ホイヘンスの原理と反射・屈折
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (2) ア (ア) ㋐「波の伝わり方とその表し方について理解すること。」。
0. どういうまとまりか
物理基礎では、ひもやばねを伝わる波のように、直線上を進む波を扱いました。物理では、水面波のように面の上を広がる波を扱います。
広がる波は、波面(山の連なりなど)と、その進む向きを示す射線で表します。
波面が次の瞬間にどこへ進むかを決める考え方がホイヘンスの原理で、ここから反射の法則と屈折の法則が出てきます。
前のノートの波の式が「1 つの直線上で波がどう進むか」を表したのに対して、このノートは「波の進む向きがどう変わるか」を扱います。音と光の反射・屈折も、同じ法則に従います。
記号は、入射角 、反射角 、屈折角 、媒質 1 での速さ と波長 、媒質 2 での速さ と波長 です。
| 法則 | 速さ・波長・振動数 | |
|---|---|---|
| 反射 | どれも変わらない | |
| 屈折 | 速さと波長が変わる。振動数は変わらない |
分かれ目は次の 3 つ。
- 入射角・反射角・屈折角は、境界面の法線と射線のなす角。境界面と射線のなす角ではない。波面で測るなら、波面と境界面のなす角が同じ値になる
- 屈折で変わらないのは振動数。速さが変わるぶん、波長が同じ割合で変わる
- 遅い媒質に入ると、射線は法線に近づく(屈折角が入射角より小さくなる)。水面波は浅いところほど遅い
1. 波面と射線
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ア)-㋐
面の上や空間を広がる波は、1 本のグラフでは描けません。振動の状態がそろっている点を連ねて表します。
波面とは?
ある時刻に、位相が等しい(振動の状態が同じ)点を連ねてできる線や面
山を連ねた線が代表的な波面。隣りあう山の波面どうしの間隔は 1 波長である。
平面波・球面波とは? 水面波ではそれぞれどんな波になるか?
波面が平面の波が平面波、球面の波が球面波。水面波では、波面が直線の波(直線波)と、波面が円の波(円形波)になる
水面を 1 点でたたくと円形波、まっすぐな板でたたくと直線波ができる。
射線とは? 波面とはどんな関係にあるか?
波の進む向きを示す線。波面とつねに垂直に交わる
直線波の射線は互いに平行な直線、円形波の射線は波源から放射状にのびる直線になる。
2. ホイヘンスの原理
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ア)-㋐
波面が次にどこへ進むかは、いまの波面だけから決められます。反射も屈折も、この 1 つの考え方で説明できます。
ホイヘンスの原理とは?
波面上の各点は、それぞれが新しい波源となって球面波(素元波)を出す。これらの素元波に共通に接する面が、次の瞬間の波面になる
素元波は波の進む前方にだけ考える。水面波では、素元波は円形波、共通に接する「面」は線になる。
ホイヘンスの原理で、時間 だけ後の波面を作図する手順は?(波の速さを とする)
いまの波面上のいくつかの点を中心に、半径 の円(素元波)を描く。それらの円に、進む前方で共通に接する線を引く
媒質によって速さが違えば、素元波の半径も媒質ごとに変わる。屈折で波面が折れ曲がるのはこのため。
3. 反射の法則
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ア)-㋐
波が境界面に斜めに当たってはね返るとき、向きの変わり方には決まりがあります。まず、角の測り方を決めておきます。
入射角・反射角・屈折角は、どことどこのなす角か?
境界面に垂直な直線(法線)と、射線のなす角
境界面と射線のなす角ではない。波面で考えるなら、「波面と境界面のなす角」が入射角(反射角・屈折角)と同じ値になる。射線と波面が垂直だからである。
反射の法則とは? 反射の前後で、波の速さ・波長・振動数はどうなるか?
入射角 と反射角 は等しい()。速さ・波長・振動数は、どれも変わらない
反射波は入射波と同じ媒質の中を進むので、速さが変わらない。ホイヘンスの原理で作図すると、素元波の半径が入射波の進む距離と等しくなることから が出る。
4. 屈折の法則
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ア)-㋐
波の速さが違う媒質へ斜めに進むと、境界面で進む向きが変わります。これが屈折です。
屈折の法則とは? 入射角 、屈折角 、媒質 1 と 2 での速さ 、、波長 、 で書くと?
(一定)
は入射角によらず、2 つの媒質の組み合わせで決まる。分子が入射する側(媒質 1)、分母が屈折して進む側(媒質 2)の量である。
波が屈折するとき、速さ・波長・振動数のうち、変わるものと変わらないものは?
変わらないのは振動数(周期)。速さと波長は変わる
境界面の媒質は、入射波に合わせて振動し、その振動が屈折波を送り出す。だから振動数は同じになる。 で が同じなので、波長は速さに比例して変わる。
屈折の法則の は何とよばれるか? 逆に媒質 2 から媒質 1 へ進むときの との関係は?
媒質 1 に対する媒質 2 の屈折率(相対屈折率)。
なので、媒質 2 のほうが遅ければ は 1 より大きい。逆向きに進むときは、分子と分母が入れかわる。
波が、速さの小さい媒質へ斜めに入ると、屈折角は入射角より大きくなるか、小さくなるか?
小さくなる(射線が境界面の法線に近づく)。波長も短くなる
で なら 。速さの大きい媒質へ入るときは逆に、屈折角が入射角より大きくなる。
水面波の速さは、水の深さによってどう変わるか? 深いところから浅いところへ斜めに進むと、どう屈折するか?
浅いところほど遅い。浅いところへ入ると波長が短くなり、屈折角が入射角より小さくなる(波面が境界面と平行に近づく)
沖から斜めに来た波が、岸に近づくにつれて海岸線と平行になって打ち寄せるのは、このためである。
屈折の法則を、ホイヘンスの原理で説明すると?
波面の一端が境界面に達してから、もう一端が達するまでの時間を とする。そのあいだに、媒質 1 の側は 進み、先に入った側の素元波は媒質 2 の中で しか広がらない。この 2 つの長さの比が になる
境界面上の 2 点間の長さを共通の斜辺とする 2 つの直角三角形ができ、 と はそれぞれ 、 を斜辺で割ったものになる。
波が境界面に垂直に入射する(入射角 0)とき、波の進む向き・速さ・波長はどうなるか?
進む向きは変わらず直進する。速さと波長は変わる
「屈折しない」のは向きだけ。媒質が変われば、垂直入射でも速さと波長は変わる。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(2)-ア-(ア)-㋐
問 1 水面波が、媒質 1 から媒質 2 へ、入射角 で入射し、屈折角 で屈折した。媒質 1 での波長は 、速さは である。(1) 媒質 1 に対する媒質 2 の屈折率、(2) 媒質 2 での波長、(3) 媒質 2 での速さ、(4) 媒質 2 での振動数を求めよ。 とする。
(1) (2) (3) (4)
方針 屈折の法則 を使う。振動数は屈折で変わらないので、媒質 1 の値から求める。
- (1) 、 なので、。有効数字 2 桁で
- (2) から 。値を入れると、
- (3) から 。値を入れると、
- (4) 振動数は媒質 1 と同じ。波長 は なので、 に入れて
ここで間違えやすい (4) で「速さが変わったから振動数も変わる」と考えること。媒質 2 の値で計算しても で、同じになる。
問 2 水槽の深いところから浅いところへ、振動数 の水面波が進む。波の速さは、深いところで 、浅いところで である。(1) 深いところと浅いところでの波長を、それぞれ求めよ。(2) 深いところに対する浅いところの屈折率を求めよ。(3) 入射角を 、屈折角を とする。 のとき、 を求めよ。
(1) 深いところ 、浅いところ (2) (3)
方針 振動数はどちらでも同じなので、波長は でそれぞれ出す。屈折率は速さの比で決まり、入射する側(深いところ)が分子になる。
- (1) 深いところの波長は
- 浅いところの波長は
- (2) 屈折率は なので、
- (3) から 。値を入れると、
- が より小さいので、屈折角は入射角より小さい。遅い媒質に入ると法線に近づく、という向きに合っている。
問 3 直線波が、媒質 1 から媒質 2 へ進む。入射波の波面は、境界面と の角をなしている。波長は、媒質 1 で 、媒質 2 で である。(1) 入射角を求めよ。(2) 屈折角を として、 を求めよ。(3) 屈折波の波面が境界面となす角は、 より大きいか、小さいか。
(1) (2) (3) 大きい
方針 波面と境界面のなす角は、射線と法線のなす角(入射角・屈折角)に等しい。あとは屈折の法則を波長の比で使う。
- (1) 波面と境界面のなす角が なので、入射角も
- (2) 屈折の法則 から、
- なので、
- (3) は より大きいので、屈折角は より大きい。屈折波の波面が境界面となす角は屈折角に等しいから、これも より大きい。
ここで間違えやすい (1) で、波面と境界面のなす角 を「境界面と射線のなす角」と読んで、入射角を としてしまうこと。
問 4 直線波が、まっすぐな壁に入射角 で入射して反射した。入射波の波長は である。(1) 反射角を求めよ。(2) 入射波の射線と反射波の射線のなす角を求めよ。(3) 反射波の波長を求めよ。
(1) (2) (3)
方針 反射の法則で反射角は入射角と等しい。入射角も反射角も法線から測った角なので、2 本の射線は法線をはさんで両側にある。
- (1) 反射の法則から、反射角は入射角と等しく
- (2) 入射波の射線と法線のなす角が 、法線と反射波の射線のなす角が 。2 本の射線のなす角は、その和で 度
- (3) 反射波は入射波と同じ媒質を進むので、速さも振動数も変わらない。波長も変わらず
問 5 直線波が、媒質 1 から媒質 2 へ斜めに入射する。波の速さは、媒質 1 で 、媒質 2 で である。入射波の 1 つの波面の一端 A が境界面に達したとき、もう一端 B はまだ媒質 1 の中にあった。B はその後、射線に沿って進み、 後に境界面上の点 C に達した。A と C の距離は である。(1) B が C に達するまでに進んだ距離 BC を求めよ。(2) そのあいだに、A から媒質 2 の中へ出た素元波が広がった半径を求めよ。(3) 入射角 と屈折角 について、 と を求めよ。(4) が速さの比 と一致することを確かめよ。
(1) (2) (3) 、 (4) どちらも約 で一致する
方針 ホイヘンスの原理による屈折の作図を、数値でたどる。波面 AB と射線 BC は垂直なので、三角形 ABC は B が直角の直角三角形で、角 A が入射角になる。屈折波の波面は、C から A を中心とする素元波に引いた接線で、接点を D とすると三角形 ADC は D が直角の直角三角形、角 C が屈折角になる。
- (1) B は媒質 1 の中を進むので、BC は
- (2) 素元波は媒質 2 の中を広がるので、半径 AD は
- (3) 入射角は波面 AB と境界面 AC のなす角。直角三角形 ABC で、 なので
- 屈折角は波面 DC と境界面 AC のなす角。直角三角形 ADC で、 なので
- (4) は
- 速さの比は で、一致する。
ここで間違えやすい (2) で素元波の半径を媒質 1 の速さで計算してしまうこと。A から出た素元波は媒質 2 の中を進むので、速さは である。