単振動
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (1) ア (ウ) ㋑「振り子に関する実験などを行い,単振動の規則性を見いだして理解するとともに,単振動をする物体の様子を表す方法やその物体に働く力などについて理解すること。」。
0. どういうまとまりか
ばねに付けたおもりのように、1 つの直線の上を行ったり来たりする運動のうち、いちばん基本になるのが単振動です。
単振動は、等速円運動を真横から見た運動として表せます。円運動の半径・角速度・速度・向心加速度を、そのまま 1 本の直線の上へ写すと、単振動の振幅・角振動数・速度・加速度になります。微分を使わずに、この写し方から式を作ります。
半径 、角速度 の等速円運動を 軸の上へ写した単振動について、振動の中心を原点とし、時刻 に中心を 軸の正の向きに通るとすると、次のようになります。
| 量 | 式 | 最大になる位置 | 0 になる位置 |
|---|---|---|---|
| 変位 | 両端(大きさ ) | 中心 | |
| 速度 | 中心(大きさ ) | 両端 | |
| 加速度 | 両端(大きさ ) | 中心 | |
| 復元力 | 両端(大きさ ) | 中心 |
周期は です。
分かれ目は次の 3 つ。
- 速さが最大なのは中心、加速度の大きさが最大なのは両端。速さが 0 になる両端で、加速度は 0 ではない
- 加速度と復元力の向きは、変位と逆向き。式の負の符号は「中心へ引き戻す向き」を表している
- 周期は質量 と比例定数 だけで決まり、振幅によらない。大きく振らせても、1 往復の時間は変わらない
1. 等速円運動の正射影
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ウ)-㋑
等速円運動をする物体に、円の面に平行な光を真横から当てると、スクリーンに映った影は直線の上を往復します。この影の運動が単振動です。
単振動とは、どんな運動か? 等速円運動との関係で言うと?
等速円運動をする物体を、円の面に平行な方向から 1 本の直線の上へ写した影(正射影)の運動。直線の上の往復運動になる
円の中心の影が振動の中心、円の半径が振幅にあたる。円運動が 1 回転する間に、影は 1 往復する。
単振動の振幅・周期・振動数・角振動数とは何か? 互いの関係は?
振幅 は中心から端までの距離、周期 は 1 往復の時間、振動数 は単位時間あたりの往復の回数、角振動数 はもとの等速円運動の角速度。、、
振動数の単位は Hz、角振動数の単位は rad/s。端から端までの距離は で、振幅はその半分である。
2. 変位・速度・加速度
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ウ)-㋑
円運動の位置・速度・加速度の矢印を、それぞれ 軸の上へ写します。円運動での角 を使えば、三角比だけで式になります。
振幅 、角振動数 の単振動で、時刻 に振動の中心を正の向きに通るとき、時刻 の変位は?
半径 の円周上を角 だけ回った点の位置を、 軸へ写したもの。 を位相という。
時刻 に正の向きの端()にある単振動の変位の式は?
式の形は、時刻 にどこにいて、どちら向きに動いているかで決まる。時刻 に中心を負の向きに通るなら となる。
変位が の単振動の、時刻 の速度は?
等速円運動の速度(大きさ 、円の接線の向き)を 軸へ写したもの。 のとき(中心を通るとき)に最大の になる。
単振動の加速度を、変位 で表すと?
( のとき )
等速円運動の向心加速度(大きさ 、円の中心の向き)を 軸へ写したもの。中心を向くので、変位と逆の符号になる。
単振動で、速さが最大になる位置と、その値は? 速さが 0 になる位置は?
速さが最大になるのは振動の中心()で、値は 。速さが 0 になるのは両端()
両端で一瞬止まって折り返し、中心をいちばん速く通りぬける。
単振動で、加速度の大きさが最大になる位置と、その値は? 加速度が 0 になる位置は?
加速度の大きさが最大になるのは両端()で、値は 。加速度が 0 になるのは振動の中心
速さと逆の関係である。両端では速さは 0 だが、加速度は最大で、物体は中心へ向かって動きはじめる。
単振動の加速度の向きは、変位とどういう関係にあるか?
変位と逆向き(振動の中心へ向かう向き)。大きさは変位の大きさに比例する
中心より正の側にいれば加速度は負の向き、負の側にいれば正の向き。速度の向きとは関係なく、位置だけで決まる。
3. 復元力と周期
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ウ)-㋑
加速度が なので、運動方程式から、単振動をする物体が受ける力の形も決まります。逆に、力がこの形なら運動は単振動です。
復元力とは何か? 式は?
物体を振動の中心へ引き戻す向きに働き、大きさが中心からの変位に比例する力。( は正の定数)
は物体が受ける力の合力である。運動方程式 に を入れると で、 にあたる。
質量 の物体が復元力 を受けて単振動をする。角振動数と周期は?
、
と を比べると 。これを に入れる。
単振動の周期は、振幅によって変わるか?
変わらない。周期は で、質量 と復元力の比例定数 だけで決まる
振幅を大きくすると、動く距離は長くなるが、復元力も大きくなって速く動く。2 つが打ち消しあって、1 往復の時間は同じになる。
ある物体の運動が単振動かどうかを確かめ、周期を求める手順は?
①力がつり合う位置を原点にとる ②原点から だけずれた位置で物体が受ける力の合力を求める ③合力が の形になれば単振動で、周期は
振動の中心は、合力が 0 になる位置(つり合いの位置)である。 はばね定数とは限らず、合力の式から読みとる。
4. 単振動のエネルギー
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ウ)-㋑
単振動では、運動エネルギーと位置エネルギーが入れかわりながら、和が一定に保たれます。途中の位置での速さは、ここから求められます。
復元力 を受けて振幅 で単振動をする質量 の物体の、力学的エネルギーの保存の式は?
(一定)
復元力による位置エネルギーは、振動の中心を基準として 。両端では全部が位置エネルギー、中心では全部が運動エネルギーで、 である。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ウ)-㋑
円周率の扱いは、問題ごとに指定します。
問 1 軸の上で単振動をする物体の変位 [m] が、時刻 [s] を用いて と表される。(1) 振幅と角振動数を答えよ。(2) 周期を求めよ。円周率は とする。(3) 速さの最大値を求めよ。(4) 加速度の大きさの最大値を求めよ。
(1) 振幅 、角振動数 (2) (3) (4)
方針 と見くらべて、 と を読みとる。あとは 、速さの最大値 、加速度の大きさの最大値 に入れる。
- (1) と比べると、、
- (2) に値を入れると、
- (3) 速さの最大値は 。値を入れると、
- (4) 加速度の大きさの最大値は 。値を入れると、
問 2 振幅 、周期 の単振動について、(1) 振動数、(2) 角振動数、(3) 速さの最大値、(4) 加速度の大きさの最大値を求めよ。円周率は のまま答えよ。
(1) (2) (3) (4)
方針 周期から振動数と角振動数を出す。速さの最大値は 、加速度の大きさの最大値は である。
- (1) に値を入れると、
- (2)
- (3)
- (4) なので、
ここで間違えやすい (4) で を 2 乗し忘れて としてしまうこと。 を 2 乗するので、 も 2 乗になる。
問 3 質量 の物体が、 軸の上で、位置 [m] にあるとき [N] と表される力を受けて運動している。(1) 角振動数を求めよ。(2) 周期を求めよ。円周率は とする。(3) 物体が の位置にあるときの、加速度の向きと大きさを求めよ。
(1) (2) (3) 軸の負の向きに
方針 力が の形なので、原点を中心とする単振動である。 と読みとり、 を使う。加速度は運動方程式から直接出せる。
- と比べると
- (1) に値を入れると、。よって
- (2) に値を入れると、
- (3) での力は で、
- 運動方程式 から 。大きさは で、力が負なので向きは 軸の負の向き。
- 確かめ。 でも、大きさは で一致する。
問 4 なめらかな水平面上で、ばね定数 の軽いばねに付けた質量 の物体が、振幅 で単振動をしている。(1) 振動の中心を通るときの速さを求めよ。(2) 振動の中心から の位置を通るときの速さを求めよ。
(1) (2)
方針 復元力は弾性力で、 はばね定数 。中心での速さは最大値 。途中の位置での速さは、力学的エネルギーの保存 から求める。
- に値を入れると、。よって
- (1) 中心での速さは 。値を入れると、
- (2) 力学的エネルギーの保存の式の両辺を で割って整理すると
- は
- は なので、 は
- よって
ここで間違えやすい 中心からの距離が振幅の 倍だから速さも中心の 倍(または 倍)、と比例で考えてしまうこと。速さは位置の 1 次式にならない。
問 5 軸の上で、原点を中心として、振幅 、周期 の単振動をする物体がある。物体は時刻 に原点を 軸の正の向きに通った。(1) 時刻 の変位を求めよ。(2) 時刻 の変位と速度を求めよ。(3) 時刻 の変位と速度を求めよ。速度は向きも答え、円周率は のまま答えよ。
(1) (2) 変位 、速度 (3) 変位 、速度は 軸の負の向きに
方針 時刻 に中心を正の向きに通るので、、 が使える。先に角振動数を出し、それぞれの時刻の位相 を求める。
- に値を入れると、
- (1) の位相は 。 なので、変位は
- (2) の位相は 。 なので変位は (正の向きの端)。 なので速度は
- (3) の位相は 。 なので変位は (中心)
- 速さの最大値は
- なので、速度は 。つまり 軸の負の向きに
ここで間違えやすい (1) で「周期の の時間だから、振幅の まで進む」のように、時間に比例して進むと考えてしまうこと。中心の近くほど速いので、端までの時間の で、すでに振幅の半分まで進んでいる。