いろいろな円運動
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (1) ア (ウ) ㋐「円運動をする物体の様子を表す方法やその物体に働く力などについて理解すること。」。
0. どういうまとまりか
円運動の問題は、場面が違っても手順は同じです。「受ける力を全部挙げる」「円の中心の向きの成分で運動方程式 を書く」「それに垂直な方向はつり合いの式を書く」。
違うのは、どの力が向心力の役を受けもつかだけです。このノートでは、代表的な 3 つの場面でそれを確かめます。
| 場面 | 向心力の役をする力 | 中心向きの運動方程式 | もう 1 つの式 |
|---|---|---|---|
| 円錐振り子(糸の長さ 、糸と鉛直のなす角 、張力 ) | 張力の水平成分 | 鉛直方向のつり合い | |
| 水平なカーブを曲がる車(半径 ) | 路面からの静止摩擦力 | すべらない条件 、 | |
| 鉛直面内の円運動の最下点(糸の長さ ) | 張力と重力の合力 | 力学的エネルギーの保存 | |
| 鉛直面内の円運動の最高点 | 張力と重力の合力 | 力学的エネルギーの保存 |
分かれ目は次の 3 つ。
- 円の半径と中心を先に決める。円錐振り子の半径は糸の長さ ではなく で、中心は糸の固定点の真下にある
- 鉛直面内の円運動は等速ではない。高さによって速さが変わるので、力学的エネルギーの保存で速さを出し、その点での運動方程式に入れる
- 「たるまない」「離れない」は、張力や垂直抗力が 0 以上という条件。最高点で速さが 0 でよい、とはならない
このノートでは、張力の大きさを と書きます。式は、静止した観測者の立場(遠心力を入れない運動方程式)で立てます。
1. 円錐振り子
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ウ)-㋐
糸でつるしたおもりを水平面内で等速円運動させると、糸は円錐の側面をなぞります。これを円錐振り子といいます。
円錐振り子のおもりが受ける力は何か? そのうち向心力の役をするのは?
受ける力は、重力 (鉛直下向き)と糸の張力 (糸に沿って固定点の向き)の 2 つ。張力の水平成分 が向心力の役をする
は糸と鉛直のなす角。張力の鉛直成分は重力とつり合い、 となる。
糸の長さ 、糸と鉛直のなす角 の円錐振り子で、円運動の半径と中心は?
半径は 。中心は、糸の固定点の真下にある、おもりと同じ高さの点
半径を糸の長さ としてしまうのが典型的な誤り。おもりは水平面内を回っているので、円もその水平面内にある。
糸の長さ 、糸と鉛直のなす角 の円錐振り子の周期は?
と から 。おもりの質量によらない。 は、固定点から円の面までの高さである。
2. カーブを曲がる車
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ウ)-㋐
車がカーブを曲がるのも円運動の一部です。車に触れているのは路面だけなので、向心力は路面から受ける力の中にあります。
水平な道路のカーブを、車がすべらずに一定の速さで曲がっている。向心力の役をしている力は?
タイヤが路面から受ける静止摩擦力(カーブの中心の向き)
車が受ける力は、重力、垂直抗力、摩擦力。鉛直方向の 2 つはつり合うので、水平方向に残るのは摩擦力だけ。タイヤは横にすべっていないので、動摩擦力ではなく静止摩擦力である。
半径 の水平なカーブを、車がすべらずに曲がれる最大の速さは?(静止摩擦係数 )
で、すべらない条件は 。質量によらない。速さが 2 倍になると、必要な摩擦力は 4 倍になる。
水平から角 だけ内側へ傾けた路面(バンク)のカーブを、摩擦力に頼らずに曲がれる速さは?(半径 )
垂直抗力 の水平成分 が向心力の役をする。 と、鉛直方向のつり合い から求まる。
3. 鉛直面内の円運動
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ウ)-㋐
糸に付けたおもりを鉛直面内で回すと、重力が仕事をするので速さが変わります。等速ではない円運動でも、円の中心の向きの運動方程式は同じ形で書けます。
糸に付けたおもりの鉛直面内の円運動で、速さは一定か? 速さはどの法則で求めるか?
一定ではない。低い位置ほど速い。速さは力学的エネルギーの保存で求める
張力は速度に垂直なので仕事をしない。仕事をするのは重力だけなので、運動エネルギーと重力による位置エネルギーの和が保たれる。
長さ の糸に付けた質量 のおもりが、鉛直面内の円運動の最下点を速さ で通る。運動方程式と張力は?
中心の向き(鉛直上向き)を正として 。張力は
最下点では張力は重力より大きい。重力を支えたうえで、向きを変えるぶんの力も糸が受けもつ。
長さ の糸に付けた質量 のおもりが、鉛直面内の円運動の最高点を速さ で通る。運動方程式と張力は?
中心の向き(鉛直下向き)を正として 。張力は
最高点では、張力も重力も中心の向き(下向き)である。最下点の式と、重力の符号が逆になる。
半径 の鉛直面内の円運動で、最下点の速さ と最高点の速さ の関係は?
。整理すると
最高点は最下点より だけ高い。高さの差を半径 としてしまう誤りが多い。
鉛直面内の円運動で、糸が鉛直下向きから角 だけ回った位置をおもりが速さ で通る。中心の向きの運動方程式は?
重力を、糸の方向と円の接線の方向に分解する。糸の方向の成分 は中心から遠ざかる向き。接線の方向の成分 は、速さを変えるはたらきをする。
4. 糸がたるまない条件・面から離れない条件
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ウ)-㋐
糸は引くことはできても、押すことはできません。面も、押し返すことはできても、引きとめることはできません。円運動を続けられるかどうかは、この制限で決まります。
糸に付けたおもりが、糸がたるまずに鉛直面内の円運動の最高点を通る条件は?(半径 、最高点の速さ 、最下点の速さ )
最高点で張力 。速さで書くと、最高点で 、最下点で
から 。これに を入れると となる。
鉛直面内で 1 回転させるとき、「最高点で速さが 0 より大きければよい」としてよいのは、糸と軽い棒のどちらか?
軽い棒。棒はおもりを押して支えることもできるので、最高点に達しさえすればよい(最下点で )。糸は押せないので、 が要る
糸の場合に と答えるのが典型的な誤り。その速さでは、最高点に着く前に糸がたるんで円から外れる。
面に沿って円運動をする物体が、面から離れない条件は? 離れる瞬間はどう表されるか?
面から受ける垂直抗力 。離れる瞬間は
円筒の内側を回る物体の最高点では で、糸の張力 を に置きかえた形になる。球面の外側をすべる物体では、 は中心から遠ざかる向きなので符号が逆になる。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ウ)-㋐
以下、重力加速度の大きさを とします。円周率の扱いは、問題ごとに指定します。
問 1 長さ の軽い糸の上端を固定し、下端に質量 のおもりを付けて、水平面内で等速円運動をさせた。糸と鉛直のなす角を とすると、、 であった。(1) 糸の張力の大きさを求めよ。(2) 円運動の半径を求めよ。(3) 角速度を求めよ。(4) 周期を求めよ。円周率は とする。
(1) (2) (3) (4)
方針 おもりが受ける力は重力と張力の 2 つ。鉛直方向はつり合いの式、水平方向は円の中心の向きの運動方程式を書く。円の半径は糸の長さではなく である。
- (1) 鉛直方向のつり合いは なので 。値を入れると、
- (2) 半径は 。値を入れると、
- (3) 中心の向きの運動方程式は
- と を入れて整理すると
- 値を入れると、。よって
- (4) に値を入れると、
ここで間違えやすい (3) で半径を としてしまうこと。 は糸の長さで、円の半径は である。
問 2 質量 の車が、半径 の水平なカーブを一定の速さで曲がる。タイヤと路面の間の静止摩擦係数は である。(1) 速さが のとき、車が路面から受ける静止摩擦力の大きさを求めよ。(2) 車が横にすべらずに曲がれる最大の速さを求めよ。
(1) (2)
方針 水平方向に車が受ける力は静止摩擦力だけなので、これが向心力の役をする。(2) は、静止摩擦力が最大摩擦力 に達するときの速さを求める。
- 鉛直方向のつり合いから
- カーブの中心の向きを正として、運動方程式は
- (1) 値を入れると、。よって
- (2) すべらない条件は 。運動方程式を入れると
- 両辺を で割って整理すると 。値を入れると、
- よって最大の速さは
ここで間違えやすい (1) で摩擦力を ()と答えてしまうこと。それは最大値で、実際の静止摩擦力は運動方程式から決まる。
問 3 半径 のカーブの路面が、水平から角 だけカーブの内側へ傾けてある。 である。車が路面からの摩擦力を受けずにこのカーブを曲がれる速さを求めよ。
方針 摩擦力が無いので、車が受ける力は重力と垂直抗力の 2 つ。車は水平面内で円運動をするので、力を水平方向と鉛直方向に分ける(斜面に平行・垂直には分けない)。垂直抗力の水平成分が向心力の役をする。
- 垂直抗力 は路面に垂直なので、鉛直から角 だけカーブの内側へ傾いている。水平成分は (カーブの中心の向き)、鉛直成分は (上向き)
- 鉛直方向のつり合いは
- 中心の向きの運動方程式は
- 下の式を上の式で割ると 。よって
- 値を入れると、。よって
ここで間違えやすい 斜面上の物体のときのように としてしまうこと。それは斜面に垂直な方向に加速度が無いときの式である。ここでは加速度が水平なので、つり合うのは鉛直方向で、 となる。
問 4 長さ の軽い糸の一端を固定し、他端に質量 のおもりを付けて、鉛直面内で円運動をさせる。(1) 最下点を速さ で通るとき、最下点での糸の張力の大きさを求めよ。(2) (1) のおもりが最高点を通るときの、糸の張力の大きさを求めよ。(3) 糸がたるまずに 1 回転するために、最下点で必要な速さの最小値を求めよ。
(1) (2) (3)
方針 それぞれの点で、円の中心の向きの運動方程式を書く。最高点の速さは、力学的エネルギーの保存で最下点の速さから求める。(3) は、最高点で張力が 0 以上という条件を使う。
- 重力の大きさは で、
- (1) 最下点では中心の向きは鉛直上向き。運動方程式は なので
- は 。よって張力は
- (2) 最高点は最下点より 高い。最高点の速さを とすると、力学的エネルギーの保存から
- 両辺に を掛けると
- 最高点では中心の向きは鉛直下向き。運動方程式は なので
- 手順 5 を入れると
- は 。よって張力は
- (3) 最高点で となる条件は、手順 7 から 。整理すると
- 値を入れると、。よって最小値は
ここで間違えやすい (3) で「最高点に届けばよい」と考えて としてしまうこと。その速さでは、最高点に着く前に糸がたるむ。
問 5 水平な床に固定した、半径 のなめらかな半球の頂点に小物体を置いたところ、小物体は静かにすべりはじめ、やがて球面から離れた。小物体が球面から離れる点の、床からの高さを で表せ。
方針 球面上をすべる間は、球の中心を中心とする円運動の一部である。離れる瞬間は垂直抗力が 0。その点での中心の向きの運動方程式と、力学的エネルギーの保存を連立する。
- 小物体の質量を 、重力加速度の大きさを とする。球の中心から見て、鉛直上向きから角 だけ下がった位置での速さを 、垂直抗力の大きさを とする。
- 重力の、球の中心へ向かう成分は 。垂直抗力は中心から遠ざかる向き。中心の向きの運動方程式は
- 頂点からの高さの減りは 。力学的エネルギーの保存から 。よって
- 離れる瞬間は なので、運動方程式は 。よって
- 手順 3 と手順 4 の を等しいとおくと
- 両辺を で割ると 。よって
- 床からの高さは なので、
ここで間違えやすい 運動方程式の右辺を としてしまうこと。球面の外側をすべる物体では、中心に向かうのは重力の成分のほうで、垂直抗力は中心から遠ざかる向きである。