変位を求めよ。(2) 同じ時刻での、位置 の媒質の変位を求めよ。(3) この 2 点の位相の差を求め、同位相か逆位相かを答えよ。
(1) (2) (3) 位相の差は で、逆位相
方針 式に と を入れて、先に位相( の中身)を計算する。位相の差は、2 点の距離を波長で割って を掛けても出せる。
- (1) 位相は
- なので、変位は (山)
- (2) 位相は
- なので、変位は (谷)
- (3) 位相の差は
- の奇数倍なので逆位相。2 点の距離 が、半波長(波長 の半分)にあたる。
問 5 振幅 、振動数 、波長 の正弦波が、 軸の負の向きに進んでいる。原点の媒質は、時刻 0 に変位 0 から 軸の負の向きに動きはじめた。(1) 波の速さを求めよ。(2) 位置 〔m〕、時刻 〔s〕での変位 〔m〕を表す式を作れ。
(1) (2)
方針 原点が負の向きに動きはじめるので、原点の振動は の形になる。負の向きに進む波なので、位置 の媒質は原点より だけ早く振動する。
- (1) なので、
- (2) 周期は なので 。原点の振動は
- 負の向きに進むので、 を に置きかえると
- をかっこの中に入れると、 の項は になり、
ここで間違えやすい 向きが 2 つ出てくる。「原点が動きはじめる向き」は の前の符号を決め、「波が進む向き」は の項の符号を決める。別々に考える。