核反応と核エネルギー
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (4) ア (イ) ㋑「原子核の構成,原子核の崩壊及び核反応について理解すること。」。
内容の取扱いは「質量とエネルギーの等価性にも触れること。」としています。
0. どういうまとまりか
原子核に粒子を当てると、別の原子核に変わることがあります。これを核反応(原子核反応)といいます。
核反応では、反応の前後で核子の数は変わりません。ところが、質量の和をくらべると、わずかに変わっています。
この質量の変化ぶんが、エネルギーとして出入りします。質量とエネルギーは同じものの 2 つの現れ方で、 で換算できるからです(質量とエネルギーの等価性)。
核分裂や核融合で、化学反応とは桁違いのエネルギーが出るしくみは、すべてここから説明できます。
核反応に出てくる粒子は、原子核と同じ書き方で表します。
| 粒子 | 書き方 | 質量数 | 電気量(電気素量の何倍か) |
|---|---|---|---|
| 陽子 | (または ) | 1 | |
| 中性子 | 1 | ||
| 電子 | 0 | ||
| 重水素の原子核 | 2 | ||
| α 粒子 | 4 |
分かれ目は次の 3 つ。
- 核反応で保存されるのは、質量数の和と電気量(原子番号)の和。質量の和は保存されない
- 質量が減る反応でエネルギーが出る。減った質量を とすると、出てくるエネルギーは
- 核子 1 個あたりの結合エネルギーが大きい原子核ほど、安定である。「エネルギーが大きい=不安定」ではない。結合エネルギーは、ばらばらにするのに必要なエネルギーである
1. 核反応式
根拠: 学習指導要領 物理-(4)-ア-(イ)-㋑
核反応を式で表したものを核反応式といいます。化学反応式が原子の数を合わせるように、核反応式は 2 つの数を合わせます。
核反応の前後で、和が等しくなる(保存される)ものを 2 つ言うと?
質量数の和(核子の数)と、原子番号の和(電気量)
核反応式では、左上の数の和どうし、左下の数の和どうしが、反応の前後で等しくなる。α 崩壊や β 崩壊でも、同じことが成り立つ。
核反応式で、反応後にできる粒子が 1 つ分からない。その粒子は、どうやって決めるか?
質量数の和と、原子番号の和が、反応の前後でそれぞれ等しくなるように、分からない粒子の質量数と原子番号を求める
例えば、窒素 に α 粒子 を当てて酸素 ができるとき、残りの粒子は質量数 1、原子番号 1 なので、陽子 である。
核反応式を書くとき、中性子と電子は、それぞれどう表すか?
中性子は (質量数 1、原子番号 0)。電子は (質量数 0、原子番号 )
左下の数は電気量が電気素量の何倍かを表す、と読めば、原子核でない粒子も同じ書き方で数えられる。
2. 質量欠損と結合エネルギー
根拠: 学習指導要領 物理-(4)-ア-(イ)-㋑
原子核の質量を精密に測ると、それをつくっている陽子と中性子の質量の和よりも、わずかに小さくなっています。
質量欠損とは? 陽子の質量を 、中性子の質量を 、質量数 ・原子番号 の原子核の質量を として、式で書くと?
ばらばらの核子の質量の和と、原子核の質量との差。
陽子が 個、中性子が 個ある。核子が 2 個以上集まってできた原子核の質量 は、この和よりも小さい。
質量とエネルギーの等価性とは? 式で書くと?
質量とエネルギーは互いに移り変わることができ、質量 はエネルギー にあたる( は真空中の光の速さ)
アインシュタインが相対性理論から導いた。 が非常に大きいので、わずかな質量が大きなエネルギーにあたる。
原子核の結合エネルギーとは? 質量欠損 を使って書くと?
原子核を、ばらばらの核子に分けるのに必要なエネルギー。
逆に、ばらばらの核子が集まって原子核をつくるときには、同じ大きさのエネルギーが放出される。そのぶんだけ質量が減っている。
統一原子質量単位(記号 )は、どう決められているか?
炭素 の原子 1 個の質量の を とする
陽子や中性子の質量は、どちらもおよそ 。このため、原子核の質量を で表すと、質量数に近い値になる。
質量欠損が の単位で分かっているとき、結合エネルギーを で求めるには、どうするか?
「 の質量はエネルギー約 にあたる」を使い、 で表した質量欠損に 931 をかける
は 。 に直して をかけ、 から に直しても同じ値になるが、問題で換算の値が与えられていれば、かけ算 1 回で済む。
3. 核エネルギー
根拠: 学習指導要領 物理-(4)-ア-(イ)-㋑
原子核の安定さは、結合エネルギーを核子の数で割った「核子 1 個あたりの結合エネルギー」でくらべます。この値が質量数によってどう変わるかを知ると、核分裂と核融合の両方でエネルギーが出る理由が分かります。
核子 1 個あたりの結合エネルギーが大きい原子核は、安定か、不安定か?
安定。核子 1 個を取り出すのに大きなエネルギーが要る、つまり、核子が強く結びついているから
結合エネルギーそのものは、核子の数が多い原子核ほど大きくなる。安定さをくらべるときは、核子 1 個あたりに直す。
核子 1 個あたりの結合エネルギーは、質量数によってどう変わるか?
質量数が 60 に近い原子核(鉄のあたり)で最も大きく、それより軽い原子核でも、重い原子核でも小さくなる
最大の値は約 。鉄のあたりの原子核が、最も安定である。
ウランのような重い原子核が核分裂すると、エネルギーが放出されるのはなぜか?
分裂してできる中くらいの質量数の原子核のほうが、核子 1 個あたりの結合エネルギーが大きいから。反応後のほうが質量の和が小さくなり、そのぶんがエネルギーとして出る
ウラン 235 の核分裂では、1 回あたりおよそ のエネルギーが出る。
水素のような軽い原子核どうしが核融合すると、エネルギーが放出されるのはなぜか?
融合してできる原子核のほうが、核子 1 個あたりの結合エネルギーが大きいから。反応後のほうが質量の和が小さくなり、そのぶんがエネルギーとして出る
太陽の中心部では、水素の原子核がヘリウムの原子核になる核融合が起こっている。原子核どうしは正の電気で反発しあうので、核融合を起こすには非常に高い温度が必要である。
核反応で放出されるエネルギーを、反応の前後の質量から求める式は?
(反応前の質量の和 − 反応後の質量の和)
かっこの中が正なら、エネルギーが放出される。負なら、外からエネルギーを与えないと起こらない反応である。
核反応で放出されたエネルギーは、ふつう何のエネルギーになるか?
反応後にできた粒子の運動エネルギー(γ 線が出るときは、その光子のエネルギーも)
静止していた原子核が 2 つに分かれるときは、運動量保存の法則から、2 つの粒子は逆向きに同じ大きさの運動量で飛び出す。このとき運動エネルギーは、質量の小さい粒子のほうが大きくなる。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(4)-ア-(イ)-㋑
以下、質量 はエネルギー にあたるものとします。
問 1 次の核反応でできる粒子 X、Y は、それぞれ何か。(1) ベリリウム に α 粒子 を当てると、炭素 と粒子 X ができた。(2) リチウム に陽子 を当てると、同じ粒子 Y が 2 個できた。
(1) X は中性子 (2) Y は α 粒子(ヘリウムの原子核)
方針 質量数の和と原子番号の和が、反応の前後で等しい。反応前の和を求め、分かっている粒子のぶんを引く。
- (1) 反応前の質量数の和は 、原子番号の和は
- X の質量数は 、原子番号は
- 質量数 1、原子番号 0 の粒子は、中性子である
- (2) 反応前の質量数の和は 、原子番号の和は
- 同じ粒子が 2 個できるので、Y の質量数は 、原子番号は
- 質量数 4、原子番号 2 の粒子は、ヘリウムの原子核である
問 2 ある核反応で、反応後の質量の和が、反応前より だけ小さくなった。放出されたエネルギーは、(1) 何 か。(2) 何 か。真空中の光の速さを 、電気素量を とする。
(1) (2)
方針 減った質量 が、エネルギー になって出てくる。質量を で入れれば、エネルギーは で出る。 に直すには、 が何 かを先に求める。
- (1) に値を入れると、
- (2) は なので、 はその 倍の
- したがって、
ここで間違えやすい を 2 乗し忘れて、 としてしまうこと。
問 3 ヘリウムの原子核 の質量は 、陽子の質量は 、中性子の質量は である。 について、(1) 質量欠損、(2) 結合エネルギー、(3) 核子 1 個あたりの結合エネルギーを求めよ。
(1) (2) (3)
方針 は陽子 2 個と中性子 2 個でできている。ばらばらのときの質量の和から、原子核の質量を引くと質量欠損になる。 で表した質量欠損に 931 をかければ、結合エネルギーが で出る。
- 陽子 2 個と中性子 2 個の質量の和は
- (1) 質量欠損は
- (2) 結合エネルギーは
- (3) 核子は 4 個なので、1 個あたり
ここで間違えやすい (3) で、陽子の数の 2 で割ってしまうこと。核子の数は、質量数の 4 である。
問 4 重水素の原子核 2 個が核融合して、ヘリウム 3 の原子核 と中性子 ができた。このとき放出されるエネルギーは何 か。質量は、 が 、 が 、中性子が とする。
方針 反応前の質量の和から、反応後の質量の和を引く。減った質量がエネルギーになって出てくる。 で表した質量の減りに 931 をかける。
- 質量数の和は反応前が 、反応後が 。原子番号の和は反応前が 、反応後が で、式は合っている
- 反応前の質量の和は
- 反応後の質量の和は
- 質量の減りは
- 放出されるエネルギーは
ここで間違えやすい 反応前の質量を、重水素の原子核 1 個ぶんの のまま使ってしまうこと。反応するのは 2 個である。質量の減りは小数第 3 位から始まる小さな数なので、質量を小数第 5 位まで与えている。
問 5 静止していたラジウム の原子核が α 崩壊して、ラドン の原子核と α 粒子になった。この崩壊で放出されたエネルギー が、すべてラドンの原子核と α 粒子の運動エネルギーになったとする。α 粒子の運動エネルギーは何 か。原子核の質量の比は、質量数の比に等しいものとする。
方針 はじめ静止していたので、運動量保存の法則から、ラドンの原子核と α 粒子は逆向きに、同じ大きさの運動量で飛び出す。運動量の大きさ が同じとき、運動エネルギー は質量に反比例する。これを使って、 を 2 つの粒子に分ける。
- α 粒子の質量を 、速さを 、ラドンの原子核の質量を 、速さを とする。運動量保存の法則から 。この大きさを とする
- 運動エネルギーは と書けるので、α 粒子は 、ラドンの原子核は
- が共通なので、運動エネルギーの比は質量の逆の比になる。α 粒子とラドンの原子核で 、つまり
- α 粒子が受けとるのは、全体を に分けたうちの 222
- したがって、
ここで間違えやすい 重いラドンの原子核のほうが大きなエネルギーを受けとる、と考えてしまうこと。運動量が同じなら、軽い粒子のほうが速く、運動エネルギーも大きい。放出されたエネルギーのほとんどは、α 粒子が持ち去る。